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みんな大好きA02

「………容体は安定した。薬が効いて、痙攣も治った。もう大丈夫だけど、しばらく絶対安静ね。さ、みんなは今日のお仕事頑張ってね」


 レイシアはメディカルルームにあるベッドのひとつで眠っている少年を包囲する老若男女に、綺麗な笑みを浮かべて小蝿を払うがごとく追い出そうとした。


 しかし、そんなレイシアの言葉が彼らの耳に届くことはなく、嘆息するしかなかった。


「あのー、もしもーし? 聞いてますかー? おーい」


「………聞こえている。大丈夫だ」


「なら返事くらいしてよ」


 まるで子供のような煽り方を向けた幼馴染のシドウだ。


 耳を摘んで質問してみる。


 真面目、あるいは頑固が服を着ているような男は、ずっと一貫した表情をしていた。


 また、それは彼の父親も同じで、ずっと罪悪感に駆られている面持ちでエースを見ていた。


「ハァ。仕事に遅れが生じても知りませんよ。カイドウ主任?」


「問題ねぇ。部下がうまくやってらぁ………」


 彼にしては、覇気のない返答だ。


 ソータたち学徒兵8人と、シドウとカイドウの大人ふたり。計10名がエースを囲んでいた。


 そしてすぐに、


「容体は?」


 レイシアの父であるクランドまでメディカルルームに足を運んでしまい、レイシアは天を仰ぎたくなった。


「安定してます。けど、しばらくは安静に」


「………わかった。カイドウ」


「おう。まぁ、ジャケットの製造も、もうすぐ終わる。こいつは本来の………いや、整備士とするか、パイロットにするかはまだ決めてねぇんだったな。一号機は俺と部下で足りるし、もうパイロットにしちまうか。ドローンカメラ限定だがよ。なら、どうすんだい。シドウ」


「絶対安静だ。プロトタイプガリウスGには乗せん。お前たち、しばらくエースのダイレクトサポートは受けられんが………気落ちしている場合ではないぞ。こいつを守れるのは、俺たちだけだ。今こそエースから受けた恩を返せ。いいな?」


「はい!」


「はいはーい。空元気振り絞るのはいいけど、メディカルルームだってこと忘れないでねー。そういうのはミーティングルームでやって。せっかく寝たのに。エースくん起きちゃったらどうするの? シドウもちゃんと考えてよ」


「………すまん。どうやら俺も、気が動転しているようだ。我ながら情けないな」


「………無理もないか」


 レイシアは、シドウがこんな自嘲するとは思わず、また久しぶりに見た表情だったゆえ、許してしまう。


 知らなかったのだ。規律を重んじ、時としては厳しく切り捨てる幼馴染が、ひとつ歳が下の少年が倒れただけで、こんなにもショックを受けていたなど。


「ハァ………それで? 彼がこんなになった原因は?」


「いや、原因って言われてもよ」


「エースくん、ずっとみんなのために動いてたから、シドウの副官になったわけでしょ? けど………ただのストレスなんかじゃ、こうはならない。ひとにもよるけど、エースくんは過労になっても気力で動き回れるほどの胆力があった。じゃあ原因はなにか。昨日の晩御飯を抜いたから脱水症状になった? 違うよ。こんなになるまでの、強いショックを受けた。それがストレスになった。………みんな、目を閉じて。はい。思い当たるひとは挙手」


 椅子に座り、どちらが上官かわからない指示を出すレイシア。


 クランドとカイドウまでそれに従い、黙祷するように全員が目を伏したなかで、挙手したのは3人。


 クランドとカイドウとシェリー。3秒遅れでコウとハーモン。


 いや………


「って、結局全員なの!? え、どういうこと?」


 もう目を閉じるまでもなく、全員同じ罪を自覚していたので、思わず声を上げるレイシア。「え?」と全員が目を開けて、周囲を見た。


 反応は様々だが、とりあえず先に手を挙げた3人に話を聞いてみることに。


「シェリーちゃん。なにがあったの?」


「昨日………私が、エー先輩を見つけたから………エー先輩が一生懸命になって作り上げたものが………台無しに」


「どういうこと?」


「あー、レイシア。それについては俺から説明する。昨日こいつは、休めっつってんのにドッグで隠れて作業してやがった。シェリーたちが発見して引き摺り出し、俺がこいつが必死こいて作ってるものを見たんだよ。で、メカニックとしてガチの意見をくれてやったんだ。………まさか、こいつがこうなるたぁ、俺も思ってなかったんだがなぁ」


「なるほど。エースくんのアイデアを酷評したと。………お父さんは?」


「勤務中は艦長と呼ぶように。私はこの艦の代表だ。すべての決定権がある。同時に責任がある。彼が倒れたのも私の責任だ。オーバーワークを許し………いや、押しつけてしまったのだからな」


「間接的ではあるけど責任があると。………うーん。でも、それだけなんですかねぇ」


 レイシアは首を傾げた。


 それからハーモンとコウが自分の罪状を打ち明け、その他にも自覚している罪を白状する子供たち。しかしながら、レイシアはそれらの独白を些細なものとして捉えていた。


「多分、もっと別の、深刻な問題があるはず。エースくんだって整備士として、カイドウさんにプロだって認められていないことは理解してます。どう足掻いたって勝てないと。で、最近躍起になって作った新装備? それがボツをくらうことだって、多分予想できてたはず。そうでしょう? カイドウさん」


「………まぁ、結果で見ればそうだな」


「エースくんは強いですよ。倒れそうになっても踏ん張れる。………今回の症状はストレスによる疲労と結論付けるのは簡単です。整備士見習いを兼業してパイロットみたいなことをした。過労になっても働き続けた。でも、もう一度言います。エースくんが消耗したのは、昨日のその一件であることも明白です。個人差もありますが、被害妄想が激しくてこうなったのもあり得ます。自信を無くすほどのボツをもらった以外に、その奥でエースくんの狙いが崩壊してしまったから、こうなったとも。………とにかく現状はわからないことだらけですので、今日はこのままメディカルルームに収容して、症状が治ったら部屋に戻します。幸い、重い病気でもないようだとドクターも言っていますし」


 全員納得のいかない面持ちをしているが、だからといって全員が集合していても彼らにできることはなかった。


 シドウに目配せすると、子供たちを引き連れてメディカルルームを出る。カイドウとクランドもポジションに戻った。


「………さて。彼が起きたら大変だなぁ。カウンセリングするにも、どの角度からアプローチしたものか。………この子が抱えてるもの、全部知れたら楽だけど、話してくれないだろうなぁ」


すごいペースでPVが上昇しておりビビっております。

次回は19時頃に更新し、可能であれば21時に更新する予定です!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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