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所詮は子供B12

日間ランキングに載りました! ありがとうございます!

「せんぱーい? エーせんぱーい? 出て来ないならマジで狙撃しますよー?」


 はは。シェリーが懐いてくれて嬉しいけどさ。こんな待遇になるとは俺自身思ってもみなかったさ。




 5回目の戦闘が終わり、パイロットが帰投する前にプロトタイプガリウスGを飛び降りて、カイドウに休憩の旨を伝えたまではよかった。


 誰も疑うことなく「ああ、こいつはちゃんと休むんだな」と信じてくれた。


 けど、俺がそう簡単に指示に従うと思うのか? 残念。違うんだなぁ。


 通路を隔てる隔壁を通る───と見せかけて、Uターン。「あ、忘れ物しちゃったー」と言いつつ、いつもの簡易デスクへ。


 数秒の滞在なら睨まれるだけで済む。だから俺が使っているパソコンを引っ張り出して、全員の目が離れた隙にデスクの下に飛び込んだ。より奥へと匍匐前進し、しゃがまないと見えないくらいの場所で、うつ伏せになって作業開始。


『メカニック・エース。あなたには休憩命令が出ています。今すぐ作業を中断して───』


「はいはい。これが終わったら休むよ。少し静かにしててくれ」


 腕の端末を閉じる。ハルモニのコールがうるさくて気が散るからだ。機能が制限されるがやるしかない。


「各部出力調整。コアとなる基部がネックか。動力を機体から供給するかエネルギーパックを装着させて交換性を高めて………ああ、くそ。ビームだから熱に耐えられねぇ。けど防ぐって目的よりもアンノウンを熱暴走させるって目的だからこのまま進めて………耐久性がカスだな。このままじゃコアの部品ばかりが多くなって整備も苦労する。端折れるだけ端折って………チッ。また耐久値が下がった」


 幸い、ドッグはカイドウの怒号と整備士たちの応えと、機材が激しく鋼を削ったり叩いたりする音で溢れている。


 多少声を出したりキーボードを素早く叩いた程度では周囲に聞こえもしない。


「おやっさんを説得できる材料が皆無………起動したって何秒持続する? 耐久性がカスじゃあ長く続いたところでシールドとしてもアンノウンを暴走させもできない。じゃあどこを強化して………そうか。ケイスマン教授の遺産のなかにあった物理的なシールドに施した対ビームコーティングでコアを包んで、冷却装置も積んで………包むのはダメか。ビーム同士干渉しかねねぇ。あくまで表面を………ハルモニ、計算を………って、閉じてたんだっけ。クソッ。ひとりじゃ限界があるか」


「それは多分、寝不足だからだと思いますよ?」


「あと糖分もか、な………あ、あれぇ?」


「なにしてるんですか? エー先輩」


「しぇ、シェリー………」


「休んでくださいって、私言いましたよね?」


 たまたまでも、偶然でもないんだろうなぁ。


 それこそスナイパーならではの観察力。


 そこにあった鋭い視線が、死の宣告かと錯覚した。


「やっぱり休んでなかった。危うく見逃すところでしたよ。こんなところで、なにやってるんですか?」


「あ、あはは。自室じゃ落ち着かなくてさ。ほら、ちゃんと寝転んで休んでるだろ?」


 帰投してすぐに俺のところに来たのだろう。ノーマルスーツすら脱いでいないシェリーは、さらに眉根を寄せる。怖い。


「休むっていうのは休憩をするという意味で、パソコンを操作するってことじゃないんですよ。よいしょっと」


「あ、あれぇ? シェリーさん? それ、なにぃ?」


「この前作ってみたんです。廃材なら使っていいってカイドウさんから許可取ったので」


 呆れた面持ちをするシェリーは、背後に隠していたものを取り出す。長い筒をした形状。装填した注射器のような矢。まるで獣医が猛獣に発射する吹き矢のよう。


 ただし呼吸が動力ではない。片手で携えたハンマーが撃鉄を意味しているのか。考えたな。パイロット科も整備科も、その程度の工作は誰だってできる。


 火薬を用いていない、銃の仕組みを利用した凶悪な凶器。筒の先端が銃口を思わせ、ピタリと俺の額に当てられた。


「あの………シェリーさん? これ………さっきの矢が、俺の脳天を貫通するんじゃないですか?」


「大丈夫ですよ。木材に撃ったら食い込むだけでした」


「骨! 骨が割れて脳に食い込む!」


「じゃあ出てきたらどうです?」


 チクショウ! 面倒くさい性格とか自嘲していたけど、ここまでとは思いもしなかった。


 逃げられない。降伏の機会は与えられたが、待ち受ける未来の悲惨さは考えたくない。


「ならいいですよ。ハーモン。コウ」


「エー先輩。悪く思わないでくれや」


「休まないあんたがいけないんだ」


 グワッと広いデスクが持ち上がる。


 ハーモンとコウがデスクの両端を持っていた。無重力空間だからパワータイプのふたりなら簡単だったろう。


「おいなにしてやがるガキども………テメェ。エース。そんなところでなにしてやがんだぁ?」


「なに? エースだと? 休憩しに行ったはずではなかったのか!?」


 騒ぎを聞きつけたカイドウと、部下の様子を見に来たシドウまで集まってしまう。


「お前なぁ、いい加減にしろよ!? 働き過ぎなんだよ!」


「いや、おやっさん。これだけやったら仮眠しようかと」


「俺ぁ、お前をこんなワークホリックにするために指導してんじゃねぇんだけどよぉ。ジャケットの仕事だってもう無ぇはずだろ。いったいなにしてやがんだ! 見せろ!」


「あ、ちょ………」


 鬼でも裸足で逃げ出すほどの迫力で憤るカイドウに、抱えていたパソコンを奪われる。


 これは前世でも使っていた据え置きでもノートのパソコンではない。俺の腕サイズくらいの本体から、立体投影されるモニターとキーボードが現れるのだ。ノートパソコンよりも頑丈で、重ねて保管できるから収納場所も困らない優れもの。隠そうとしたが、パッと奪われる。カイドウの目は誤魔化せなかった。


「ったく………なにを必死にやってんだか………あぁん? んだぁ、こりゃあ」


 見られた。


 俺が設計しているビームシールドを。


 本編にも登場しない架空の武器。


 天破のグラディオスには物理的な武器と光学兵器が存在する。実体剣とビームの剣。実弾とビームのライフルみたいな。名称こそ違うが。


 とあるプラモデルを掲載できる掲示板で、ビームのシールドを装備したガリウスの姿があり、これしかないと判断。ケイスマンの遺産のなかに類似する装備がないか検索し、残念ながら似たものしかなかったので、最初から作ることにしたのだ。


「………大したもんじゃねぇか。アイデアは悪くねぇ。よくこんな短期間で思いついたもんだぜ」


 しばらく俺の設計に目を通していたカイドウは顎髭を撫でながら感想を述べる。


 しかし、最後まで読み終えたあとで下した判定は、やはり予想どおりだった。


「だが、これを実装させるわけにゃあ、いかねぇな。理由はお前が一番よくわかってんだろ?」


「けど………これがあれば、みんなを助けられます!」


「思い上がるんじゃねぇ。お前は整備士だ。俺らプロならともかくな、見習いの域を出てもねぇお前が、曖昧な思想とアイデアだけでどうこうできると思ってんのか? まぁ、その熱意だけは誉めてやるぜ。よくここまで考えたじゃねぇか。おう、ハーモン、コウ。この整備馬鹿をベッドに連行して、縛り付けて来い」


 悔しくて、なにも言えなかった。


 カイドウの言うことがすべてだ。すべて正しい。反論の余地がない。


 最初の課題がビームシールドの設計であり、しかしそれを乗り越えたとしても、製造をしなければならない。製造はドッグの一角で行われていて、カイドウの指揮下で稼働している。タイタンジャケットがそうだ。


 つまりカイドウの説得ができなければ、ビームシールドの製造は一生不可能なのだ。


たくさんのリアクションありがとうございます!

前書きでも書いたとおり、本日日間ランキングに入りました。本当にありがとうございます!

さて、これで7回更新できました。明日は5回とは申しましたが、できるなら………今日と同じく7回を目指したいですね。第6話が崩壊の始まりです。その前にCパートを終わらせなければならないのですが。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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