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みんな大好きA04

「え?」


「エー先輩? ぅわあ!?」


「ソータ!? きゃ!」


 手首を掴まれたソータは驚いて振り向くが、有無を言わさず連行する。アイリも同様に手を掴んで歩き出す。


「ど、どうしたのエー先輩!」


「ダメですよエー先輩! 休まなきゃ!」


 ごちゃごちゃと言いやがって。少し黙っていればいいのに。


 そのまま連行したのはパイロット専用の更衣室だった。女子のではない。男子の方にふたりを連れ込んだ。


「エー先輩。俺、用事があるんだけど………わっ」


 更衣室にはロッカーがある。20人分はある。縦長で、俺くらいの身長なら立ったまま入れてしまう大きさだ。


 なにも入っていない未使用なロッカーを開けると、ソータを放り込む。


「エー先輩、なにを………ひゃっ!?」


 次いでアイリも放り込む。


 ふたりが重なったところでドアを閉め、施錠した。


「ちょ、ちょっと!?」


「なにするんですかエー先輩! 気がおかしくなったんですか!?」


「はは………多分、おかしくなったのかもしれない。でも記憶ははっきりしてるんだよなぁ」


 残念ながら精魂尽きただけで、精神的におかしくなったという自覚はない。


 そして記憶もある。


「アイリ。俺、前に言ったな」


「え?」


「辛くなったら、ソータと同じロッカーに詰め込んでやるよって」


「う、うそ………本気だったんですか!?」


「でなけりゃ、こんなことやらないさ。うんうん」


 変だな………なぜだかデーテルに会った時よりも、元気になってる。


 久々に楽しいって感情が溢れて、活力になってもいる。


 ロッカーは縦に長いが、幅は広くもない。広域だってそこまでない。


 そんなところに子供ふたりを監禁すれば、どうなると思う?


 そう。超密着状態の完成!


 うわぁ、尊いなぁ!


 ワクワクするなぁ!


 だって今、ソータとアイリはお互いの顔がすごく近いんだぜ? 体だって触れ合ってる。


 ぬふふへぇ。


 そろそろソータにも自覚してもらわないとな。異性ってやつを。


 超絶狭い場所にふたりきり。まさしく抱き合っているような姿勢。ソータの体に押し当てられるアイリの柔らかい部分。ははは。これでソータが意識しないってなら、ぶん殴って修正してやろうか。


「ソータ。その用事ってなんだ?」


「え、えっと………その、そうだ。シドウ少尉が………」


「あ、シドウ少尉ですか? ソータになにか頼んで………え? なにもない? そうですか。失礼しました。では。………だってさソータ。嘘はよくないな」


「っ………!」


 アイリと会話することを拒んだソータは、シドウから用事を頼まれたと嘘をついて引き離そうとした。本編でもそうだった。でもそうはさせない。シドウへ連絡は入れてないが、この程度の演技で看破はできる。


「悲しいなぁ、ソータ。アイリにも俺にも嘘つくんだ?」


「それは………」


「それからアイリ。さっきのは良くないな。ソータだって思うことがあるんだからさ。強引に引き留めようとしたって、素直に振り向くはずがないだろ? お互い初対面じゃないんだ。幼馴染だったら、長年の付き合いで相手の考えや癖ってのが、理解できると思ったんだけどなぁ」


「それがわかれば、苦労はしないですよ………でも、そうですね。ソータ、ごめん。ちょっとしつこ過ぎたかもしれない。ソータは強引なの好きじゃなかったね」


「い、いや………そうじゃなくて」


 ぬふふへぇ。


 良い感じに修正できてるでねぇの。


 そうそう。思い出してきたぞぉ。こういうシチュエーションは、俺が執筆したソーアイ純愛小説の展開のひとつだったってなぁ。ロッカーじゃなかったけど、狭い空間に閉じ込められて心境を吐露し、ラブラブチュッチュ。ハッピーエンド。拙い作品だったけど、俺は書き終えて満足したね。


 でも今はもっと満足してる。


 俺の理想が目の前にあるんだぜ?


 本編には絶対にない展開。しかも嬉しい誤算で、アイリが素直に謝ってから、ソータの纏う空気が変わった。


「んじゃ、俺は外出てるから。10分くらいしたら鍵開けに来るよ。更衣室の前に清掃中の札を出しておくから、安心して話し合うんだな。………あ、そうだ。ソータ、目を閉じろ。で、アイリは首だけ後ろ見れるか? ほら、これやるよ。………()()()()()()になって、苦しみに耐えられなくなったら使いな。その時は躊躇うな」


「は………え、ちょっ!?」


「じゃあなぁ」


「エェェェエエエエエエせんぱぁぁぁああああああいッッッ!!」


 ロッカーのドアには隙間がある。


 なんの用途かは知らないが、空気穴のようなスリットだ。


 そこにポケットから取り出した、白いビニールで包装された小さなシートを差し込むと、辛うじて腕だけソータの体から離せたのか、アイリが抜き取った。


 狼狽したあと、怒号が響く。


 効果は抜群だ。この前の俺がそうだったからな。アイリなんてもっと酷いことになっているだろう。なんて愉快。


「どうしたの? アイリ。その四角いのはなに?」


「見ちゃだめぇぇえええええ! 目を閉じて! それから知らないなら知らないでいいの! これは知らなくても恥ずかしいことじゃ、ないからっ!!」


「ちょっと静かにしてよ。ここ狭いから余計にうるさくて。で、なんでアイリはそんなに必死になってるの? 顔、赤くなってる? 薄暗くてよくわからないけど」


「赤くなってないっ!!」


 ギャォォオオン! と吠えるアイリ。可愛いなぁ。


 俺は更衣室のドアの前に清掃中の立て札を設置し、外に出ることなくなかに戻り、足音を立てず、息を殺してロッカーに接近した。


 こここそが聖域だ。


 離れてなるものか。


 ずっと憧れたソータとアイリのカップリングが推せるんだぞ?


 尊い会話が聞こえるんだぞ?


 ククク。アイリもいい感じじゃないか。


 イカれたカウンセラーから押し付けられるようにポケットにねじ込まれたままだった避妊具が役に立つ。かつての俺同様にアイリの思考を、それ一色に染め上げてやった。


「あ、あの。ソータ」


「う、うん」


「私ね、パイロット科だったけど………整備士になっちゃったじゃない」


「そう、だね」


「悔しかった。そりゃあ、私の実力じゃ戦場では通用しないってことはわかってた。でも、みんな戦うためだけにアスクノーツで勉強して、努力してたわけじゃない。適正があったからガリウスのパイロットになれた。ずっとそれが負い目だった。ううん。今でもそう。悔しくて悔しくて、たまらない。同じだって言ってたエー先輩も、リモートだけど戦場で活躍してる。なんだか私ひとりだけ置いていかれているようで」


 それを述べるのは第2期の終盤だ。


 熾烈極まる幾多もの戦場を駆け抜け、生存した数少ないパイロットであるソータに、特殊な条件で戦場に立つことになったアイリは、()()()笑顔で言った。もうその頃になると、ソータもアイリも壊れかけていたから。笑うことなど滅多になかった。


 だから早期でこんな会話ができるようになれば。


 ソータがアイリをこの時点で理解できていれば。


 ふたりですれ違いが生じることなど、ないのだ。


「みんなに嫉妬してた」


「………多分、俺が同じ立場だったら、嫉妬すると思う。そっか。アイリはそう考えてたんだ。俺、てっきり………いつもみたく世話をやきに構ってくるもんだと。親みたいにさ」


「そんなこと………ううん。あったかもしれない。昔みたいに接することで、ソータと少しでも話ができればと思ってた。聞いてほしかったんだ。私の愚痴。ごめんね。鬱陶しかった?」


「うん。かなり」


「酷っ。はっきり言うのね」


「ごめん。でも、そうじゃなかったってわかったから。アイリも必死だったんだね。俺も気付かなくてごめん」


「わあっ」


 ガタガタとロッカーが振動する。


 やるねぇソータくん。


 見なくてもわかるぞぉ。


 アイリを抱擁しやがった。アイリの脳内は避妊具のことを忘れられておらず、互いの距離が無くなった途端に、イメージが戻ってきたことだろう。


 するとどうなる?


 アイリはもう、ソータの体のこと以外を考えられなくなるんだなぁ。


 うふふへへぇ。


 こりゃあ、いいぞぉ。


 なんて楽しい………楽しい?


 あ、そっか。


 これが、楽しいんだ。


 これが、俺がやろうとしてた推し活だったんだ。


 俺はこれがしたいがために全員を導いてきたんだ。


 今、やっと気付いた。


 だから俺は、死んじゃいけない。なぜなら、ソータとアイリがイチャイチャする時間を何度でも立ち会って、味わい尽くすために。


 身代わりになどなってどうする。死んだら推し活どころではない。


 死ねない。こんなところで死ねないんだ。


 ソータとアイリを曇らせちゃいけない。そのためにはみんな救ってみせる!


 いつか行われるだろうソータとアイリの結婚式に参加したい。ソータとアイリの赤ちゃんを抱っこしたい。


 誰かに蔑まれようが、だ。


 俺は、生きる───!



チート主人公ではないので失敗もあります。そこから這い上がる根性を描く代償として、ソータとアイリをイチャイチャさせてみました。ごめんねふたりとも。

今回の大量更新はいかがだったでしょうか? もし気に入っていただけたら応援していただけると嬉しいです!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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