みんな大好きB01
切羽詰まって、思考が沈滞している。
ミーティングルームでの一件から一晩が明け、早朝に遭遇したアンノウンBタイプ6体の殲滅を終えたミチザネ小隊が帰投し、俺はプロトタイプガリウスGから一足先に降りようとしていた。
ビームシールドの難点は、高熱を発するがゆえにコアが溶解してしまうことにある。特殊な金属とコーティング剤を用いることもできるが、実験に使えるだけの潤沢な資材があるとは言えない。
実験はできても一発限り。
それが最大の悩みでもある。
「………そもそも、ガリウスGの動力って、ある意味半永久機関みたいなもんなんだし、外付けのエネルギーパックを付ける意味がないのか。でも耐久値を向上できて、装着できたとしても、生産できるエネルギーって一定だから、シールドに大半を割けば他が動かなくなるから命取りなのか。ああ、だからケイスマン教授は、ビームシールド的なものを作らなかったんだな。作ったとしても物理的な奴が理想的。リソースを他に割けないしなぁ」
このプロトタイプガリウスGにも、ソータたちガリウスGのナンバーズと同じ動力がある。ナンバーズと比較すれば出力は落ちるが、このプロトタイプで実験を重ねてナンバーズがロールアウトしたのだ。
基本設計は同じであるし、こうしてコクピットに座って計器を観察すると、自分がやろうとしている無茶がどれだけ命取りなのかがよくわかる。
『なにやってるんだエース。そろそろ降りて、設計の見直しをしよう』
「ああ。今行く」
いつまでも出てこない俺を見かねて、イリスから抗議の通信をもらった。
難易度爆上がりの無茶な設計であっても、イリスにとっては試練。これをクリアできれば、晴れて製造部門に移動できるとあって、目の下に黒々とした隈をこさえても、モチベーションを維持していた。
改めて思う。イリスがいなければ、俺はまたメンタルブレイクしかねなかったと。
「イリス」
『なんだい?』
「例えばの話だ」
『うん?』
ハッチを解放してコクピットから這い出る。イリスはプロトタイプの前に立って、俺を待っていた。
「例えば、こう………そうだな。ビームを小規模に抑えて、省エネを促して、出力を安定させるってことはできないかな?」
『ハァ………お前な。作ってるのはシールドだろ? 小さくしてどうする? まさか手のひらだけを覆えるくらいに縮小させる気とか? 理想は上半身を覆い隠せるくらいって言ったのはそっちだろう?』
急な妥協案に呆れるイリス。俺と並んでいつものデスクへと移動する。
「いや、まぁそうなんだけどさ。まず安定させなきゃだろ」
『安定させたところで、妥協した水準から出力を上げた途端にコアが壊れる可能性だってある。セーフティを設けるつもりではあるけど、やはり当初のプランどおりの大きさで固定させた方がいいに決まってる』
「けど」
『なにを焦ってるんだ? いや、焦るのはわかるけど。それでも時間はまだあるんだ。じっくり考えよう。おやっさんから与えられた課題は半分はクリアしたんだ。あとは安定と、出力。これをどうにかできれば製造して、実験。いよいよなんだ。慌てる必要はないよ』
「………そんな悠長にしてられないんだよ」
『なにか言ったかい?』
「いや、なんでもねぇ………っと。帰ってきたか」
戦闘となればドッグにいる整備士全員ノーマルスーツを着用しなければならない。宇宙空間と艦内を隔離する、ガリウス専用の巨大な隔壁が開閉するからだ。俺とイリスはヘルメットに内蔵している通信機で会話をしている。
発進と着艦でスライドする隔壁。シドウが引き連れた6機が、今日も無傷に等しい姿でドッグに帰ってきた。
『………やっぱり、すごいな。タイタンジャケットは』
「そうだな」
すでに第6話に突入しているとはいえ、第2クールで登場するはずのジャケットを、この段階で装備できるのは大きい。
ハーモンの機体はソータたちの素体と比較しても、大きく膨れていた。上体がよりマッシブになった印象だ。
カイドウはやはり天才だ。短時間でジャケットまで製造してしまった。
「エー先輩!」
今日も来たぞ、犬っころが。
自機から跳躍し、整備士に仔細を報告する義務を怠ったハーモンが、真っ先に俺のところに降り立った。
『やっぱすげぇや、タイタンジャケットは! アンノウンの攻撃なんざ通しもしねぇ!』
「だからって自分から的になる奴があるか」
『いや、実際にそれで助かっている。俺も以前よりやり易くなった』
『だろ? だろ!』
『ああ。次は俺の機体にタイタンジャケットを付けてくれるんだろう? 楽しみだ。ハーモン以上の戦果を上げてやる』
『へっ。やれるもんなら、やってきやがれ』
喜ぶハーモンの横に、これまた報告義務を怠ったコウが降り立つ。
犬猿の仲だったのが、こうも仲が良くなるとはな。
確かに第6話では、幾多の戦場で勝利を飾り自信に繋がったことで絆が芽生える。けど、ハーモンとコウが相手を認めて高め合うまでとはいかなかった。
『いいなぁ、ふたりとも。ねぇエー先輩。私もジャケットが欲しいです』
次に降り立ったのはシェリーだ。彼女はちゃんと報告義務を果たしてからこちらに合流した。
「スナイパージャケット………なんかあったかな。スコーピオンとか、そういうのだったかな」
『スコーピオンジャケット! いいですね、それ!』
スコーピオンジャケットは外伝などで存在をほのめかされたジャケットだ。ケイスマンが設計したと設定にあったし、多分ケイスマンの遺産のなかにも該当する名前があるだろう。
ただ名称が似ているというだけで、スナイパー専用のジャケットであるとは限らない。ホビー雑誌のインタビュー記事にはランスを装着する予定とあったような記憶が………うーん。本当にそうだろうか?
『エー先輩! それ、すぐ作れませんか?』
現金な性格だなぁ、シェリーは。
ピョンピョンと飛び回って催促する。
「どうだろうなぁ。優先すべきはコウのタイタンジャケットだし」
『私だって新しいジャケットさえあれば、もっと活躍できます!』
「って言ってもさ、俺に決定権なんざあるはずないだろ?」
『でもカイドウさんととても親しいじゃないですか! コウのなんていいから、スコーピオンジャケット作るべきだって言ってくださいよ! ねぇねぇ!』
まるで犬みたいな絡み方。
俺の肩を掴んでガクガクと揺さぶる。
常時細められた目が大きく見開いて、とても可愛い………じゃない。コウが聞き逃すはずがなく、シェリーの背を睨んでいた。
「はいはい。わかったから。………お、みんな来たみたいだな。これからミーティングだろ? 合流した方がいいんじゃないか?」
ソータたちも俺を見つけたようで、飛んでくる。その後ろにはシドウの姿もあった。
「よう、お疲れさん」
『エー先輩もね』
『お疲れ様です。エース先輩』
『今日も大活躍でしたね。ノギ先輩』
「お前たちほどじゃないよ………ん?」
俺だけではない。
たったひとりの発言で、全員の動きがピタリと停止した。
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