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所詮は子供C01

 ハーモンとコウが俺を肩に担いで、えっほえっほと部屋まで運ぶ。


 更衣室で一旦降ろされ、着替えは自分でできるからノーマルスーツを脱ぐが、脱いだ途端に、なぜか男子更衣室に侵入したシェリーにそれを取り上げられた。


「ちょっと匂うのでクリーニングに出してあげます」


 だとさ。


 ノーマルスーツの予備はあるが、それも取り上げられる。本格的に今日はドッグに侵入禁止にするみたいだな。


 まぁいざとなったら、別のところにあるノーマルスーツに着替えるだけだけど。ひとつだけ覚えがある。


 シェリーは更衣室から出ているうちにジャージも取り替える。コウが洗い立てを差し出してくれた。なにこの待遇ぶり。


 着替えが終わると、またふたりに肩に担がれ、借りている士官室に連行される。


 そこに待っていたのはまたシェリーで、拘束具を携えて───


「………エー先輩、どうしたんですか? 思ったよりも元気ないですね」


 俺とベッドを繋ぎ止めて、何時間も眠らせるプランを中断してシェリーが尋ねた。


「ん………いや、なんでもないよ」


「エー先輩。そりゃ、こんなやり方をする俺らに苛立つのもわかるっすけど、それは先輩が休まねえからっすよ? 自己責任っす」


「そうじゃないんだよ、ハーモン。………ちょっと放っておいてくれ」


「いや、そういうわけには………」


「ハーモン」


「………なにかあったら、言ってくれっす。俺、すぐに来るんで。水とか持ってくるっすよ」


「うん。ありがとな。コウも」


 いつもなら俺もギャーギャーと騒いだかもしれない。ふたりにやめろと叫んでたかもしれない。俺は先輩だぞって言いながら、担がれているのを利用して、ふたりの頭をガシガシと撫で回したりと。


 でも、それをする気力がない。


 ハーモンとコウは、ベッドに座る俺をしばらく見ていたが、退室する。こうして気にかけてくれる辺り、ふたりは成長したな。


「………お前もだ。シェリー。ひとりにしてくれよ」


「とか言って、また仕事するつもりなんでしょ?」


「………ん」


「え?」


「お前が持っててくれていいよ」


 そう言って差し出したのは、貸与されている端末だ。前世では現代人で言う万能な機能満載な道具、スマートフォンに近いな。


 生活必需品として名高いそれを差し出す。他人に預ける。すなわち、俺はもうなにもするつもりはないと意味していた。


「い、いや。そこまでしなくても」


「そうか?」


「………先輩。やっぱり疲れてるんですよ。ほら、横になって」


 確かに、いつもの俺ならするはずがない。腕の端末はスマートフォン以上に、この艦内では重要だ。鍵の開閉はもちろん、位置情報や通信機能など、艦と個人を結びつけるツールとなっている。


 それを他人に預けることこと、どうにかしているのだ。


 シェリーは拘束具をしまって、俺をベッドに押し付けるように仰臥させる。


「………もしかして、さっきのことで、怒ってるんですか?」


「うん?」


「エー先輩があんなに必死で作ってた装備が、カイドウさんに知られちゃって、全部ダメ出しされちゃって………そうさせたの、私ですよね?」


「………うーん。どうだろ」


「………ごめんなさい。私、先輩の努力、壊しちゃって………」


 そういうこと言われると、弱ってしまう。


 肯定も否定もできないから。


 閉じてた目を少し開ける。シェリーはいつもの不機嫌そうな目ではなく、涙を浮かべていたのでギョッとする。


「い、いや。待て待て待て。なんで泣くんだ?」


「だって………エー先輩が頑張ってたのに………」


 ベッドに座り泣きじゃくるシェリーに驚いて、上体を起こした。


「違う。違うんだ。いいか、シェリー? あのデータは、遅かれ早かれ、おやっさんに見せるつもりだったんだ。俺が俺なりに、みんなの役に立ちたくて作ったんだよ」


「けど………早かったんですよね? でなければ、あんな………全部ダメだなんて。そうさせちゃったのは、私で………」


「確かに早かったけど、まぁ………うん。ある意味これでよかったんだよ。問題点が見つかった。問題点満載のまま実装してみ? 危険に陥るのはお前たちだ。今作ってるのはケイスマン教授が設計した装備だから信頼性があるってだけで、素人の俺なんかじゃ限界があったんだよ」


 そう。限界があった。


 俺は自分の力量を過信していた。


 過信することなく新装備を設計し、第三者の視点からも見て、完璧なものを作るはずだったが、それこそが驕りだったのだ。所詮は子供。プロではない、しかも見習いが作った装備など、カイドウ含め先輩整備士たちだって作りたくないだろう。それで故障に繋がったら大問題だ。


 そう自分に言い聞かせると、本当に悲しくて………


「限界が………あれ?」


「先輩っ」


 視界がぐらついて、座っていられなくなる。シェリーが受け止めてくれなかったらベッドから落ちていたかもしれない。


「ごめんなさい………嫌いに、ならないで」


「なるもんか………」


 この程度でキャラクターを嫌いになるなら、推し活の申し子など自称はしない。


 悪意があったわけではないのだ。心配してくれただけ。


 ただ、ちょっと疲れたんだ。みんながそうであるように、俺も命懸けだったから。


 数週間をかけて練ったプランが崩れた。やっと形になってきたというのに。


 あの悲劇が起こるまで、あとどれくらいかもわからない。


 どうにもならないのか? 別の方法があるのではないか?


 いっそのこと、パイロットを降ろすようシドウに諫言するか。


 ダメだ。疑われる。動き辛くなる。


 ちくしょう………いったい、どうすればいいんだ。


ブクマ、評価ありがとうございます!

先日はとても嬉しい応援をたくさんいただきましたので、本日も頑張って更新し、ランキング入り………すれば、いいなぁと思います!

次回はいつもどおり7時頃となります!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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