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所詮は子供A06

 そろそろ、デーテルの馬鹿がドッグでクソみたいな演説をかましてくれるのは、わかっていた。


 もうすでに第5話「所詮は子供」に入った頃だ。本編では言いたいことをぶちまけて、満足したら帰った。


 そんなの聞き流せばいいんだけどさ。


 ソータたちの精神衛生によくないから。


 俺もできれば聞きたくないし。


 というか、話を聞くと、デーテルは整備士連中にも嫌われてる様子。グラディオスクルーでデーテルに好印象を持っている奴なんかいないというカイドウの分析すら出たくらいだ。


 だから、お灸を据えることにしたんだ。


「集まれ民間人のパイロットども! 3秒以内だ!」


 来たか。


 本編どおりの上から目線。学徒兵だから気に入らないって、本当に差別してやがる。このままでは人権も剥奪しそうだな。


「なんたる怠惰的な態度か民間人どもっ! それが映えあるグラディオスのパイロットの姿とでも言いたいのかぁっ。3秒で集まれと私は命令したぞ! ならば1秒以内で現着せんか! 幼稚園児か貴様らぁっ!」


 3秒以内って限定したのに1秒以内で来いとか、もしかして健忘症なのかな? カイドウでもそんな理不尽は言わない。


 俺が点検を担当していた一号機の足のスラスターから顔を出すと、デーテルがコウに噛みついているのが見えた。


 本編どおり、デーテルが小柄であることを嘲笑する。ハーモンも加わると、もう収拾がつかなくなる。


 最後は営倉にぶち込んでやると命じたところで、カイドウが摘み出すのだけど。


 けど、駄犬にはそろそろきついお仕置きが必要だと思うんだよな。全体的な士気に関わる由々しき問題だ。


 成績だけは良いみたいだし、体で覚えてもらおう。対策は用意した。先輩の整備士にちょっとした細工を頼むと、快諾してくれた。


「この馬鹿ども! デーテル副艦長殿に、なんて言葉を使ってやがる!」


 大声を張り上げて一号機から飛び降りる。両足で着地を成功させると、双方が驚愕した面持ちをしてた。


 それからソータたちを責める。一方的にだ。


 ハーモンなんてシュンとしていた。犬みたいだな。


 ソータは絶句するしヒナは泣きそうになるし、コウとシェリーは俺が上官に媚を売ろうとしている小物みたく軽蔑する目をしている。ユリンは………なんか怖い。ずっと笑っている。俺の真意を見抜いているのか?


 途中でデーテルがすぐ勘違いして図に乗るが、怒鳴って黙らせる。


 一通り説教して、左手を掲げた。


 6人が注目すると、俺の真意を理解し、笑いだす。


 なぜかって? 俺の左手には付箋紙があったからだ。デーテルの前に躍り出る前に色々書いておいた。


 小さな付箋紙だったから文字も小さくなるが、流石はパイロット。視力がいい。



『デーテルをオモチャにする。話を合わせろ』



 シンプルな短文を理解して、ソータたちの表情に浮かんでいた不安が消えて、一安心。


 デーテルは変化を見抜いて左手を見せるよう要求したが、想定どおり。


 バックパームで隠した。回り込まれたらバレるが、余計な動きをしたら怒鳴って止めるつもりだった。


 そして再び付箋紙を手のひらに出して演説を開始。


 ずっと笑い続けるハーモンの胸倉を掴んで、鬼軍曹さながらの演技をかますと、全員の笑顔が収まってくる。


 完璧超人だの、優秀だの、天才だの、デーテルが普段から自画自賛していることは知っている。そのすべてを言葉に乗せると、見てはいないが上機嫌になっていくのがわかる。


 周囲の整備士連中はニヤニヤしているので、狙いを知られないか心配だったが、連続するよいしょからのわっしょいで、すっかり気を良くしたデーテルは、もう周囲が見えないくらい鼻高々になっていた。


 けどなデーテル。天狗になっていられるのも今のうちだ。


 最後にデーテルに敬礼する。デーテルは高笑いしながらドッグを去ろうとして、俺が先輩整備士に依頼しておいたガリウス用のオイルを設置した場所を踏み抜き、芸術的な転倒。


 なんと蜻蛉返りしやがった。いったいどんな歩き方をすれば、こうなる?


 されどもこの好機、見逃せるはずが、ないッ!


 作戦開始! 「覚えの悪い駄犬でも痛みがあれば学習するよね作戦!」だ。



「デーテル副艦長殿っ! 危なぁあぁぁあああああああいッ!!」



「は? ぶぅぅえええええ!?」



「っしゃぁああああああ!!」



「ストラァァァアアアイク!!」



 蜻蛉返りしたデーテルの無防備な顔面に、渾身のラリアットを叩き込む。


 この無重力空間だ。天地が返って掴むものも足の踏み場もないデーテルは、ラリアットの衝撃を緩和できず、ギュルンギュルンと回転しながら、()()()()()()()()()()()()()山のように積み上げられた、小さなコンテナにシュートされる。


 整備士連中が雄叫びを上げたのは、きっと気のせいだ。幻聴だろ。


 だって副艦長殿だぜ?


 嫌われているにしても、怪我をしたら大変だ。みんな心配する声を上げたんだろうな。


「ぶあ! な、なにをする貴様ぁ───ちょっ」


「デーテル副艦長殿っ! 危なぁぁあぁぁああああああいッ!!」


 抗議と非難をするデーテルの眼前に、すでに移動は完了していた。


 だって、ほら。見上げてみれば、今の衝撃で頭上にあったそれなりに大きなコンテナが落下してきている。


 まったく。()()()()()。固定具を緩めたのは。実にけしからん。


 無重力空間だから落下というよりも移動で、とてもゆっくりなのだけど。当たれば怪我をする。俺の行為はデーテルを救出するため、やむないことなのだ。


 青褪めるデーテルをコンテナ群から引き抜いて、頭上から落下するコンテナを避けるためにジャイアントスイング。広域のあるドッグの端から端まで投げ飛ばす。


「でぅぅぅええええええええ、げべっ!?」


 変な声を上げながら、成す術なく投げられたデーテルは壁に貼り付くように衝突。うわ、潰れた蛙みたい。



多分ですが、今日はもう一回更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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