その名はB01
3日が経過した。
俺ことエース・ノギは、グラディオスにて正式な軍人となり、アスクノーツ学園では整備科に在籍していた経緯もあって、整備士として配属された。
そこは問題ない。むしろパイロットに配属されたら、クランドに猛抗議した末に、ごねてごねて、ごね倒していたかもしれない。
プロトタイプガリウスGはドッグの一角で、最早無用の長物というか、オブジェクトのように固定されていた。
そりゃ、第七世代の最新鋭機だから、正式にロールアウトしたガリウスG一号機とかのパーツと、相互性はある。練習機と思えば乗れなくもない。
ただ、試作機としても未完成品だったと発覚した。カイドウの手ではなく、俺の同級生たちの手によって。
カイドウは初日からソータが乗るであろうガリウスG一号機を触らせず、仕組みを理解させるために俺が乗ったプロトタイプガリウスGに触らせた。
このグラディオスに収容された2年生は、どうやら成績が上位な連中ばかりで、ケイスマン教授ほどではないが学園の教員たちから将来を有望視されていたらしい。
開始2時間でバラしてるんだもんな。俺の愛機が───いや、愛機ってほど愛着があるわけじゃないけど。俺の専用機でもないけど。
で、半日で問題を発見。カイドウに報告。絶賛。エースザマァ、てウキウキな心境になったところを見抜いたカイドウが一喝。3時間である程度は修理して、元通りに組み直す罰を与えられたらしい。
泣きながら修理したってさ。あいつら。カイドウが怖かったからではない。プロトタイプとはいえ、かなり複雑な構造をしているロボットだ。修理と組み立てを同時並行させないと3時間では直せなかったとか。カイドウも鬼だな。
さて、そんな俺が、1日遅れで殺意の花束を毎日叩き付けてくれる同級生らと一緒の職場で汗を流そうといるのだが、予想は違って、俺もイリスや1年生の整備士とともにプロトタイプで勉強し直すと思いきや、カイドウに連れ出された。
「いったい、なにをさせられるんですか?」
「安心しな。雑務させて甘やかそうとしてるわけじゃ、ねぇからよ」
カイドウは多くの部下を持っている。
その部下たちは今、俺の同級生らをマンツーマンで教えていた。一刻も早く一人前にするために。
だが人数が違う。大人の数は子供より多い。本来の仕事があるため手持ち無沙汰にはならないが、今はガリウスGなどの機体の整備に取り掛かってはいなかった。
むしろ、大勢が別の作業をしているような?
とある一角に集まって首を傾げている。
「あれはなにをしているんですか?」
「ああ、それがお前さんをここに呼んだ理由よ。とりあえず、来てくれや」
カイドウに連れられて、大人たちのなかに入る。
複数の立体投影された半透明のモニターが宙に浮いていた。作業台にはキーボードと書類がある。大人たちはたくさんの書類を見てはモニターを見て、ああでもないこうでもないと、考察を述べては眉間に皺を寄せていた。
「これを見な」
作業台にあった1枚のプリントを手渡される。
「………これ、ケイスマン教授の」
「ああ。遺産だな」
ケイスマンの遺産。単純な財貨ではない。ケイスマンが心血を注いで開発した、最新鋭機ガリウスGの資料だった。
「まぁ、ある程度はプリントアウトしたし、設計図なんかもあって整備士にとっちゃ大助かりよ。でもなぁ。ここで大きな問題があるってわけだなぁ」
「大きな問題?」
「おうよ。お前らがサフラビオロスから運んだガリウスG専用のブツと、公開されてる図面の数が合わねえ」
なるほど。確かにこれはカイドウが最初に悩んだ問題だ。
あと数話もすれば、クランドに相談し、それでも答えを得られなかったものの、カイドウのメカニックとしての長年の経験と実力で解読するなり勘を働かせたりするなりで、回答にほぼ近いところまで持っていく。
「数が合わないとは?」
「現段階でケイスマンが公表している設計図と比較して、用意していたブツの方が多いってことだ。予備パーツかと思いきや、設計図にはないパーツまでありやがる。あのマッドサイエンティスト、いったいどういうつもりで用意してやがったんだかな」
第3話で俺とソータがサフラビオロスから射出したコンテナが多く、得た設計図が少ないと。
もちろん、俺はその回答を知っている。
さて、どこまで明かすか───待て?
なにを出し惜しみしようとしているんだ?
俺は今、どこにいる? なにをしようとしている? なにをすべきか、ちゃんと理解しているのか?
俺は整備士としてグラディオスにいる。ドッグでネームドキャラクターが搭乗する機体の整備をしようとしている。なにをすべきか………これがネックだったんだ。
ケイスマンの遺産には多くの有用性のあるデータがある。ただ、巧妙に隠されているんだ。
もうパイロットは慣熟訓練に入っている。
時間が圧倒的にない。
躊躇っている場合ではない。
決めた。
こうなったら本来よりも早いペースで情報を開示して、全員を守るための手段を講じると。
俺はそのために、整備士としてここにいるんだ。
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