所詮は子供B06
補給船の護衛艦隊を襲撃していたアンノウンはAタイプが2体とBタイプが3体、Cタイプが1体。計6体が出撃したガリウスFをバラバラにしていた。
ヒナたちは初めて見ただろう。
戦闘は初めてではないものの、誰かが犠牲になっていくところを。
同時射出されたカメラが戦場を映す。ノーマルスーツを着用した整備士たちは固唾を呑んで見守っていた。
「一方的じゃない………」
俺の隣にいたアイリが、震えながら呟いた。
すでに次世代期が開発されたとしても、連合軍にとっては主力機たるガリウスFは、量産性に優れながらも整備しやすい仕組みで、互換性のあるパーツの多さから、今やどの艦においても正式に数機は配備されていた。
ハイスペックな量産機は多くのエースの実力を遺憾無く発揮させる。
しかし、進化するのは人類だけではない。敵も同様だった。
四つ足のシルエットをしたAタイプ。人型のシルエットをしたBタイプ。そして三つ足でいて巨大なCタイプ。このなかで猛威を振るうのがCタイプだ。
ガリウスの全長は10メートル。対するBタイプも個体で差異はあるが、Cタイプは別格だ。なんと18メートルはある。前世で昭和に放送され、令和の時代になっても色褪せることなく伝説とシリーズを気付いた日本のロボットアニメの金字塔にしてシンボルとなった初代主人公期と同じ大きさ。
そんなのをこれから相手にしなければならない。シドウやソータならともかく、5人にとっては緊張する他ない戦況となるだろう。
「エース! こっちはいいぞぅ!」
「今行きます!」
「エー先輩。みんなをお願いします」
「おう」
カイドウの合図で移動する。アイリに応援されちゃ、やらないわけにはいかない。
移動先にあったのは、最近使っているタイタンジャケットの設計で使っている座席───ではない。俺がケイスマンから託され、臨時でパイロットに採用された際に再搭乗したプロトタイプガリウスGだ。ナンバーズではない中途半端な機体。
プロトタイプガリウスGには幾多ものケーブルが接続されている。起動はできるが、操縦できるわけではない。
今回は特例として、そしてシドウの要請によって、俺はプロトタイプガリウスGのシートに座った。
「出撃するわけじゃねぇ。お前がいると、あのひよっ子どもも落ち着くらしいからな。うまく導いてやれや」
「はい。では、接続開始します」
「あいよぅ」
コクピットに体を収めると、カイドウが身を引いて、ハッチが閉じる。
まるで出撃する時のような臨場感だ。シートベルトこそ着用しないが、操縦桿を握ると妙な圧迫感を感じた。閉所恐怖症の自覚はないが。
「ハルモニ。接続開始!」
『イェス。メカニック・エース』
プロトタイプガリウスGを起動すると、中央と左右のモニターが、メインカメラで映したドッグの情報を開示する。ただ、いつかのような振動はない。動力部に火を入れたわけではないからだ。電源を入れた待機状態である。主に、この状態で様々な実験や点検をすることになる。
ちなみにだが、ナンバーズと呼んでいる正式なガリウスGのコクピットは全天周囲モニターとなる。第七世代機から採用されたシステムだ。
そして機体と同期させたハルモニに依頼すると、モニターの映像が切り替わる。
「お、おぉ、おおっ」
変な声が出た。とても恥ずかしい。
『聞こえるか? エース』
「は、はいっ。聞こえますよ。少尉殿」
スピーカーからシドウの声が聞こえたので、少し上ずった声で返答する。まさか今の声、聞かれてないだろうな?
『あと数分で予想される戦闘宙域に突入する。出撃前に頼んだとおりだ。彼らを頼む』
「了解」
『………お前がパイロットとしてプロトタイプではなく、七号機にでも乗ってくれれば、やりやすかったのだがな』
「俺は整備士ですよ。少尉殿」
そう。俺は、
ただの整備士エー先輩、だ。
モブとして、メインキャラクターの邪魔をするわけには、いかないのだ。
それでもこの世界に介入し、原作の展開を何度も破壊した。これからより破壊する。原型も残らないくらい。
その責任の一端を、担わなければならない。
「全機、聞こえるな?」
『聞こえるよ。エー先輩』
『すげぇ。マジでエー先輩と出撃してるみてぇだ!』
『うふふ。テンションが上がるわね』
『はーい。エー先輩』
『普段、近くにいないひとの声が聞こえるのって、慣れないですね』
『………っ』
多彩な反応が返る。
順に、ソータ、ハーモン、ユリン、ヒナ、シェリー、コウだ。
俺は今、プロトタイプガリウスGのモニターから、彼らが駆る一から六号機のメインスラスターの青白い火を追いかけて飛翔している。
だが実際にプロトタイプガリウスGを飛ばしているのではない。グラディオスから発射した、自動操縦のカメラの操縦権をこの機体に同期したのだ。よって、彼らに追従している2メートルほどの機体が俺の自機としてリモート操縦していることになる。
感度良好。操縦桿やペダルの動きにリンクする。ラグもない。
さて。早速仕事に取り掛かるとしますか。
「コウ。おい、コウ。返事しな」
『うるさい! 俺に話しかけるなッ!!』
「わ、うるせっ………ハァ。あのなぁ、コウ。今からカリカリしてたって、戦況は好転なんかしないんだぞ?」
『わかっているッ!!』
「くぅ、鼓膜が死ぬ。怒鳴るなって」
スピーカーの音量を絞っている暇はない。このままいくしかない。
シドウの要請は、本格的に始まろうとしていた敵の大群との交戦前、あるいは友軍の防衛のための交戦前に、昂っているであろう精神や、緊張をほぐしてやることにあった。
けれども、始まろうとしていた防衛戦を目前に、コウの良くない癖が現れた。
俺はシドウやレイシアに、コウの抱える心の闇たるトラウマを伝えていない。
コウ自身、変わりたいと願ったからこそ、時間が許す限りシドウという第三者や、カウンセラーのレイシアなどを交え、今後の方針を固め、隊の理解を促してから、コウのスペックを発揮させたかったのだが、アンノウンはそんなものは待ってはくれない。俺たちの都合で常に動くはずがないのだ。
こうなったら、できるかはわからないが、手綱を掴んだ状態で荒療治をするしかない。
「聞け、コウ! ジグを思い出せ! お前はジグからなにを学んだ!」
『お前が兄貴の名を語るなぁあああ!』
「馬鹿野郎が! ジグはお前が無鉄砲に特攻して嬉しがるはずねぇだろ! 助けられる命と、助けられない命を考えろ! お前はもうただのガキじゃねぇ。力を持ったパイロットだ。ガリウスGをぶっ壊すくらいなら俺が徹夜して直してやるよ。でもな、冷静さを欠いて無茶して、お前が死んだら………なにも直せねぇんだよ! お前は、お前が抱える悲痛を、俺に押し付けるのか!」
『ッァ………!?』
コウが駆るガリウスG三号機が、速度を緩める。
『………エー、先輩………』
「やっと正気に戻ったか。世話かけさせやがって。でも、こういうの初めてだもんな。実際に………って言っても、俺はリモートだけど。戦場に出てみてわかるよ。ストレス半端ないな。武者震いなんてもんじゃない。敵がたくさんいるなかに突入するんだ。友軍機も落ちてる。お前が暴走したくなるのも、仕方ないな」
『俺、は………』
「落ち着けよ。ほら、深呼吸してみ?」
やっと速度を緩めたことで、シドウたちの隊列に復帰する三号機。鶴翼の陣が再び整う。
「少尉殿。お時間取らせました」
『い、いや………自分で提案しておいて、こう言うのもなんだが………お前、ギグスになにをした? 催眠術でも使ったのか? こうも的確に御せるとは思いもしなかったぞ』
「あとでお話しします」
俺のモニターには、7名のパイロットたちの顔が見えるよう、小さなスクリーンを表情している。コウは深呼吸をする前は酷い顔をしていた。シドウは戦闘前なのに、また呆然としている。てなわけでパシャリとな。
「そろそろ戦闘が始まるか。みんな。無事に帰って来いよ。機体は壊してもいいけど、おやっさんたちが泣くから大切に扱うようにな。どうしてもって時は戦線離脱しろ。シドウ少尉殿が穴埋めしてくれるさ。いいな?」
『ハイッ!』
『了解!』
『いや、お前なに勝手に………まぁいいか』
戦線離脱をまぁいいかで許してしまう辺り、シドウはソータを頼るつもりだ。
もちろん、この戦闘でも全員生還することは知っている。だから全員が余計な力が抜けるよう、提案したまでだ。実際に戦線離脱する者はいない。
この俺が副隊長としてリモート参加する作戦は、思いの外、結果を出した。
一発目を00:10にぶち込もうとしたらうつらうつらして、気付いたらこんな時間になっておりました。
というわけで1回目をこの時間に。次回は7時を予定しております!
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