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所詮は子供A11

 だが間違えてはいけない。俺とクスドはすべてが同じではない。


 俺は環境の改善を、クスドは改悪を働いた。


 余計なことしやがって。と怒鳴ってぶん殴りたい。ハーモンに言い付けて、二度と付き合わせないようにしてやりたい。なんなら同級生に告げて、全員でクスドの居場所を無くしてやりたい───そんな衝動があるのも、事実だった。


 人間は異物と認識したものを排除したがる生き物だ。それがいじめに繋がってくる。集団生活をしているなら、なおのこと。


 いじめるのは簡単だ。だが、そんな小さな愉悦にかまけるほど、俺は暇ではない。そんな器の小さいことはしない。


 そんなことして意味があるのか?


 そもそも、俺がやろうとしているのはなんだ?


 改善だろ。


 クスドを生贄に捧げてなんになる?


 俺は誰を救おうとしている?


 クスドは好きではないが、嫌いでもないのだ。ならば、救うべきだ。


 なにより第1クール終盤の覚醒は見物だ。クスドが憂なく覚醒できるよう、改善してやろうじゃないの。


「………食う?」


 俺は、ポケットのなかに入れておいたエネルギーバーを取り出した。食堂でがめたものではない。整備士たちにたまに支給されるのだ。すべて食べずに1本だけとっておいた。


 半分折って口に咥え、フィルターで包んだ半分を差し出すと、クスドは俺を見て数秒考え、おずおずと受け取った。


「あっ」


「じゃ、これと交換な」


 パッとクスドの手にあった小瓶を摘み、取り上げる。


「なんで」


「ング………うん?」


「こんなことを?」


「ダメか?」


「えっと………」


 まだ俺を警戒しているか。ハーモン然り、転生前から面識がなかったものな。


 ふたりきりでの会話自体が初めてだったかもしれない。そして俺は上級生。クスドが怖がる理由としては十分だ。


「そうだなぁ………大きな理由としちゃ、お前をこのままにしちゃいけないと思ったから、かな?」


「え?」


「シミュレーション結果、見たよ。ハーモンたちと比べれば操縦技術で劣るけど、戦術は悪くない。いや、むしろ光るものがあったと俺は思ったね」


「で、でもあれは」


 クスドがなにを言いたいのか、わかる。


 こうしてクスドを止めに来たんだ。対話で解決するには、クスドを認める要点を知らなければならない。シドウに頼んで、予備パイロットたちのシミュレーション結果を見せてもらったこともあり、思うことを話題に挙げられた。


 そして、今彼が言い淀んでいる原因も知っている。


 クスドは自分の場所を作るのが苦手だ。友達を作って独自のコミュニティを作れば解決するなんて言うけど、彼は会話そのものが苦手で、自分の感情を、うまく伝えられない。


 ゆえに取り入りたい人物に奉仕し、貢献することで気に入られようと、偏った努力をする。


 それを重ねた結果、クスドは強者のいる場所を、大勢の人物がいるなかで一瞬で認識できるようになったのだ。


 それも会話を重ねずとも。容姿や雰囲気で見抜く。


 ゆえにシミュレーションでも、敵の核を突く。一気に攻勢に出るのだ。場所がわかっているからできる超攻撃的な姿勢。メリットはそれが点数に加算されたこと。デメリットは戦術を本格的に学んだことがないから、逆に攻められた時の防御が極端に下手なこと。


 いつも誰かの庇護下にいたから、守られて当然みたいな認識がある。


 周囲はまだ、クスドの才能に気付いていないから、過小評価する。クスドは益々自信を失う。


 その連鎖のなかで、いきなり俺が断ち切るような発言をしたから、クスドも反応に困ってるのだ。


「お前の才能だ」


「っ………!」


 笑いながら、目元まで伸びていた髪を撫で回す。


 クスドの表情がはっきり見えた。


 紅潮なんかしやがって。嬉しがってんのか? こいつ。


「俺は認めるよ。お前のこと。だからこんなつまんねぇことすんな。ハーモンの後ろを歩いてないでさ、並んじまえよ。こうして、同じ釜の飯を食う仲になったんだしさ。ソータたちとも仲良くなっちまいな?」


「で、でもっ………僕は………僕は」


「ああ、お前、会話するの苦手? 安心しろよ。ソータもそんなところだ。なんなら俺が仲介してやるから。よいしょっと」


 元々半分に折ったエネルギーバーだ。すぐ食べ終わって、立ち上がる。塗料を詰めた小瓶をどうにかして処分しなければならない。


「なんで、僕にそんなことを? メリットなんか、ないのに」


「うーん。ほぼ趣味みたいなもんかな」


「趣味!? 趣味で僕を助けたんですか!? そんな………そんなことをされる資格なんて、僕にはありません。僕はソータではなく、エース先輩が使っていたロッカーに、瓶を入れようとしたのに!」


「ぇあ? 俺!?」


 思わず変な声が出た。


 まさかクスドのターゲットが、俺だったなんて思いもしなかった。クスドはソータを恨んではいないが、ハーモンが憎むよう仕向けていたからだ。その傾向が印象に残っていたから勘違いしてたのか。


「え、なんで俺を? だって俺、パイロットの更衣室なんて、もう使わないのに」


 そう。確かに、ここには俺が一時的に臨時パイロットで使ったノーマルスーツがある。だがレンタル扱いだし、専用とまではいかなかった。クリーニングして、誰かが使う予定だった。俺がいつも使っているのは整備士の更衣室にあるノーマルスーツだからな。


「エース先輩は………僕の居場所を………」


 ああ、そういうことか。


 ハーモンはソータたちと仲良くなった。それはソータが歩み寄ったからではない。俺がハーモンを誘導したからだ。


 やっぱりクスドは全体的に見ている。ハーモンの変化の原因が俺だと見抜くくらいだ。近くにいる連中ならまだしも、クスドはもうハーモンの近くにはいられない。そんななかで、少ないヒントで見抜いたのだ。


「そっか。お前、寂しかったんだな」


「………」


 クスドはなにも言わなかった。反応もせず項垂れて、床を見ていた。


「大丈夫だ。もう寂しい思いはさせないよ。俺と一緒に行こう。な?」


「………本当に?」


「ああ。守ってやる。だからお前も、俺が危なくなったら守ってくれ。友達ってのは、一方的な援助じゃ成り立たない。助け合うことで仲良くなれるんだよ」


「僕に、できるでしょうか」


「できなかったらフォローしてやる。遠慮なく頼れ。あと、レイシアさんにも相談してみな? 喜んで話を聞いてくれるよ。俺からレイシアさんに言っておいてやるから」


「………はい」


 ふう。これでクスドの事件も未然に解決した。


 クスドは俺に頭を下げて、先に更衣室を出る。一緒に出ると怪しまれるから、俺は1分後に出た。



 ところが───



たくさんのブクマ、リアクションありがとうございます!

またしても更新が予定より10分遅れてしまいました。職場でちょいとショックなことがありまして。クレーマーって怖いですね…。報告などを記載して、やっと解放されました。疲れた…


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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