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みんな大好きA08

「控えろ民間人上がりども」


「ガキが。パイロットになれたからって、デーテル副艦長より上に立ったつもりか?」


 デーテルに掴みかかろうとした、喧嘩が特技なハーモンとコウに対し、屈強な男たちが立ち塞がる。


 天破のグラディオス本編にはいなかったが、ファンブックなどで見たことがある。


 デーテルは俺のように、独自の派閥を艦内で作り上げたと。


 なるほどね。軍服にある所属を示すバッジでわかる。機関室の連中だ。整備士にも劣らない肉体をしている。ハーモンとコウでも一筋縄ではいかない、


「クスクス」


「ふふ」


「ククク………」


 食堂が不穏な雰囲気になった。


 原因はわかっている。


 デーテルめ。俺に仕返しするためだけに食堂に集めたな。自分の派閥を。


 様々なセクションでデーテルは息をかけた数人で結成したのだろうな。どうせ名目は各部署から多彩な角度から得る意見を統合し、艦内の生活を改善するための委員会とか。それでクランドを丸め込んだに違いない。表向きの働きだけは響きはいいからな。


 けど実際にやっているのは、自分が気に入らない者への弾圧行為。罪をでっち上げて吊し上げを行うための。


 それが本格的に動き出す。ターゲットはもちろん、煮湯をリットル単位でがぶ飲みさせた俺だろう。


 デーテルの派閥に所属する連中も、どうせ将来的に自分についてくれば甘い蜜を吸わせてやると唆された連中ばかり。


 優秀なクルーのはずなんだけどな。やってることがガキ以下だって、いつ自覚するんだろう。


「退けよテメェコラァ」


「そっちこそ、その程度の戦力で俺たちを止められると思っているのか? 舐められたものだ。10倍は連れて来い」


 機関室の屈強な男たちにメンチを切るハーモンとコウ。


 その後ろではユリンとシェリーが控える。シェリーの眼圧が凄まじいことになってる。ユリンなんて、なに仕出かすかわからないくらい笑って、あ、目だけが笑ってない。これが怖い。


 一触即発の空気。いつ殴り合いになってもおかしくない。炊事兵たちも止めるか止めざるか逡巡している。相手は副艦長だ。


 面倒なこと、この上ない。


 どうせ殴り合いになればデーテルが事実を歪めて、俺たちがどれだけ証言しても不利になるよう動くだろう。


 一見、デーテルにとって完璧な布陣。


 クランドからの信頼は肩書きによっても左右する。監視カメラもいじってそう。


 さて、それなら………ハーモンたちが粗相をする前に動くとするかね。


「待ちなハーモン。コウも」


「黙っててくれや先輩。先輩が許しても俺が許さねえ」


「同感だ。ここまでされたんだ。恩人への暴挙は死罪に等しい」


 いつの間に仲良くなったのきみたち?


 いや、これはこれで、超嬉しいんだけどさ。俺のために怒ってくれてるんだし。あとで絶対撫でて褒めてやらないと。


「暴力はやめろって言ってんの。お手本を見せてやる」


「は? 手本だぁ?」


「必要を感じない。こういう連中は殴って黙らせるに限る」


「あはは。いいわね、それ」


「エー先輩に手を出したことを死ぬほど後悔させてやる」


 おいおい。ユリンとシェリーまでエンジンかけやがって。ハーモンとコウの隣に並んで、乱闘に混じろうとしてるんじゃないよ。


 みんなクスドを見習え───あ、こいつカメラ回してる。映像記録か。やるな、じゃない。せめてユリンだけでも止めろよ………いや無理か。


「いいから見てな。………あ、ぁぁあああああああああ!」


「フン。わざとらしい演技だ。なにを始めようとしているのだ? ゴキブリ」


()()()()()()お手製の、料理がぁあああああ!」


「………なん、だと………レイシアさんの………料理っ!?」


 ほらね。案外簡単なんだよ。こいつの城壁を崩すのって。


 だって、堅牢に見える巨大な建造物の奥でふんぞり返っていた大将が、自分から出てきてくれるんだもんな。


「お、おいゴキブリ………どういうことだ? なぜ貴様ごときがレイシアさんの手料理を持っている!?」


「え、そりゃあ、ねぇ。毎日頑張ってる、俺へのご褒美っていうか。デーテル副艦長殿だって、そういう差し入れがあるでしょう?」


「ふ、ふん。当然だ。私だってもらったことくらい………あ、ある」


 嘘だな。絶対にない。


「へぇ、でもなぁ。これじゃあなぁ」


「な、なんだ貴様。レイシアさんの手料理にケチを付けるなど恥を知れ恥を!」


「いや。ケチなんかじゃないんですよ。だってほら、どこぞの副艦長殿が紅茶を頭から被せてくれたせいで………ほら。薬が溶けちゃって、ドロドロだ。こんなの食べられたもんじゃない」


「ふ、ふざけるな貴様ぁっ! レイシアさんの手料理を捨てるというのか!? 万死に値する!」


「だってほら。どこかの副艦長殿が紅茶を被せてくれたせいですし。あーあ。こりゃ捨てなきゃかなぁ。もったいないなぁ。レイシアさん、料理の廃棄に反対派だし。しかもどこぞの副艦長に悪戯されたせいで廃棄したなんて知ったら、そいつのこと絶対に嫌いになりますよ。どう思います? デーテル副艦長殿」


「ぐ、ぐぎっ………ぃぎぎぎっ」


 実らない恋に想いを馳せるのも大変だな。レイシアも苦労する。


 取り巻き連中は不安そうにしながらデーテルとドラッグサラダを交互に見る。全員知っているんだな。デーテルがレイシアに片想いしてること。


 だから不安そうにしているんだ。この先の、正確に述べれば数秒後の未来が見えるから。


「………こせ」


「はい?」


「フォークを寄越せ! 貴様が食べないなら私がレイシアさんの愛を体内に摂取してくれる! この舌で堪能するのだ! レイシアさんが触れた野菜と薬のすべてを! その時、私の体内でレイシアさんを育めたことになるだろう!」


「うわ、キモ………失礼。なら、どうぞ。フォークです」


「愛をいただきます! うぉぉおおおおおおおおおレイシアさぁぁああああああああん! レイシアさんが触った野菜と薬が、私の舌の上で踊っている! なんという至福ぅぅううううう!」


 キモ。


「ぬぅおおおおお! 水に浸していないであろう葉物のえぐみ! 適度な歯応えがレイシアさんの細い指先を思わせる! そしてこの私が愛飲している紅茶に浸った薬剤が溶けて、なんともいえぬ苦味を演出しぐぉおおおおおおおおおおお、うぉぇええええええええ!!」


 やっぱりね。


 一気食いするからこうなるんだ。


 レイシアは料理がうまい。菓子を作るのが得意だし。


 だから俺に与えたドラッグサラダは、本当にお仕置きの意味であえてまずくしてたんだな。


「デーテル副艦長! もうやめてください!」


「う、うるさい黙れ」


「オーバードーズです!」


「あの白衣の天使が、本当にこの虫ケラに大量の薬を盛ると思うか? 数錠の薬と、あとは栄養剤程度の、おぇえええっ!」


 紅茶のせいでまずくなってるのね。


 巨大なボールにあったサラダは、見事にデーテルの腹のなかに収まったのだった。


「うぉえ………どうだ………食ってやったぞ。彼女の愛を………」


「え、まだ終わってませんよ? ほら、紅茶塗れになったこの食事。まさか俺に、デーテル副艦長殿の唾液が混じったものを食えって言うんですか? 正気ですか?」


「な、なにを………というか貴様、その憎たらしい言動………元に戻っていたのか!?」


 ははーん。なるほどね。


 確かに廃人寸前だった頃、デーテルとすれ違った記憶がある。ギャーギャーと騒いでいたっけ。


 だからか。俺が弱ってるところに追い込みをかけたかったと。でも遅かったな。あの時にやっておけば、まだ効果があっただろうに。俺はすっかり元気だぜ。


「レイシアさんね、たまに言ってたんですよ。食べ物を粗末にするやつは死ねって」


「………食うさ。食えばいいんだろう食えば! ふ、ふふ。どうせ昼食もまだだったのだ。食べてやる!」


 頑張るねぇ。でも、そうでなくちゃ。いくら俺でも紅茶塗れの飯を食いたくない。


 その間にシェリーがデーテルが食べる予定だったプレートを持ってきてくれた。これでロスは無し。


 損をしたのはデーテルだけ。


 数分後、青褪めた顔をしたデーテルが、食堂から走り去る。あのサラダがキツかったらしい。いや、薬のせいか。


ブクマ、リアクションありがとうございます。

職場で色々あって更新が大幅に遅れてしまいましたことをお詫び申し上げます。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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