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その名はB08

「ったくよぉ………やってられっかよクソッタレが!」


 原作どおり、ガツガツと靴を鳴らしながらハーモンが現れる。


 特にすることもなく、連帯責任で行う周回にも参加を拒否したハーモンは、八つ当たりの的を探しているようだった。


 そして、行く先にあった食堂を見つけて、ニヤッとして───


「よっ」


「あ?」


 食堂の入り口にいたのは、俺だったってわけだ。


 気さくに声をかけると、露骨に嫌そうな顔をした。傷付くなぁ。


 でも、これでいい。今から狂犬みたいなハーモンを、トロトロに絆してやるからだ。見てろよシドウ少尉殿。お手本ってやつを見せてやるぜ。


「なんだぁ、テメェ。なにガン飛ばしてんだコラァ!」


 ハーモンは体格が優れていて、1年生にしては身長も高い。コウはもっとデカい。


 対する俺は平均的で、ハーモンよりちょっと低い。小此木瑛亮より伸びていたから満足していたのだけど。


 ハーモンは俺を発見すると、格好の的だと認識したか、逃げずに絡み始めた。


「なぁ、腹空かねえか?」


「あん?」


「なんかおやつもらおうぜ!」


「はぁ?」


「ほら、行くぞ!」


「て、テメッ! 離せよっ」


 メンチを切るハーモンの腕を掴み、強引に食堂に入った。


 すでにここは重力が働いている区画ではあったが、俺とハーモンはノーマルスーツのままだ。それでも構いなしに突撃する。


 ハーモンは抵抗こそしたが、俺の勢いに負けて、食堂のカウンターまで一緒に来てしまった。


「すみませーん! 腹減ったんですけど、なにか食べるもんありませんかー?」


 原作では無許可でキッチンに侵入したハーモン。すぐに発見され、烹炊員を殴ってしまって罪に問われた。


 だから俺は堂々と正面から行く。


 しかし、


「馬鹿言え。飯の時間じゃねえだろ。出直せガキども」


 地上やコロニー内とは違って、決められた量しか使えないのが戦艦の辛いところ。


 成長期を迎えた学生上がりだとしても甘やかさない。それが艦の炊事場を任された烹炊兵の仕事だ。


「えー。でも、この前俺がサフラビオロスから持ってきたもんが大量にありますよねぇ? 菓子とか、エネルギーバーとか。そういうのでもいいんですけど」


「馬鹿言え。余程のことがない限り出さねえよ」


「余程、ねぇ。………あ、そうだ。ちょっと相談なんですけど………これ見てくださいよ」


「は? ………んだぁ? こりゃ………ははははっ!」


「おい、どうした? なに笑って………はぁ? シドウ少尉じゃねぇか。なんだこのっ………間抜け面!」


 俺が烹炊員に提示したのは、まだ公開するつもりもなかった、先程のシドウの写真だ。


 いつもキリッとしている分、唐突かつ疲労していた時の間抜け顔を、高画質で撮影することができた。


「ほら、お前も見てみな?」


「あ? いったいなにがそんなおかし………ンブフォッ」


 ハーモンでさえも笑ってしまう始末。


 うんうん。破壊力抜群だね。


「ぐふっ………わ、わかった。俺の負けだ。もう見せんな。包丁握れなくなるだろ! これ持ってとっとと失せろガキ!」


「どうもー」


 複数の烹炊員が爆笑して、仕込みどころではなくなる前に、リーダーが戸棚からエネルギーバーを投げて寄越したのでキャッチし、食堂を去る。


「今日の戦利品はこんなもんか。よし、また明日も突撃して、なにかせびってやろうぜ! 任せな。渋るようだったら、これ見せてやる」


「やめっ、グフォッ! ひ、ヒヒ………ッ」


 拡大化したモニターをもう一回ハーモンに突き付けると、呼吸さえできなくなるほど笑っていた。


「なんだ。お前、ちゃんと笑えんじゃん」


「あ、ぁあ?」


 連れて来たのは、まだ俺が借りている士官室だ。ここなら邪魔は入らない。つまみ食いもバレない。多分。


 ハーモンをベッドに座らせ、俺は椅子に座る。ふたりでエネルギーバーを齧った。


「ほら、こうストレスが溜まる一方の環境じゃん。お前が暴れるのも仕方ないと思ったんだよ」


「チッ………余計なお世話だ。カスが」


()()()()


「ッ………」


 唐突に声のトーンを落として名を呼ぶ。ハーモンは息を呑むが、負けじとガンを飛ばした。


「先輩に向かって、カスとか言ってんじゃねぇよ」


「………チッ」


「舌打ち禁止」


「………っるせぇな」


「お前だって、変に反抗したってなにも変わらないことくらい、わかってんだろ?」


「………」


 ついにハーモンは黙った。


 まるで犬の調教だ。無駄吠え禁止と、序列を教えているような。


 前世でも年功序列を教わる機会があった。俺は受けてはいないが、大学のサークルで反抗的な1年生を先輩が指導していたところを見た。


 同じようにハーモンを説得する。


「ハーモン。お前はさ………案外、わかってる奴なんだよな」


「なにが」


「さっきの模擬戦だよ。実は俺、お前のこと評価してんだぜ?」


「は、はあ?」


 やっとハーモンが怒り以外の表情を俺に向けた。


「お前言ってたじゃんか。ここは戦場だって。そのとおりだよ。模擬戦だろうが、あれくらいはやるべきだ。武器が無ければ負けなんてルールは戦場にはない。もっとも他の整備士連中は不満しかなかっただろうけどな。けど俺は………むしろ、よくぞソータを殴りに行ったって思ってる。あいつの操縦技術は半端ない。でもお前は負けなかった。心で立ち向かった。俺、案外そういうやつって好きなんだよな」


「………お、おう」


 おやおやおや。


 チョロ過ぎやしませんか? ハーモンくん。


 嘘は言ってないし本心だ。それを素直に述べてみると、さっきの殺気剥き出しの狂犬みたいだったのが、借りて来た猫みたくしおらしくなってんぞ。


 ははは。


 可愛いなぁハーモンくんは。


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

さて、予定を変更して、Xの方でハーモンと、エー先輩と絡んでるイラストを載せられればと思います。ソータはその次辺りです。

次回の更新は13時頃にしようと思っておりますので、よろしければチェックしていただけると嬉しいです!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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