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みんな大好きA10

「これはお前たちのコロニーに、最初に襲撃を仕掛けた形態だ。通称、Aタイプ」


 よく見かける雑兵みたいなもんだな。ただそれは、今だから雑兵と呼べるのだが。


「その昔、人類が宇宙へ進出し、関心が宇宙に偏りかけた瞬間、どこからともなく現れた。今でこそガリウスFかGのロングソードで一撃で屠れるが、当時の人類には当然ガリウスはない。結果、地球は半分ほど大地を汚染され、大勢が死に至った。俺は日系の血筋だが………血統の故郷たるジャパンは、もう人間の住める国ではなくなった」


 ミーティングルームに張り詰める緊張感が、より重たく感じる。シドウの悲壮感に共感したからだ。


 けどなぁ、シドウ。それはちょっと違う。


 日本は機能している。


 そして、あの艦を製造している。


「地球は戦争状態となり、宇宙を漂うコロニーも例外ではなくなった。アンノウンは宇宙にも現れた。一説によるとアンノウンは地球で突然変異したなにかが暴走したというものもあったが、それは違う。アンノウンは宇宙から来たのだ。そして次、こちらも我がミチザネ小隊はよく目撃しているBタイプとなる」


 Aタイプは四つ足の小型の群だが、Bタイプからいきなり巨大になる。二足歩行の巨人だ。ガリウスと同等のサイズとなってくる。


「そして近年、Cタイプ、Dタイプと出現を確認した。Cタイプはすでに交戦経験があるゆえ、記憶に新しいだろう」


 CタイプはBタイプの約2倍の体格となる。三つ足が特徴的な化け物。


 総じて白銀の閃光を放っているのが特徴だ。


 生物由来の発光は、肉眼で捉えても眩しくはないという。俺は実際に、前世では故郷の田舎で蛍の光を見たが、確かに眩しくはなかった。


 ところがアンノウンは違う。まるで太陽を目視したかのような眩しさがある。ガリウスでもカメラにフィルターをかけていなければ見ることができないほど。当初はそれで迎撃が遅れたとも言われている。熱源だけはたっぷりあるので、誘導弾で仕留めたらしい。


 硬い、熱い、眩しいとかいうわけのわからない化け物。それがアンノウン。人類の敵だ。


「そして………Dタイプ。まだ我が隊は()()にも遭遇していない。俺も含めてな」


「なぜ、幸運なんですか?」


 ソータが尋ねる。


「会敵すれば生還率は限りなくゼロだからだ」


「なぜそんなことが言えるんですか?」


「Dタイプに襲われたと思しき、大破した艦のレコーダーを回収し、分析したそうだ。Dタイプはとにかく危険だ。今はこうして、ABCと異なるタイプの姿を保存して情報の共有を行っているが、Dタイプだけはその全貌が謎だ。どんな姿をしているのか、どんな戦い方をするのかなど。………おそらく、この艦も遭遇すれば無事では済むまい」


 整備士たちは生唾をのみこんだ。


 遭遇すれば必ず死ぬ。そんな敵に対して、未だ具体的な対抗策があるわけではない。


 そう。この段階では。


 俺の計画はこうだ。


 すべてはDタイプへの対抗策。それでビームシールドを設計した。


 それがなければ、あの子が死ぬ。そして全員、なにかが狂い始めるのだ。


 それを防ぐための必需品。長期にわたる努力を、そろそろ形にしなければならない。


「そして冒頭の、艦長のお話に戻る。我が艦の特務である、目的地にあるであろうなにかの調査。これはDタイプと同じく、大破した艦隊のレコーダーからある程度は分析ができている。連合軍が名称をつけた。アンノウンEタイプ。推定100メートル以上の、極小規模ながら母艦のような、アンノウンの拠点と考えている」


「Eタイプ!?」


「100メートル以上だって!?」


「そんなの、ガリウスだって勝てるわけないじゃん………」


 そりゃ、いきなり100メートル以上の敵がいると聞かされれば、誰だってビビる。整備士たちは愕然としている。


 ソータたちでさえ、もうなにも言えていない。言えるはずがない。安易に、勝てるなどと。そんな保証はどこにもない。


 もちろん対抗策はある。先の話になるのだが………どうにもビームシールドが終わったあとは、必然的にそこにも梃入れをする必要があるんだな。休む時間すらない。


「静粛に!」


 クランドが叫ぶ。ミーティングルームは再びシンと静まった。


「………確かに、絶望的な任務ではある。しかし、勝機がゼロだと、誰が決めた? 整備士の諸君らは諸君らの仕事をすればいい。パイロットはDタイプを警戒し、敵の接近が予想された時に出撃し、いつもどおりに帰還せよ。………Eタイプはこちらでなんとかする。私は、勝ち目のない戦いをするほど愚かではない」


 まぁ、そうだよな。


 ここで全員に「みんなの命をくれ」だなんて某艦長のような敬礼を示しても、つい最近まで平和な環境にいた学生だった子供たちが「もちろんです!」だなんて完成した軍人のような了解を返すはずがない。


 だからクランドは迷った。


 任務の詳細を説明することで、大人と子供の溝を埋め、半人前である俺たちを、一応は一人前として扱うことで不満を解消しようとした。任務を知っているのと知らないのとでは、大きな差がある。


 でもここで、クランドは間違える。あとでレイシアが倍に増したキャロットケーキの制裁を持っていくくらいに。


「勝機は必ずあるのだ。我々はそう信じている。Eタイプだろうが必ず殲滅してみせる! ゆえに諸君らは、普段と変わらぬ勤務を───」


「そうか。そうだよな! この艦って連合軍のなかでも最新鋭で、最新の機体を積んでるじゃないか!」


「そっか。じゃあ、私たちも生き残れるのね!」


「戦おうぜみんな! アンノウンがなんだってんだよ!」


 2年生の、ポジティブな性格をしている一部が、クランドの発言を遮って、意気揚々と語り出す。


 あまりにも陽気で、しかし希望の光を明確に示し、そして活力が伝播する。


 勝てる。生き残れる。戦場では絶対なんて確率が存在しないのに、彼らは勝手に決めつけて、士気を上げようとしたのだ。


 それはパイロットにも伝播する。大人たちが守ってくれる。なら、自分たちも応えるべきだ。とヒナは確信した。


「そうだよ! 戦おう! みんなで立ち向かえば怖いものなんて無いよ!」


「うぉぉおおおおおおおおおおおおお!!」


 ヒナの叫びが契機となり、ミーティングルームを喝采と咆哮が突き抜ける。


 ソータたちも火がついた。


 ………けどなぁ。


 やっちまうんだよなあ。クランドが。





「黙れ!!」





 ほらね。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

実はクランドはモデルとなる人物がいます。答えは明日の更新で。

明日は7時頃ではなく、12時頃に更新します。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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