その名はB03
「や、やるじゃねぇか坊主!」
「まさかこんな仕組みになってたなんてな!」
「いやぁ、よく気付いたもんだぜ」
整備士たちは興奮しながら俺をバシバシと叩いて喜んでいる。
MEMORYのスペル順に色のある写真を重ねることで新たなウィンドウが出現するという、シンプルでいるようだがヒントが無ければ思いつかない仕組み。
これには考察勢も頭を抱えた。俺も理解できなかった。だって、ケイスマンは作中に登場しないし、メモリーなんてヒントも登場しないし。
あったとしてもマゼンタなんて色、思いつくはずがない。俺だってプラモデルを塗装するためにおもちゃ屋に行って、そういう名称の色があったのかって初めて知ったもんな。
だが、いつまでも喜んではいられない。
まだ第一関門を突破しただけだ。本当に隠してあったデータを開くためのパスワードを打ち込まなければ、ガリウスのすべてを知ることはできない。
「エース。お前、このパスワード………わかるか?」
「ケイスマン教授なら、メモリーに準ずるものをパスワードにしてる可能性もあるんですけどね。でも難解かつ50文字以上数字込みだと、俺にはなんとも」
「だよなぁ。………仕方ねぇ。強引に突破するかぁ」
「待ってください。あの教授のことだ。強引に突破しようものなら、デリートするように仕組んでる可能性があります。あのひと、そういうのは徹底してますよ」
「クソが。………いや、第七世代機なんてもんを作るにゃ、当然の措置か」
実際、そうだった。第2クールで出会ったケイスマンの息子が、そう言っていた。
しかしそこは天才メカニックのカイドウ。メモリーに準じるパスワードを発見してしまう。
だがそれでは遅いのだ。画期的な装備がここにはある。そして大量のコンテナをオブジェクト化するなんて非効率かつ、俺の手段を制限するようなことはできない。
ここは、俺がやるしかない。
「例えば、メモリー………記憶………思い出。ケイスマン教授にとってガリウスGに必要な構想を得た時。………そういう写真があったりするかもしれない」
「ぁんだって?」
「こっちのモニター借ります」
一見、大量の情報の海のように見える暗号文が羅列されているファイルだが、これはすべてフェイクだ。
隣のモニターを引き寄せて、暗号文ファイルを閉じ、クランドから別の写真ファイルを開く。
「お、おお………なんだよ。ちゃんとあるじゃねぇか。息子の写真が大量によ」
感心するカイドウ。彼もまた子供を持つ身。親としての愛と心を共感しているが………今は必要ない。
「俺がもし、パスワードをこの大量の写真のなかに隠すなら………不自然な演出はしないようにする。数字、文字………くそ。何枚あるんだ、これ」
「待ちな。そういう分類ならすぐできる奴がいる。………ハルモニ!」
『イェス。マスター・カイドウ』
腕の端末を操作したカイドウに応じた機械音声が鳴る。
「こいつはグラディオスを管理する頭脳よ。要するに高性能AIってやつだな。こいつに解析させりゃ数秒よ。聞いてのとおりだ、ハルモニ。このファイルの写真のなかから、文字や数字が映ってるものを検出。こっちのモニターに移しな」
『イェス。マスター・カイドウ』
そうそう。カイドウはハルモニの協力を得てパスワードを突破した。
高性能を謳うだけあって、ざっと500枚以上の写真のなかから2秒で数枚を検出する。
『検出した結果、この9枚が該当しました』
「パスワードっぽいのはありそうか?」
『不明。番地、施設名、新聞などを拡大してみましたが、MEMORYに準ずるワードはありません』
「振り出しか」
いや、そうではない。
まだやりようはある。
「おやっさん。その高性能AI、俺にも使わせてもらえませんか? 試したいことがあるんです」
「あん? ………これは俺かクランドしか使えないようになってんだが………いや、まぁ今回に限っては、仕方ねえか。ケイスマンの隠しフォルダなんてもんを見つけた功労者だし、パスワードを発見できるなら………今回は特例ってことにしてやるか。お前の端末に送るぞ」
「ありがとうございます」
軍属になった俺の腕にも端末がある。貸与されたのはカイドウのものより簡易的で、スマートウォッチのようなデザイン。開くとスクリーンが立体投影するSFチックなハイテクマシーンだ。
「ハルモニ。マスター権限を行使し、整備士エースに操作権力を譲渡する。以後、こいつの指示に従え」
『了解しました。ではメカニック・エース。指示を』
なかなか、ええでないの。
原作にはない展開だ。俺は前世ではイラスト生成のためにAIを使ったが、プロンプトをうまく設定できるのだろうか。やるしかないが。
自然な流れという演出は苦手だ。
なら、ここはもう開き直って、ケイスマンの元教え子という立場をフル行使し、全力でやった方がむしろ怪しまれないかもしれない。
「ハルモニ。まずは先程の条件を削除。一覧を元通りに。………よし。新たな命令を更新。メモリー………マゼンタ、エメラルドグリーン、オレンジ、レッド、イエローが背景にあるものを、全部消せ!」
『イェス。メカニック・エース』
「け、消せだぁ!?」
もちろんフォルダから消すという意味ではない。カイドウが使っているモニターに移動させただけだ。
『5色の背景の画像以外をプロットしました』
「よし。残った背景の色は?」
『9割が白と黒です。残りが青の他、様々なものがあります』
「白と黒以外を消去。残りは?」
『126枚です』
「モノクロが多いな。そういえばケイスマン教授は、白い骨董品を集める趣味があったな。夜景もそこまで好きじゃなかった。………よし。夜景を消去。夜景以外にも背景が黒いものも消去!」
『完了しました。残りは48枚です』
「よし! ケイスマン教授は子供を愛していた。俺よりも年上。年齢は確か………25歳! プロットした画像のなかで、子供が写っていないものを、景色だけのものを消去!」
『完了しました。残り25枚』
「ビンゴ! 年代別に整列!」
『完了』
おおおお! と整備士たちが再び歓声を上げた。
一瞬だけカイドウを一瞥すると、大きく目を見開いて、汗を滲ませていた。
「なにか文字はないか?」
『検出できません』
「拡大して再検索!」
『───各画像に若干ながら数字とアルファベットを検出しました』
「それだ! その数字とアルファベットをパスワードとして入力!」
『承知致しました。………パスワード解除完了。情報を提示します』
「っしゃぁぁあああ!」
「うおおおおおおおおおおお!」
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パスワード解析はちょっと強引だったかもしれません。
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