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みんな大好きB05

 しかし、いざ暇になると困ったもので。


 ビームシールドの製造を許された日は、そこらをウロウロしていると、ハルモニが通報したのかレイシアに発見され、メディカルルームに連行。


 ビームシールドを製造まで漕ぎ着けた功績を讃えられ、祝いに特上の紅茶を振る舞ってくれたのだが───まぁイカれたカウンセラーだとは知っていたし。


 やっぱり一服盛られて、気付けば翌朝までメディカルルームのベッドで眠っていた。


 薬ありきとはいえ快眠だった。目覚めもいい。解放されて食堂に向かえば学徒兵たちがいて、祝福を受ける。


 ソータたちパイロットもいて拍手喝采。けど、ヒナのなんともいえないあの笑顔だけは継続しててゾッとした。


「さ、今日も頑張って働こうか!」


「ダメだ。お前はプロトタイプには乗せん」


 軽く騒ぎになったからか、シドウが注意をしに訪れたのがいけなかった。タイミングを逃して、呑気に仕事に加わろうとしたら釘を刺される。


「いや、でも少尉………隊長」


「黙れ副隊長。病み上がりの分際で、満足にドローンカメラを動かせるはずがないだろうが」


 それにな。と付け加えたシドウは、俺の首の後ろに腕を回して、ともに回れ右。


「お前、ワルステッドの問題を、なぜ早く解決しない?」


「………難航してまして」


「意外だな。デクスターやギグスの方が扱い辛いというのに。ワルステッドなら数秒で機嫌を直せると思ったのだが」


「なら、シドウ少尉の素晴らしいご機嫌とりの技術を伝授してほしいのですが?」


「………俺にそんな高度な任務を要求するな。ガリウス関連ならともかく、女心など………レイシアから何度痛い目に遭わされたか」


 おやおや。これは………レイシアのお仕置きの刑に処されたのはクランドや俺だけではなかったということか。


 そりゃあ最初からシドウに本気で助けを求めてはいなかったけど、意外な事実が知れた。


「とにかく、今はお前の仕事はない。休め」


「………することがないってのは、辛いんですよ。あ、じゃあシミュレーターって使えません? ドローンカメラの精度を上げるためにも………あ、はい。ダメですね。わかりましたよ」


 シドウに本気で睨まれた。


 言動が残念なだけで、かなりの美形なのだ。イケメンに至近距離から睨まれると胸がトゥンクと高鳴ってしまうのも無理もない。てなわけでレイシアが改造した無音カメラをパシャリと。


「………なにもすることがないなら自習でもすればいい。それか………親父に言って、どこか見学でもさせてやる」


「………見学かぁ。いいですね。グラディオスの全部ってまだ見たことないし」


「実は艦長から親父に、そういう打診があった。言えば案内をしてもらえるだろう。が、今日は難しいか。ビームシールドなるものの製造をすると言っていたからな。………だが優先順位を間違えるなよ? お前がするべきはワルステッドとの関係改善だ。………最近、ワルステッドの笑顔が歪だ。隊として機能しなくなる前にどうにかしろ。これは隊長命令だ。いいな? 副隊長」


「アイアイサー」


「ここは米軍ではないのだがな。まったく」


 このままではいけないのは俺もわかっている。


 あの他人には無頓着なシドウでさえ危機感を覚えているのだ。


 ………さて、どうやってアプローチしたものか。


 一回、腹を割って話し合った方がいいのかもしれない。そこで「これで腹を割ってください」と笑顔でヒナにナイフを渡されたら本当に困るが。


 それともレイシアが言っていたように、ムシャペロってしまった方がいいのか?


 ………ダメだ。もう戻れなくなるし、推し活が制限される。ファンはアイドルに節度を持って接するべし。握手会を除いてお触り厳禁。破ったら切腹。


 きついなぁ。


 ───というわけで。


 整備士たちが仕事を開始し、パイロットたちが演習に出て、本格的にやることがなくなってしまった俺は、()()に出かけることにした。


 狙うは大物っぽいが本当は小物。餌は俺自身。え、宇宙船に釣り堀があるのかって? 冗談言っちゃいけないよ。池はないけど、それっぽいことはできるんだ。


 傷心を装って展望デッキにひとりで呆然と過ごす。


 すると、だ。


 俺が仕掛けたトラップに、それこそトラップだとわかっていて飛び込んできた馬鹿がひとりで現れる。


 ははーん。監視カメラの映像でも見たかな?


「全員が日々を切磋琢磨し、研鑽を重ねているというのに、貴様ときたらこの時間から怠惰を喫するのか。いいご身分だな。ゴキブリ」


 ほらね。釣れた。


 限定的な瞬間にだけみんなから愛される、俺の推し活非対象のおもちゃ同然もたるデーテル副艦長殿だ。


「ご機嫌よう、デーテル副艦長殿。立ち話もなんですし、こっちどうぞ?」


「………なんのつもりだ?」


「隣、空いてますよ」


 俺はベンチの中央から右にサッと移動し、左を空ける。


「私に貴様ごときの隣に座れと? 思い上がるなよ?」


「怖いんですか?」


「………なんだと?」


「ご心配なく。なにもしませんよ。そっちがなにか仕掛けない限りは。さ、ビビッてないで隣に座ってくださいよ。それともデーテル副艦長殿は、民間人上がりの学徒兵なんぞに腰が引ける臆病者なんですかね?」


「口が減らない虫ケラめ。誰が臆するかっ。見ていろ。私がそのつもりになれば、貴様の隣など余裕で座れるのだ! ………どうだ。座ってやったぞ!」


「ご立派です。副艦長殿」


 薄っぺらい賛辞を述べながらパチパチと拍手する。まるで赤子が初めて言葉を喋った時のような扱いだったが、デーテルはそれでも満足したらしい。


「そういえば、今日はお連れさんが見当たりませんね。どうしたんですか?」


「休憩時間でもないのに連れ出せるか」


「あれ? でもそれじゃ、休憩時間でもないのに出歩くデーテル副艦長殿って? もしかして………あっ。すみません。不躾な邪推でしたね」


「ふざけるなよ貴様ァッ! 艦内パトロールの一環に決まっておろうがぁ!」


「本当かなぁ?」


 本当にデーテルは面白いなぁ。心が落ち着く。


「そうだ、デーテル副艦長殿。ちょっと相談させてくださいよ」


「なぜ私が貴様ごときの相談などに時間を割かねばならん?」


「だって、ほら。これまで順風満帆な経歴を築いてきた、人望のあるお方じゃないですか。経験だって豊富でしょうし。色々なことを体験されてきた人生の先輩の、有難いお言葉を頂戴したく」


「ふ、ふん。少しはわかっているではないか。………し、仕方ないな。で、なんだ?」


 チョロいなこいつ。ライトノベルのチョロインくらい容易い。


 少しだけ神輿上げると、もうその気になりやがった。


「いや………俺ね、つい昨日、女の子を怒らせちゃったらしくて。どうやら話を聞かなかったらしいからなんですって。だから会いに行ったら断固拒否。呼び方だってエー先輩からノギ先輩に降格。かなりショックで………どうすればいいんですかね?」


たくさんのリアクションありがとうございます!

総合評価もグングンと伸びていて、やる気で満ちています!

次回の更新は13時となりますのでお見逃しなく!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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