その名はA06
「さっき、ワルステッドさんに声をかけられたんだ」
「ヒナに?」
「ああ。良い子だよな。なかなか決められないでウジウジしてただけの俺の背を押してくれたんだ」
つまりヒナとイリスは知り合いってことか。
あり得なくもない。
アスクノーツ学園のパイロット科と整備科は隣り合わせだ。
パイロット科が演習で使う機体を整備科が組み上げ、演習後に期間した訓練機のデータを計測したり修理したりと。パイロットと整備士のコミュニケーションが密接に行える。
持ちつ持たれつな存在なわけだな。パイロットがいなければ整備できないし、整備士がいなければパイロットは飛べない。
講義も合同で行った。俺も───エースが参加した記憶がある。
「だから俺、整備士になるよ。エースも一緒だしさ」
「おいおい。俺が一緒だからって、そんな簡単に決めていい問題なのかよ。自分の将来のことだぞ?」
「いいんだよ。ここには改めて、知った顔が多いしな。それにワルステッドさんからも説得された。俺もお前を許すよ。悪いのは攻撃してきた敵だ。なら俺は、その敵を討つためにパイロットになろうとしてるレビンスや、ナカダさんが乗るガリウスを整備する。努力するさ」
案外、話してみるとイリスはいい奴だった。これで印象に残れば、俺は最初からイリスを頼っていたかもしれない。
ソータとアイリも安心して、警戒を解く。
「よし、そうと決めたら………なんか腹減ったな。食堂でなんかもらってくる」
イリスは率先して俺たちのために働いてくれた。
この第4話に限定しては、そうだ。良い先輩なのだ。
しばらくしてレイシアとともに戻ってきたイリスが運んだ昼食が全員に振る舞われ、落ち着いた頃のこと。
軍属になる大半と、ならない少数がはっきりとわかるように、ふたつのコロニーを形成。一部小衛星のように離れている者もいるが。
俺は当然、軍属になる。ソータとアイリたちを中心とした輪の一部に入った。
で、また本編が再開するのだが───
「じゃ、とりあえずリーダーを決めておこうよ」
「リーダーって、なにするのよ。パイロットとメカニックのリーダーなら、大人たちがしているじゃない」
「私たち、学生のリーダーってこと!」
「ふふ。なにそれ」
ヒナが急な話題を振ると、アイリが苦笑する。
この流れはちゃんと見ていた。
で、リーダーの役目は彼になる。んで、それ以降忘れられる。学生の、しかも1年生を中心としたリーダーなんてただの肩書きで、戦場においても艦内においても、まったく効力がないのだ。
俺は指名されるのが誰か知っているため、呑気にチューブタイプの飲料水をチューチューと吸っていた。
「私はエー先輩がいいと思う!」
「ぬぐぁっぽ!?」
「わあっ! ちょ、大丈夫? エー先輩!」
意外な意見に、つい頬に溜めていた水を吐いてしまった。水滴は床に落ちず、ブヨブヨとしながら空間を漂う。盛大に吹いてしまったから、被害が拡散してしまった。各々が被弾しないよう、チューブの残骸などで払っている。無重力ってすげぇのな。
「ごほ、げほっ………お前なぁ。なんで俺なんだよぉ」
本当、なんで俺?
本来なら、近くにいたイリスが指名されるはずだった。で、その設定が忘れ去られ、イリスの登場も減少していった。
ヒナは「働き者こそ人材を使う機会を見逃さないはずだよ」と根拠なき暴論を展開し、こじ付け同然にイリスを担ぎ上げる。わっしょい。
「なんでって、エー先輩ってみんなのこと見てるし。ハーモンくんが暴走した時だって止めてくれたし。ねっ?」
「うっせぇ。話しかけんなカス」
この場にはネームドキャラが大勢いた。先程のユリン然り。これから救済する予定のキャラの姿もある。
輪のなかには入らなかったものの、取り巻きを従えて部屋の隅で宇宙食を食べていたハーモンは、ヒナをギロリと睨むが、彼女はまったく気にしない。それが強みだ。
「それにエー先輩、クランド艦長やシドウ少尉と、カイドウさんとも親しげに話せるじゃない。俺、あんな強気に出たり、擦り寄った話し方はできないな」
「ソータ、お前もか………っていうか、擦り寄った話し方ってなんだよ」
「ゴマをするみたいな?」
「そりゃあ………」
否定できねぇのが辛いとこよ。
都合、何人かに取り入る必要がある。コネクションを早期に作っておいた方が楽だからな。
その優先順位度が、大人を占めていた。クランドとシドウとカイドウ。あと同列でレイシア。この4人を攻略するかしないかで、俺の境遇が異なるだろう。
前例もある。クランドとシドウの葛藤に理解を示すと、ソータの代わりに村八分にされた俺に救済措置を早々に出してくれた。
「そうね。もしリーダーになってくれるなら、大人たちと対等に話をしてくれるひとじゃないと」
「あー、俺は無理だ。艦長とカイドウさんと目を合わせて話をするなんてプレッシャー半端ないだろ」
アイリは肯定。で、イリスは自らリーダーを辞退した。
「俺だって、対等に話せるわけじゃないよ。それに、わかってるのか? 軍属になれば、俺たちはあのひとたちの部下。部下が上司と対等に話せるわけじゃないだろ」
これはどの社会でも同じ理屈だ。
無礼講を謳う飲み会であったとしても。俺は小此木瑛亮であった時代、サークルの先輩と飲み会で対等な立場で話しかけたことなどない。タメ口などもっての他だ。
「今までそんな印象を与えるような会話ができてたのは、俺たちがまだ民間人だったからだ」
「だとしても、ふふ………エース先輩は強いわ。私もエース先輩がリーダーになってくれるのは賛成よ」
「学級委員長じゃねぇんだぞ。学園の延長線で考えやがって。確かに俺はお前たちの先輩なわけだけどさぁ」
つい咄嗟にユリンにも砕けた口調で話してしまったが、彼女はそれでも愉快そうにしている。
かぁっ………面倒がまたひとつ。
でも問題はないか。
どうせイリスの存在ごと忘れ去られるリーダー制度だ。このアニメに民主主義など掲げることはない。
ソータたちのモチベーションが保たれるなら、なっておくしかないな。仮初のリーダーに。
先日、Xでアイリのイラストが完成したのでアップしたのですが、なぜか某スクールアイドルアニメのあのキャラに似てしまっていて………ぁあああああ
私のプロンプトがよろしくなかったのでしょうか。ラフ画は別人のはずだったのですが、なぜか似てしまっていて………でも色違いヒナから脱却はできましたので、衝動的にアップしてしまったのです。
作者からのお願いです。
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