始まりの日C01
天破のグラディオス第1話といえば、Aパートはその世界の背景の解説から始まる。俺はそれを知っているから覚醒のタイミングとしては割愛されたところ。
それが終わると、この宇宙コロニーサフラビオロスにて平和だった日常が映し出される。潤沢な予算と優秀なアニメーターによる、3Dも半分使われた流麗なアニメーションに、海外も絶賛したらしい。空から俯瞰する図で隅から隅まで映され、やがて照準を絞るように学園の中庭で昼寝を興じるソータがズームアップ。
そこで覚醒した俺。本来ならいるはずのないキャラクター。会話すらなかった。もしファンが目にすれば「こいつ誰?」となりそう。無理もない。俺もそうだった。
アイリとの会話のあとでヒナたち友人と合流。別れてケイスマンの課題の再提出のため図書室へとふたりで向かう。同時期にサフラビオロスの外側で謎の光が密集し、爆発。それでAパートが終了。
CMを挟んでBパートへ。Bパートではロボットアニメではよくある展開で、平凡な世界で才能を弄びながら暮らしていた主人公が、突如訪れた崩壊に混乱しつつもすぐに冷静になり、避難行動に移る。まさにそれ。ソータはアイリを救命ポッドに乗せて移動する。なぜなら空きがひとりしかおらず、自分は他の壕へと向かうと言い聞かせた。さっきまでの俺とヒナと同じ。
そして見つけるのだ。床の崩落に巻き込まれ、しかし主人公ならではの高スペックを発揮し、無傷で生還。落下の衝撃を人間離れした動きで緩和し、平然と起き上がりながらそこにあるものを発見する。
まさか新型ガリウスを、ケイスマンが開発していたなんて俺もソータもファンも知らなかった。ファンブックにも載っていなかった。きっと劇場版とかで明かされるのだと思っていた。とんだネタバレを食らった。
Bパート終盤で、重傷を負った整備士から新型ガリウスを託され、パイロット学部のソータが一号機を駆る。
地下の隔壁を突き破って現れた一号機は、きっと壮観だっただろう。ソータはガリウスをすぐに使いこなす天才だ。ファーストアプローチなんてイカれている。校舎の時計塔を引っこ抜いて、槍投げのように投擲した。自機の三倍の大きさだったのに。
外側から侵入した敵の名を、アンノウン。正体も目的も不明。どこから現れるのかも不明。前触れもなく現れるのだ。そして忽然と消える。
ソータはそういう敵と戦う。武器はロングソード一振り。プロトタイプゆえ折れやすいという欠点をすぐに見抜き、温存。逃げ遅れた住民を助けながら、計算しつつ敵を圧倒。戦闘機も真っ青になるくらいのアクロバット操縦に、古参のファンは釘付けになる。なんてこともない展開だが、ソータの機転とアニメーションがとてもいい。
このソータという奇想天外な主人公は、能ある鷹は爪を隠すどころか嘴も隠すタイプで、実戦となるとめっぽう強い。特筆すべきはダメージコントロールだろう。初回で誰もの度肝を抜いた。ロングソードの欠点をカバーするマニューバ。装甲は頑丈ではあるが、パイロットへの負担を鑑みた結果、衝撃を緩和するアブソーバの作用で急激に内部バッテリーを消費してしまう欠点も最短で見抜き、補給もままならない状況ゆえ推進剤の消耗も最低限に留めて、敵を薙ぎ倒していく。俺もその能力に魅了されたひとりだ。
それで第1話は終了する………が、ここからはファンも見たこともないCパートってところか。
プロトタイプの新型ガリウスに搭乗した俺は、仰向けになっている機体を起こそうと、機体の状態をチェックする。胸部にあるコクピットはドラム式で、パイロットが常に椅子の上に座れるよう座席が動く。
「動け………動け………!」
先述したように小此木瑛亮は文系だ。すべてはエース・ノギという新たな俺の能力にかかっている。
エース・ノギにソータ・レビンスと同格のスペックがある………とは思えない。ケイスマンもやればできるとは言っていたが、精々助手にする程度だろう。なら俺も高望みをするのはやめた。
せめて一年間のパイロット学部で培った技術と経験と、小此木瑛亮の記憶を頼りに、現況を打開するしかない。
「立て………よしっ」
プロトタイプの新型ガリウスは、どうやら学園で使うパワーローダーと同系統の操縦系らしい。各パラメータやスイッチの手順も同等。立ち上がるまでは難なく完了する。
『エー先輩! シャッターが破られちゃう!』
スピーカーからヒナの声が響く。慌てて音量を絞って落とす。救命ポッドから国際救難チャンネルで呼びかけたのか。
「待ってろ。今、システムをこっちに回す!」
こういう時、アニメの主人公はマルチタスクに長け、初戦であっても戸惑いつつすべてを円滑にこなしてしまうものだ。化け物だと思う。
俺はといえば、外界とこの空間を隔絶するシャッターが、苦痛を訴えるかのような異音を響かせながら歪み始めるのを見ながら、プロトタイプのガリウスが上体を起こして、足を立てて、スラスターの動きが正常に作動するのを確認したあとに無線接続したパネルとシステムを同期。まるで工場で勤務を開始する社員たちが毎回行う指差し確認のようだ。つまり、なにかを終わらせなければ、なにかを始めることができない。
指差し確認は重要だが、亀のような歩みは要求されていないのだ。
プロトタイプとはいえ新型のガリウスだ。ケイスマンが使用していた施設のすべてのコントロール権を数秒で掌握する。
驚いたのは、そんなことができる俺の能力値だ。ソータには劣る。ソータがスーパーマンなら、俺は虫ケラ。しかしガチガチの文系が、どハマりしたロボットアニメにのめりこんだだけの、俄仕込みの知識程度では到底可能とする作業ではないのだ。
エース・ノギ。もうひとりの俺。小此木瑛亮の意識が完全覚醒する前に、もうひとりの俺はソータに負けないくらい昼行灯ながらも、ケイスマンの評価のとおりやることはやっていたんだと感心した。
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