所詮は子供B02
クスドはそれから、うまくハーモンだけでなく、ソータたちとも交わるようになった。
演習後、1時間の休憩を経て、残りのカリキュラムをシミュレーションで費やす指針をシドウが出したからだ。
シミュレーションで結果を出してきたクスドに、ヒナが話しかると、全員が集まる。クスドは6人に囲まれると恥ずかしそうにしていたのだが、コウが攻撃的な戦術の一例を出すと、クスドも応じた。その時の彼は、まるで別人のように饒舌だった。
俺はといえば、ドッグの中央でパイロット同士の交流をしても邪魔だと判断した彼らが、俺が担当している新装ジャケットの開発デスクの近くにあった小さなコンテナ群を発見し腰を下ろしたこともあり、常に耳を傾けてつつ、たまに横目で見たりと、1年生の交流をバックミュージックに作業の進捗を進めていた。
最優先で作っているハーモンの、四号機専用の近接格闘戦ジャケットは「タイタン」と命名された。タイタンジャケットだ。カイドウが名付けた。
その名のとおり巨人になるわけではないが、上半身に被せた装甲板の厚みで、よりマッシブになる印象だ。
ケイスマンが設計した新素材を配合した冷却装置を組み込んだ装甲で覆い、常に敵の注意を引きつけ、圧倒する。アンノウンの攻撃は常に高温で包まれている。冷却がうまく作動すれば、短時間ではあるがノーダメージを維持できるだろう。
同時並行で行っている、ジャケットとは異なる新装備の設計も続けていた。これさえあれば、あの悲劇を防げるはずだった。その未来を描き、あの子の笑顔を思い浮かべてモチベーションを保っている。
前世はバリッバリの文系だった俺が、エース・ノギのスペックとカイドウの協力で、機械工学に携わっている。
こんなことなら、理系にもう少し熱を入れて勉強するべきだったかもしれない。
と、その時だ。
「は、はぁ!? じゃあテメェ、なにか? 俺をそのまま敵陣の群れのなかに特攻させてたってのかよ!」
「そ、そういうわけじゃないんだけど………ハーモンは、みんなより耐久値が優れているから、アンノウンの攻撃を受けても、ずっと長く行動できたから効率がよかっただけで………」
「結局、俺が一番最初に死ぬじゃねえか! クソが! ダメージコントロールはソータの方がうめぇんだから、こいつを特攻させろや!」
「それは………ダメだよ。ソータはハーモンの後ろで待機して、突っ込んだらすぐ後ろにいた方が、敵陣を崩壊させるのにもっとも効率的な攻撃の担い手だから」
「テメェ! 俺が死んでもいいってのかよ!」
「そんなこと、言ってないよぉ!」
「言ってなくても、シミュレーションじゃあ俺が最初に死ぬし、なんならここにいる連中が全滅して、辛うじて勝ってんじゃねぇかよ!」
「うぅぅ………」
これは、ちょっと見てられなくなったな。
クスドの課題は戦術面で防御を覚えさせることと、味方の生存を考えることが項目に追加された。
シドウもそれがわかっているから、自分が学んだ参考資料には味方陣営の消耗を抑える兵法も含んだものを譲渡してくれるのだろうけど。
あとでクスドを詰問し、レイシアのカウンセリングの結果も見ておかないとな。
「待てよハーモン。クスドはなにも、今の素体状態のガリウスGに乗ったお前を想定してシミュレーションしてねぇんだ。お前のジャケットが完成した状態で計算させたんだよ」
「けどよぉエー先輩。クスドの作戦、ありえねぇくらい危なっかしいぜ!?」
椅子を回転させて振り返り、今にもブチギレそうだったハーモンに釘を刺す。
ハーモンにはすでにタイタンジャケットのことを伝えてある。設計図の段階ではあるが、彼の特性や性格を考慮した、猪突猛進なスタイルを重視した重装備に、興奮していた。
それを踏まえ、クスドにシミュレーションさせた結果───確かに数発は耐えるが、最後には生きているかギリギリのラインだったし、どうやらハーモンが激昂している理由は、クスドの危険極まりない思想にあったようだ。
「クスド。どんな戦法を使った?」
「え、えっと………グラディオスを戦線の外に出すのではなくて、中間に置きます」
「う、うん」
中間と来たか。旗艦にして、俺たちが帰る場所であるグラディオスがそこにあったのでは、敵の放火の射線に入ってしまう。確かに高リスク。下手すりゃ集中砲火を浴びる。
「グラディオスには主砲がありますよね。それを使います。しかし主砲を使うには時間がかかるから、みんなで守ります」
「陽動は?」
「コウとユリンに任せます。シェリーも考えたのですが、彼女はどちらかといえば狙撃が得意ですので、グラディオスの護衛につけます」
………参ったね、こりゃ。
クスドめ。主砲のことを知っていやがった。いったい、どこで?
第6話で犠牲を出し、第7話ではさらなる犠牲を出す。その第7話で出す犠牲は、敵の攻撃のみならず、艦内で起きたトラブルにもある。それが主砲に関連し………あの子が、悲惨な目に遭う。
胸が締め付けられる思いをした。もちろん回避するつもりだったが、まさかクスドがこのタイミングでパイロットに周知させてしまうとは思いもしなかった。
展開はすでに本編から脱線している。
されども主砲を知られた今、全員が強敵と遭遇した場合、主砲を頼ってしまいかねない。
「あー、主砲な」
「その口振りからして、エー先輩もご存じだったようですね」
「前に、ちょいとな。でもクスド。今は主砲に頼るな」
「え………な、なんで?」
「お前なぁ、使うにしても主砲だぞ? どんだけ射程があると思ってんだよ。戦線から離れてても当たるだろ。近ければ近いほど、こっちにも被害が出かねないし、今お前が言ったとおりチャージする時間もある。必殺技ってのはな、ホイホイ使っていいもんじゃないんだよ」
「わかってますよ。でも、主砲があれば、もっと簡単に攻略できるのに」
「簡単に考えんな。お前なら、もっと複雑で、仲間の被害を最低限に抑えた作戦が思いつくさ。ほら、今シェリーが狙撃向けだって言ったろ? 艦の護衛も大切だけど、もっとすごい役目を担えるかもよ?」
俺が出せるヒントとしては、これくらいだ。
クスドはとても素直に俺の意見を聞き入れて「うーん」と唸りながらプランを練り直し始めた。
「………エース先輩って、もう副隊長っていうよりも、指揮官みたいですね」
シェリーが言った。
そういえはエースは、シェリーとも特別仲がいいわけではない。会話だって、グラディオスに収容されてから一言交わしたくらいだった。
シェリーは黒髪をした少女だった。
普段は大人しくしているクール系な、コウに似たタイプの女の子なのだが、孤高の存在というか、誰とも馴れ合わないような性格をしている。シドウももちろん扱いに困る。
最大の特徴は、視力が高いはずが、いつも眉根を寄せて不機嫌そうにしている表情にある。
コウもそうだが、シェリーはもっと酷かったのだ。
「そうか? 俺は別に、大したことした覚えはないんだがな」
「そうだろうな。エース先輩は枠外だ」
「手厳しいなぁ、コウは」
「事実だろ」
この隊には、もうひとりの一匹狼がいる。それがコウだ。
さて、ふたりも救済したいし、どっちから手をつけるかなと迷った矢先。
「俺はクスドの意見に賛成だ。使えるものは使った方がいい。主砲だろうと、なんだろうと。運用は間違ってはいないんだ。敵は倒さなければ、俺たちが生き残る術はない。その采配にも感心した。パワータイプと揺動をうまく使っている。スナイパーは後ろでじっとしていればいい。前に出られても邪魔なだけだ」
「………死にたいの? オールラウンダー気取りの半端野郎が」
う、うーん。
これは予想外。
なぜか、コウとシェリーが喧嘩腰になってるぞぉ?
こんなの本編にはなかったはずなのに。
いよいよ原作破壊行為が如実なものとなってきました。
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