みんな大好きA06
アイリは終始赤面して、更衣室から出た。
俺は数分待ってから出る。
「ハルモニ」
『イェス。メカニック・エース』
「バイタルチェック」
『………体温、脈拍、血圧、許容値です。長期休暇の日数は半分ほど残っています。本日はドクター・レイシアの診察があります』
「却下。仕事に戻る」
『推奨できません。部屋に戻ってください』
「時間がないんだ。ビームシールドの設計を見直す。このままドッグに行くぞ。細かな計算の補助を頼む」
『………イェス。メカニック・エース』
結局は俺に協力してくれるんだな。
強気で押し切ればいい。どうせレイシアやカイドウには筒抜けになるだろうが、そっちも押し退けてやる。
とにかく全力で進むんだ。
死ぬためじゃない。生きるために。
「お、おい。エースじゃねぇか。ダメだろ休んでなきゃ」
「さっきアイリが治ったって嬉しそうに言ってたけど、あなたまだ病み上がりじゃない」
「もう問題ないよ。やれることをやるだけさ」
更衣室で着替えて、出たところを同級生らに発見され引き止められるが、俺の進撃は止まらない。
阻止しようとする同期たちをズルズルと引きずりながらドッグに突入する。
すると、
「ハァ………やーっぱ来やがったか」
隔壁を出たところで、カイドウが待ち構えていた。
「ご心配おかけしました。もう大丈夫です」
「せめて、レイシアのチェックを受けて、許可もらってから来いよクソガキ」
「クソガキで結構です。………やらないといけないことがあります。それに俺は、命をかけています」
「………ハァ、そういう目はよく知ってるぜ。俺もよくそんな顔してた。鏡を見て自覚したぜ。………止められないんだよなぁ。覚えがある。ったくよぉ。説教されるの俺なんだぜ?」
「ご面倒をおかけします」
同級生たちが、俺とカイドウのやり取りをハラハラしながら見守っている。
だが俺は、ここでカイドウに殴られてもドッグに居座るつもりだ。鳩尾は勘弁してほしいけど。
「………おらよ」
カイドウが端末を操作して、俺になにかを送信した。
受信して展開する。
「おやっさん。これって!」
「俺なりにテメェのわけわからんシールドの問題点をピックアップして、改善点を要求しておいた。まずはそれをクリアしてみな。それができりゃあ、製造してやらんこともねぇぜ?」
「ありがとうございます!」
「ったくよぅ………へっ」
カイドウもツンデレかな? 笑い飛ばすような笑顔はシドウそっくりだ。遺伝だね、こりゃ。
カイドウの横を通る。もう止められはしなかった。
いつも使っているデスクへと───おや?
「イリス?」
「待ってたよ、エース」
デスクには先客がいた。2年生唯一のネームドキャラ。ソータたちのリーダーとなるが忘れ去られる存在。その代わりに俺がリーダーに指名された。
「お前、三号機の担当だろ? なにやってんだこんなところで」
「おやっさんに言われてさ。ナカダさんが嬉しそうに報告して、渋面したおやっさんが多分エースがここに来るだろうから、手伝ってやれって」
嬉しいサプライズしてくれるじゃないのツンデレめ。
今はひとりでも人員がいた方がいい。正直、装備を新規で作り出すのは苦労した。
「設計図を見たよ。まるで意味不明。なにがしたいの?」
で、早速ダメ出しかよ。
「………アンノウンの熱を利用するんだよ」
「は?」
「言ってもわからないだろ。俺だって半信半疑なんだよ。でも、ケイスマン教授が言ってたからな。うまくいけば、これでアンノウンの攻撃を防げるかもしれない」
半分………いや9割が嘘だけどな。
これは防ぐというよりも、デコイに近いからだ。
そしてケイスマンの発案でもない。前世でファンのひとりが別メーカーのパーツを流用して取り付けた、外見重視の装備。しかし死人に口なしとも言うし、視聴者にも口なしとも言える。今さらケイスマンの発言の確かめようがない。
「教授が」
「ああ。イリスはケイスマン教授と面識あったっけ?」
「少しだけ。講義を選択しただけで、会話したのなんて一回か二回だよ。でも、ケイスマン教授がそう言っていたなら………うん。信憑性はあるか。それにおやっさんが俺を寄越した理由もわかった」
「うん?」
「俺、ガリウスの整備よりも装備の製造に興味あったんだ。だからタイタンジャケットの製造も見学させてもらった。正式に移りたいなら、エースが作ろうとしてる意味不明なシールドを完成させてみろって試練を与えてくれたんだよ」
俺がそうであるように、これはイリスにとっても試練であるのか。
そういえばアニメ本編でも、イリスっぽいキャラはガリウスよりも装備の製造のところで見かけた気もした。
「やろう。エース。これを俺たちで作り上げるんだ。エースは念願の装備ができて万々歳。俺はエースを踏み台にして万々歳。いいことだらけじゃないか」
言ってくれるじゃねぇか。
俺を踏み台にするだと? やれるもんならやってみな。
「いいぜ。けどやることだらけだ。俺みたいになる覚悟はできてるんだろうな?」
「………できれば夜には帰してくれると嬉しいな」
「夕飯食ったらまたここで作業することもあるだろ。甘えんな」
「うわ。ちょっと後悔してきたかも」
ちょっと、なら大丈夫だ。
これで全力で拒否されるくらいならチームとして連携できなくなる。
「じゃ、まずこれを見てもらおうか」
「うん。どれどれ?」
俺の新装備の設計計画が、また動き出す。
改善点が明確化され、仲間も増えた。
やれるだけやってみるさ。
「………先輩。エー先輩。イリス先輩。生きてるっすか?」
「水持ってきました。飲めますか?」
この声はハーモンとクスドかな。
丁度いいところに来てくれた。持ち込んだ水や軽食が尽きて、精魂尽きかけて、脳が干魃するところだった。
初日でこうも苦戦するとは。小休憩と称してデスクに突っ伏したまま眠っていたらしい。
「イリス先輩ならともかく、エー先輩は病み上がりなんだから無理しない方がいいっすよ」
「あー………いや、ここが踏ん張り時なんだよ」
「その踏ん張り時とやらが、毎日来るのが目に見えたけどね。エース。お前、こんなの毎日やってたのかよ」
「毎日というか………毎分というか」
「イカれてるよ。お前。だからぶっ壊れるんだ」
「うっせ」
高性能AIが追加されても、味方がひとり増えても、調整がうまくいかない。
もっと根本的な見直しや、それとも設計からやり直した方がいい気がしてきた。
つまり、超難航。
原作にない武器を初期段階から作ることが無茶だったってことか。
いつもリアクションありがとうございます!
ソータとアイリのイラストを生成しましたのでXに載せます!
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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