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所詮は子供C02

 カイドウside


 グラディオスの主任整備士として着任してから、どれだけ経っただろうか。


 旧友が艦長を務める艦と知り、胸が躍った。


 これまで様々なコロニーや軍艦で整備士として勤務したが、どこもなんというか保守的かつ消極的。機械を扱う手前らまで機械化しているようで、どうも気が乗らなかった。


 理由は単純だ。


 どこも低予算を言い訳にすりゃ、整備士が納得すると勘違いしてやがる。


 そりゃあ予算の都合があるのは俺にもわかっていた。それでもやり繰りするしかない。限られた予算のなかで戦える機体を作らなければならねぇことくらい。


 足りないからと言って、整備士やパイロットの給料や緊急出撃手当を減らしたとなればモチベーションが下がる。免罪符のように上が振り翳すのも無理もねぇ。


 だが───そんな環境では、有望な人材なんぞ育つはずもなかった。


 どいつもこいつも、鉄火場に立つ職人として、プライドってもんがありゃしねぇ。


 俺はそういう師から教わり、どんな環境だろうが戦える機体を作り上げた。だが上の連中は、戦うことを目的とせず、動きさえすればいい機体を望んだ。


 わかっちゃいねぇ。そんな欠陥だらけの機体なんざ、棺桶と変わりゃしねぇ。


 パイロットが日々どんな思いをして出撃してると思ってやがる。


 今日はどこが壊れるのか。戦いのなかで、どこが動かなくなるのか。なんて不安に駆られる。


 命懸けの戦争をしている最中で、いきなりメインカメラの反応しなくなり、サブカメラも機能せず、死んでいく。


 最悪だった。パイロットもだが、そんな欠陥機しか作れねぇ俺自身が罪悪感で死にたくなった。


 だから………当時の劣悪な環境を作り、私腹を肥やすクソみてぇな司令官をぶん殴ったら左遷された。後悔はなかった。


 だが、そんな俺を拾ったのがクランドだ。


 クランドは昔から優秀で、有望だ。艦長となり、俺を整備士の主任に据えた頃からそうだ。クランドはクルー全員を大切にしていた。予算がどうのと言い訳はしない。主にパイロットに対して最高の環境を作ると宣言し、そのために早期から準備していた。


 倅もパイロットとして着任し、単身ながら困難な任務をやり遂げながら進み、サフラビオロスにてケイスマンに依頼していた新型ガリウスを受領し、パイロットが増えれば負けることはないと考えていた。


 なにもかもが揃った順風満帆な航行。敵勢力もサフラビオロスまでは猛威を轟かせることはない。


 すべてのピースが揃ったその時。グラディオスは不落の、連合軍の象徴にもなるだろう───などという夢物語を見ていた。


 実際に最新鋭機たる第七世代ガリウスGは欠けることなくすべて受領。


 しかしサフラビオロスは大破し、パイロットはあろうことか学生という、またある意味での夢物語と変貌した。


 俺は思ったね。こんなガキどもじゃ、3日ももたずして全員脱落すると。


 別に、志願した学徒兵が使いものにならなくなろうが関係もなかったし、大したことはなかった。その場の気分で志願した志しの欠片もないような子供に、戦場が務まるとも考えちゃいなかったし、大した期待もしちゃいねぇ。


 なにより、俺たちはそういうガキどもを守るために軍人となったはずだ。


 軍人になるために軍学校を出た新兵なら、弱音を吐いたら尻を蹴り励ましてやるのも俺の仕事。負傷や精神がイカれるなどの不祥事以外のリタイアだけはさせねぇ。


 だが………実際は違った。


 誰もリタイアすることはなかった。


 むしろ日に日に士気が高まってやがる。練度も当初から比較すると、まるで別人だ。


 なんでこうなった?


 涙や涎、果てにはゲロと糞を垂れ流して「もうできません!」と懇願されても、俺らは許したはずなのによ。


 そして以上なほどの統率は、軍人としてのそれではない。無論、倅が必死こいて手塩にかけて育てたガキだ。軍人らしく振る舞えと言えば、文句を垂れながらそうするだろう。だかガキどもの纏う空気………いや、共有するなにかは軍隊らしからぬ、輝いて見えるなにかがあった。


 シドウをも上回る操縦技術を持っている、ソータ・レビンスとかいう不思議なガキが発端かと思った。最初はクランドもそう考えて、サフラビオロスの物資運搬任務に連れて行かせた。


 だがあともうひとり。なぜだかな。妙に気になるガキがいて、その任務に同行させてからというものの───パズルでいう、最後のピースがピタリと嵌った。


 こいつだ。ソータなんかじゃねぇ。むしろソータをも操り、周囲を巻き込み、果てには俺ら大人さえも利用して、俺たちの理想を超えて、もっとより良きなにかに変えようとしている、異物。


 多分だが、人類はそれをこう言うのかもしれねぇ。



 ()()と。



 そうだ。まさしく希望だ。


 軍人らしからぬ、そして学生らしからぬ、第三のなにかになろうとしている異物。



 エース・ノギ。



 俺ぁ、こいつに正直ビビりっぱなしだった。


 放置すりゃ、なにを仕出かすかわかりゃしねぇ。


 ゆえにクランドと話し合い、俺の近くに置いておくことにした。俺自身がエースとかいう異物の正体を見抜いてやろうと努力した。


 だが、エースは………結局のところ、正体が掴めねぇままだった。


 整備士見習いのくせに倅が気にかけ、ドローンカメラを経由してパイロットのメンタルを安定させようとしたら、頼んですらいねぇダイレクトサポートを始めた。


 提案したシドウすら驚いていた。「奴がここまでやれるとは思っていなかった」だとさ。


 そりゃそうだ。俺だって思ってねぇ。


 果てにゃシドウの要望で、整備士見習いを兼任して、倅の隊の副隊長に正式に任命されちまった。ありゃあ、デーテルのヘタレ野郎がギャンギャンと騒いで猛反対してやがったが、結局は時間の問題だった。


 そして、奴は倒れた。


 原因はオーバーワークによる過労。レイシアが久々にブチギレて、俺らに説教するほどだ。


 けど、俺は逆に………安心したね。


 奴は日に日に予想外の、斜め上の成長をする。


 もう人間たぁ思えなくなるほどだ。


 しかし、奴も人間だった。過労で倒れた。罪悪感もあるが、俺ぁ嬉しかった。


 もしかしたら、人間ではないなにかがスパイとして潜り込んでいたのではないかと思えたほどだったからだ。


「………けど、これはよぅ」


「案ずるな。すべてお前の責任として問わない。私もその責任の一端を担う」


「ああ、いや。そういうことじゃねぇんだ」


 その日の夜。クランドを俺の部屋に呼んだ。


 久々に酒を飲みたくなった。特上のウィスキーを開けた。


 目をかけていた部下が倒れたのに不謹慎? 冗談言うなや。飲みたくてクランドを呼びつけたわけじゃねぇ。また、話し合うためだ。


「俺の悩みの種は、こいつよ」


 グラスをテーブルに置き、中央に置いたエースに与えたパソコンが浮かべるモニターを指で示す。


「ビームシールド。………光学兵器として、運用するつもりだったのか? しかしアンノウンに通用する………のか?」


 クランドに見せたのが、エースが設計したというビームシールドの設計図だった。


 クランドはメカニックの出ではないが、この分野に疎いわけではない。ケイスマンの野郎の遺産を見せた際、あまりの内容に絶句してやがったからな。


「ケイスマンの遺産にゃ、同じものこそなかったが、盾ではなく武器としてなら、類似するものはあったぜ。………ハルモニ」


『イェス。マスター・カイドウ』


 ハルモニはそのパソコンに侵入し、新たなモニターを出現させる。


『メカニック・エースが設計したビームシールドの参考にした兵器は3点。そのなかでもっとも注目したものが、これです』


「ビームアックス………しかしケイスマン教授は重要視していなかったようだな」


「奴も奴なりの美学ってもんを持ってるからな。………だがよう」



やっとCパートです。今回は長かった………と思いきや、これからこんな長さになります。

執筆ペースが落ちたと思ったら、序盤より1000文字は多く書いていました。1日で10000文字以上は書いていました。こんなの久しぶりです。さぁ今日もいっぱい更新しましょうか!

次回は12時頃になります! ………AIイラストがまったく手をつけられておりません。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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