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みんな大好きA09

「テメェら、ガキどもに威張り散らかしてなにが面白いんだ? あ?」


 デーテルが去り、首魁を失った徒党に、ハーモンとコウではなく、先輩の整備士たちが立ち塞がる。


「い、いや。それは………」


 後ろ盾が去ってしまっては、機関室の連中も強くは出れない。あっという間に形成逆転した。元から数は同じだったもんな。先輩たちはじっと俺たちを見守ってくれた。手を出さなかったのは、デーテルの相手が俺だったからだろう。もう彼らにとっては俺がデーテルの天敵と認識しているのだろうな。


「さっきから黙って見てりゃ、俺らが面倒見てる連中を好き勝手してくれてるようじゃねぇかよ」


「やり方がガキ以下だぜ?」


「おいそこのオペレーター。なにガキども見て笑ってんだよ。言いたいことあんだったら、はっきり言えよ」


 俺たち子供では余計な怪我に繋がりかねない。整備士の先輩たちがデーテルの派閥に圧をかけた。


 これにハーモンたちは、彼らがデーテルが不在の時にしか怒号を発せないという偏見を持つかもしれないが、そうではない。デーテルの派閥を追い出すために手っ取り早い方法を選んだのだ。


 多分、まだデーテルがいる時に俺たちが殴られそうになったら、彼らは必ず乱入するだろう。自分の立場など関係なく。


「はぁ。災難だった」


「エー先輩。ああいうの慣れてるんすか?」


「冗談きついよ。慣れてたまるか、あんなもん」


 相手がデーテルだからできるだけだ。機関室の連中や他のセクションの人間が相手だったら、俺が頭を下げて穏便に済ませるしかなかった。あとは先輩たちがどうにかしてくれただろう。


「あ、そうだ。サラダはデーテル副艦長が完食したって言っておいてください。多分後日、同じものが来ると思うんで、その時にいただきます」


「お、おう。まぁ、頑張れよ」


 炊事兵ももちろん目にしていたので、レイシアにはありのままを報告するだろう。


 やっとフォークを持って食事にありつけた。


「多分………デーテル副艦長も懲りずにまた来るだろうけどさ。目の敵にしてるの俺だけみたいだし、お前たちにはなにもしないだろ。シドウ少尉の預かりだしな。けどなにかあったら、俺に言えよ? こらしめてやる」


「いっそのこと殴り飛ばしてしまえれば、楽なんだがな」


「やめときな、コウ。ああいうタイプは自分の権力をフルで行使してくるぞ。お前がパイロットから外される」


 デーテルならやる。俺を追い落とすために手段を選ばなくなってきたからな。俺の外堀から攻略するなんて露骨なこともしかねない。けどソータたちはまだ子供で、未だ軍人としての自覚も薄く、栄転を持ちかけられてもピンとは来ないだろう。シェリーの例もある。


 シェリーが自分のタオルで俺の頭を拭いてくれる。時間が惜しいのでそのまま食事を摂り、終えた───その時。


『学徒兵に伝達。繰り返す。学徒兵に伝達。パイロットならび整備士の学徒兵は、作業を止めてミーティングルームに集合せよ』


「ぁんだぁ? 呼び出しって………しかも全員だぁ?」


 ハーモンが食堂のスピーカーを睨んで首を傾げた。


 俺は食べ終えたプレートを返却口に返して、シェリーたちに背を向けたまま立ち尽くす。


 来たか、と確信を得た。


 これまで原作にない展開の連続、あるいは失意のなかで聞き漏らした会話がイベントとして現れたのかもしれないが、はっきりとした確証を得られなかったのだ。


 俺が廃人寸前になっている間にも戦闘があり、辛勝し続けたらしい。


 そしてその戦闘が終わり、ソータたち学徒兵は全員ミーティングルームに集められる。第6話Aパート終盤に発生するイベントである。


 舌打ちしたくなった。絶望もあった。大声で喚きたくもなった。


 残された時間が、あまりにも少ないことに。


 ミーティングが終わればBパートだ。そこで初めて、ファンたちが震撼する絶望が訪れる。


 あの子が死ぬ。


 俺は本当に、間に合わせることができるのだろうか?






「………これで全員か」


 通達から10分後。それなりに早足で移動したのだが、ミーティングルームはどちらかといえばドッグに近く、どうしても時間がかかってしまうゆえ、俺たちが到着した頃には、もうすでにアスクノーツ学園の元学生たちは着席していた。


 前列にはソータとアイリとヒナの姿がある。ソータは俺に気付いて手を振り、アイリはこの前のことを思い出したのか、どこか赤面していた。


 で、ヒナはといえば、珍しく俺たちを一瞥しただけで、これといって特別なリアクションはしなかった。ミーティングルームは独特の緊張感がある。もしかすると、軍人としての意識が少しだけ芽生えたのかもしれない。


「お前たち。パイロットは前列に座れ。………ノギ、お前もだ」


 最後列に移動しようとした俺を、シドウが呼び止める。


 俺はまだ職場復帰したとはいえ、リモートパイロットとしては復帰していない。別にパイロットでもないし。と意義を申し立てると、あれこれ言われるので、黙っててシェリーたちに続き、最前列に着席した。


「では、始めるとしよう」


 独特の緊張感を作り出していた原因、クランドが口を開く。


 ただの学徒兵のみのミーティングではなかった。


 この第1クールの根幹ともいえる重要な部分。それを明かす時が来た。ゆえにクランドもいつも以上に口数が少ない。


「諸君には未だ説明していなかったことがある。当時、諸君らは学生で、難民だった。そんな諸君に我々の任務の仔細を明かせるはずがない。………だが今は違う。学生だった諸君らの8割以上が軍属となり、日々精進している。よって、私はそんな真摯な姿を示す諸君らに、今こそグラディオスに与えられた特務の詳細を教えようと思う。………カイドウ」


「おう」


 ミーティングルームにはカイドウがいて、モニターを操作して、とある宙域を示す。


「2年ほど前、このポイントに我々が長く戦うアンノウンの一種と思しきなにかが出現した。当時、航行中であった艦隊の主戦力が、たった30分で壊滅させられた場所である。我々は現在、そこに向かっている。そのなにかを探るために」


 ………それが第1クールの流れだ。


 人類同士の戦争なら、敵の拠点を叩くなりあるだろう。


 だがこのアニメは宇宙人のような未知の存在と戦っている。なにもかも未知数で、先が読めなかったのだ。


「そして昨今、アンノウンの個体にも進化があった」


 クランドに続き、シドウが加わる。カイドウが次のパネルを表示した。


明日、最初の更新を7時ではなく、12時頃にしてみようと思います。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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