所詮は子供B10
「はは。変な声。なんだよ、そのリアクション。可愛いな」
「か、かわ、かわわわわ」
「ギャップって言うのかな。普段のシェリーは大人びているから、そんな新鮮な反応されると面白いな。でもそれも可愛い」
「や、やめっ………」
「可愛いのに可愛いって言って、なにが悪いんだ? あ、恥ずかしがるのも可愛いぞ? 吊り上がった目も治ってるじゃん」
「へ?」
「ほら、見てみ?」
展望デッキの重厚なガラスに映る自分の姿。
そこにいたのは、誰しも「こいついつもブチギレてんじゃん」と思わせるような険しい顔などではなく、狼狽して眉さえハの字になっている、年相応の少女の顔だった。
「あ、は、はは………私、こんな顔できるんだ………こんな顔、自分でも見たことなかった」
「可愛いだろ?」
「自分じゃわからないですよっ!」
「あ、元に戻った。でも赤くなったままだ。可愛いな」
「もういいです! やめてください!」
からかいが過ぎたかな。
シェリーはコウより猫度が高い。人間不信になった捨て猫のようにシャーと威嚇する様なんて、まんま猫だ。
「シェリー」
「ハァ、ハァ………なんですか?」
「デーテルはもう手を出させねぇよ。けど、まだ不安なことがいっぱいあるだろ。シドウ少尉は隊長とはいえ大人だから相談しにくいだろうけど、あのひとはあれで人望がある。なにかアドバイスをくれるかもしれない。レイシアさんのところには行ったか? あのひと、学徒兵を網羅するつもりだから、いつでも待ってるって言ってた。でも、大人だから心配ってなら仕方ない。なにかあったら、俺のところに来ていいんだ。俺も、いつでも待ってる」
「………まぁ、はい。そうですね。今でも両親のこともあって、レイシアさんのこともどこか信じられないってのも確かです。エー先輩のことも警戒してました。………でも、悪いひとじゃないって、今知ったから………だから、なにかあったら、行きます。でも、覚悟しておいてくださいね? 私、結構面倒なタイプだと思いますよ?」
「いいよ。面倒でも。あ、俺からも言っておくけど、レイシアさんみたく紅茶とクッキーのサービスは期待すんなよ? 菓子なんて作ったことないんだ」
「してません。………ふふ」
おや。今一瞬だけ、自然に笑えてたじゃないか。
これは良い傾向だな。
「では、今日は戻ります。おやすみなさい」
「ああ。おやすみ。ああ、そうだ。こんな夜中にひとりで出歩くのはやめとけ。デーテルに見つかったら面倒だ。一応、さっきの証拠写真を送っておく。どうしてもここに来たかったら、俺を叩き起こしていいから誘えよ?」
「はーい」
俺がミチザネ隊の副隊長に就任する前と比較して、シェリーはやっと柔和な笑みと自然な反応をしてくれた。
これでいい。彼女が抱える闇が少しでも緩和できれば。
シェリーはストレスを抱えやすい。むしろ、今までよくぞ我慢してた。
そして強すぎる責任感から、自己犠牲に出て………散る。自分が誰かを守ることが正義だと信じて疑わなくなるのだ。その頃になると、もう誰も彼女を止められなくなる。
だからここで、早期の歯止めがかけられたなら。きっと未来は異なるはずなんだ。
「よし。俺も寝るかな」
『メカニック・エース。ドクター・レイシアからコールです。至急、メディカルルームに来るようにと』
「うげ………え、なんで? レポートは定期的に出してるし、あの装備以外を共有クラウドにアップしてないのに」
『先程の失神の件です。私がドクター・レイシアへ報告しました。しかし急行する前にサブキャプテン・デーテルと、パイロット・シェリーの一件があり、ドクター・レイシアの出動の停止を呼びかけました。彼女は応じ、しかし一件が終わり次第、出頭せよ。とメッセージを預かっております』
「………時々、お前が本当は人間なんじゃないかって疑うよ。マジでやり方が人間そっくりだ」
『それは私にとっての最上級の賞賛です。光栄です。メカニック・エース』
「これじゃ、皮肉も通じやしねぇだろうな」
レイシアへのナースコールは余計だったが、デーテルの件を俺の思考を学習して伏せようとした独自の判断に驚嘆する。
その後、俺はちょん切られたくないのですぐにメディカルルームに直行。
あらましを説明し、シェリーを守ったことは誉められたし、情報の共有ができて助かるとも言われた。
が、俺の診察は散々で、軽度の過労と睡眠不足で体が悲鳴を上げていると指摘を受けた。やっていることが整備士のそれではない。子供の身では明らかなオーバーワークだったらしい。
俺としては半分くらいは趣味の、推し活の範疇です。とは口が裂けても言えないのが辛いところ。
新たな栄養剤の処方と、今日に限っては点滴を受けた。終わるまでの時間はしっかりと説教で費やされ、精神的に辛かった。反論したらちょん切られそうなくらい怖かった。
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