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みんな大好きA01

 この数日、根性と気力を振り絞って設計したビームシールド計画が、潰れた。


 オーバーワークを咎められ、後輩たちに担ぎ込まれた自室で、いつの間にか寝てしまったらしい。


 シェリーの姿はなかった。ベッドも俺が横になっていた部分以外、温かくない。随分と前に出て行ったらしいな。


 枕元にあった端末を手にして照明をつけ、ベッドから這い出る。


 気怠い。


「ハルモニ。メディカルチェックを」


『イェス。メカニック・エース』


 腕に装着した端末でハルモニを起こすと、数秒で俺の検査を行なってくれた。


 とはいえ医者のやるそれではない。体温と脈拍と血圧くらいだ。


「微熱の症状が出ています。疲労が取れていません。マスター・カイドウより本日は特例の休暇を与えられております。またメカニック・エースの起床をドクター・レイシアに報告します』


「有休か。で、なんでレイシアさんに?」


『ドクター・レイシアが、メカニック・エースの診察を行います。起床時にコールせよと私に命じました。また、この命令はメカニック・エースより上位の権利者から発せられたもので、メカニック・エースには拒否権がありません。ドアをロックします』


「………周到だな」


 施錠をする辺り、なにがなんでも俺を逃がさないつもりだ。


「………気持ち悪ぃ」


 朝から最悪な気分だ。便所に向かい、思い切り嘔吐した。


 それでも吐き気が治らない。ずっと胃がムカムカして、手足が痙攣する。


「がふ、ぐふ………おぇえ」


 もう吐くものがなく、唾液を滴らせながら涙を流す。


 苦しくて泣いているのかもわからない。


 とにかく、もうぐちゃぐちゃだった。


『ドクター・レイシアに緊急でナースコールします』


 ハルモニは俺の症状が普通ではないと判断したのだろう。


 数分後、ガラガラとなにかが鳴りながら、ドアが開き、レイシアと数人が駆け込んだ。


「エースくんッ………こんなになるまで………ハルモニ!」


『イェス。ドクター・レイシア』


「エースくんはなにか服用した? 処方した栄養剤の他に、過剰な睡眠薬の摂取とか」


『ノー。メカニック・エースは昨晩からなにも口にしておりません』


「なにも食べてないでこれか。………脱水症状。あるいはストレスか。とにかく運びましょう! ストレッチャーを!」


「はい!」


 改めて見ると酷いもんだ。


 ようやく吐き終えて、トイレの床に座り込み、唾液を垂らしているところを見られた。


 レイシアが連れてきた軍医たちが俺を布に乗せて、ストレッチャーの上に運ぶ。


 そして3人で走りながらメディカルルームに直行した。


「通して! 急患です!」


 そんな叫ばないでほしい。なんだか頭にガンガンと響くんだ。頭痛まで激しくなってきやがった。


 目も回って………あれ? もしかして、結構ヤバい?


「シドウ! エースくんが倒れた!」


『なんだと!? くっ………すぐ行く!」


 シドウまで呼びやがって。なんだ。こんなになるまで働いた罰として、今度こそ磔にするつもりか?


 まぁ冗談だ。大人たちって心配性だからなぁ。


「通して!」


 いつもの時間に起床したから、学徒兵も起きていて、朝食のために食堂に向かう途中だったらしい。レイシアの語調からして、かなり大混雑が予想される。


 やめてくれよぉ。いくら近道だからってさ、そんな見世物みたくしないでくれ。


「え、えっ!?」


「エースッ!?」


「先輩!?」


 ああ、これはまだいい。整備士の同級生と後輩だ。


 でも推し活の対象者に見られでもすればきっと、


「エー先輩!?」


「なんでエー先輩が運ばれてんだ!?」


「そんな、エー先輩っ!」


「退いて! 急患なのっ!」


 ああ………やっぱりいたか。


 今のはソータとハーモンとアイリだな。


 で、やっぱり駆け寄ろうとして、レイシアの一喝で止められたと。


「エース先輩………」


「くっ………やはり俺だけでも残るべきだったか」


「………エー先輩」


「やっぱり無理してたんだ………」


「エー先輩っ!」


 学徒兵が開いた道を通過すると、騒々しくなる声のなかで微かにユリン、コウ、ヒナ、クスド、シェリーの声も聞こえた。


 フルメンバーじゃねぇか。


 ダメだこりゃ。


 当分働くの禁止される。


 それがなにを意味しているかって?


 推し活禁止も同然。俺にとっては呼吸をするなと命じられているも同然。つまりは死ねと。


 最悪だ。また気分悪くなった。でも吐けなくて、唾液だけが滴り落ちる。


 はは。まるで薬物の中毒患者みたい。


 ………なんで俺、ここにいるんだっけ?


 なんでかな。急に、なにもわからなくなってきた。


 推し活のためだよな。


 あの子を死なせたくないんだよな?


 でも、間に合わない。俺がこんな弱いんじゃ、きっともう、なにも守れない。


 最悪だ。俺はきっと、あの連鎖する悲劇を目の前で見る。


 精神崩壊しかけるのはソータだけじゃない。俺もだ。


タイトルに反して憂鬱な内容ですが、これで間違いありません。

次回は15時を予定しております!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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