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所詮は子供B07

 合計5回はある戦闘で、俺はすべてリモート参加を余儀なくされた。


 主にコウのために。ハーモンも興奮して突撃しそうになると諌める。


 そうしている内に、俺はなぜか本格的に、ただの整備士であるはずが「ミチザネ隊の副隊長」の肩書きを手にして、艦長から呼び出されると正式にミチザネ隊の副隊長の任を受領するのだった。


 いや、マジかよ。と呆然とするも、食堂に向かえば学徒兵から賞賛され、ソータたちからは抱きつかれ、シドウやカイドウからは褒められた。どうやらこの親子の推薦があったらしい。


 むしろ遅かったくらいだぜ。とカイドウは言った。


 予定では2回目の戦闘を終えた辺りで副隊長に任命されるはずが、どうやら反対する声があったらしい。


 まぁ、思い当たるのはひとりしかいないんだが。どうせ、どこぞの副艦長辺りだろう。


 4回目の戦闘を終えて任命を受けた背景は、俺の予想外の働きにあったそうな。


 リモート参加した戦闘で、戦闘前のパイロットのケアを終えて、戦闘中の観察を誰よりも近い場所で行うと、見えてくるんだな。7人のパイロットが必要としているものが。


 例えばハーモン。タイタンジャケットが未完成の現状、素体のまま出撃している彼の装備はガチガチの近接戦向けのものに加え、マシンガンを携えていた。アンノウンが離れるとロングソードを収納しマシンガンに切り替えるのだが、いつもの癖でフルオートで乱射。すぐ弾丸が尽きる。


 他にはユリンの装備だったり、スナイパーとして狙撃しているシェリーだったり。ダメージコントロールに失敗してロングソードを失ったヒナだったりと、戦闘中にパイロットが困る事態が起こる。


 そこで俺は、カイドウに通信を入れて瞬時に補給を出した。コンテナに詰めたロングソードや銃弾といったものをカタパルトで射出。本格的に窮困した事態になる前に解決するダイレクトサポートだ。


 なんと、シドウも舌を巻くほどのドンピシャのタイミングで補給が届くから、これまで以上に戦いやすくなったという。


 グラディオスもなにもしないわけではない。支援攻撃が可能ならミサイルやビームを撃っている。ダメージコントロールを失敗しないソータと支援攻撃が合わさって、数秒の時間を確保。コンテナを受け止めたコウが補給を促す。


 まさに理想的な展開だろう。俺もここまでやれるとは思っていなかった。


 銃弾や推進剤といった消耗品は無限ではないが、サフラビオロスでの補填や、最初の補給船を救助したことで不足分を補うことができた。補給船の艦長とクランドは旧知の仲らしく、話をつけていた。


「あぁぁぁ………」


『お疲れ様です。メカニック・エース。リモート参加した戦闘が終了してから3分もせずに作業に移り、8時間はタイタンジャケットならび新装備の設計に没頭しています。本日は終了することをお勧めします。すでに就寝時間は過ぎております』


 副隊長に任命されてから、激務になった。今まで以上に。


 酷いもんだ。レイシアへのレポート。タイタンジャケットの設計。新装備の設計。ネームドキャラクターたちの救済。明らかにオーバーワーク。ランダムに発生する戦闘では、ろくに休めたことがない。


 そういえば、なにか忘れているような。


「………だな。今日はここまでにしよう」


『イェス。メカニック・エース』


 すでに夜勤の整備士たちが出勤して、ガリウスの整備や、タイタンジャケットに必要なものや、基礎の製造をしにかかっている。


 俺が携わるのは、ケイスマンの遺産のなかにあったデータの微調整と前世の記憶の再現だ。そこまで難しいことではないが、メインとしている新装備の進捗が芳しくない。頭を抱えた。


「なにか忘れてるよなぁ。なんだろう。夜になにかする。夜? えっと………あ、そうだ。女の子に関連していたっけ」


 最近はミチザネ隊全体を見ていたから個人に構っている暇がなかった。レイシアからお呼びがかかっていたが、激務ゆえに行けないと返答した。


 レイシア絡み?


 そう、えっと………女の子で、構ってあげなければならなくて。


 以前、トラブルを起こして、でも本編でなにかあって。


「あ………そうだ。シェリー」


 第5話Bパートのアイリの語りで一瞬だけだが、シェリーの姿があった。膝を抱えてベンチに座るシーンだ。


 シェリーとだけ会話できていない。


 救済対象はシェリーも同様。だから、どうかそこにいてくれと、展望デッキへと向かう。


 ところが、


「あ、れ………?」


 急に目眩がした。立っていられなくなり、俺は展望デッキを目前として膝を突く。床にぶつけた膝が痛いはずなのに、朦朧とする意識ではその感覚さえ麻痺しているのか───







「最低。やっぱり、そういうのが目的だったんですね」


「騒いでも無駄だ。監視カメラは逆を向いている。ここは死角というわけだ。証拠なき罪を訴えたところで、貴様の得にはならない」


 知った声で、ハッとした。


 どれくらい寝ていたのかはわからない。


 ただわかるのは、ドアの向こう───展望デッキで、男と女がなにか言い争っていることのみ。


「………流石、ゴキブリを飼いたいとかいうわけのわからない思考をするだけあるよなぁ。はは。見下しても下心ありきだったか。………ハルモニ」


『イェス。メカニック・エース』


「このドア、電子制御だったろ。音を立てずに開けてくれ。少しでいい。俺が体をねじ込めるくらい」


『イェス』


 ハルモニが展望デッキのドアを若干スライドさせる。完全に開ければプシュッと音が鳴るが、頭ひとつ分くらいなら作動はしない。


 整備士は機体の狭いところに体をねじ込んで整備することもあるから、狭い場所を通過する技術は習得済み。音を立てずに展望デッキに侵入する。


 するとまぁ、最近オペレーションルームに引きこもってると噂になっていた副艦長殿が、自分より一回りは歳が下の少女に迫っていた。監視カメラがどうのとか、用意周到じゃないの。


 しかも無理強いの相手というのが、またどうにも失笑を招いてしまう。


 シェリーだった。アイリが第5話Bパートで語る回想のなかの描写にもあったように、彼女は展望デッキのベンチで膝を抱えるように座り、呆然としてるシーンが一瞬だけあった。もしかしたら今日が初めてではないのかもしれない。


 デーテルが目撃し、監視カメラをいじって死角を作り、ことに及ぼうとしている。犯罪じゃねぇか。


 あれだけ民間人の出自を差別していて、いざ軍属になれば性欲の捌け口にしようとしている。到底許せることではない。


 彼女の口振りからして、同意のことではない。


 よしよし。お仕置きの時間だ。


 デーテルも言っていたじゃないか。死角だって。それは俺にとっても好都合。


「私に従え。私がこうすることで女は喜ぶはずだ。私はそこらの、汗臭い整備士どもとは違う。高貴な家系、優秀な頭脳。そして将来は総司令の座を担えるだろう。貴様は私の手付きとなるのだ。パイロットの収益など比較にならんほどの贅沢をさせてやる。だが勘違いするな? 正妻にはなれないからな」


「………最低。………え?」


「フッ。貴様は他の女とは違う。前からその目付きが気に入らなかった。だから私に従順になった時の顔が見たかったのだ。さぁ、舌を出せ。受け入れろ」


「なら、俺も同意見です。あなたが俺に従順になった顔が見たかった。さぁ、舌を出してください。受け入れてもらいますよ?」


「そうだろう。よかろう。舌を………は? ィイッ!?」


 ニュルンとデーテルの背後から抱きつき、腕を胸に絡めてやった。


 ああ。最高だ。下衆の驚愕した顔を間近で見られたんだからな。


 あと、これはお仕置きであって、断じて俺は同性愛者ではない。


リアクションありがとうございます!

次回は12時に更新予定です。本日はとにかくサクサク進ませます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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