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その名はA05

「ユリン。俺のことはソータたちみたく、エー先輩って呼んでくれると嬉しいな」


「親しくなれば、そう呼びますよ」


 つまり、エース・ノギはユリンとそこまで親交がなく、友人の域にも達していなかったわけだ。


 それでいい。ユリンはヤベェ。ある意味で色々とサイコパス。


 本編ではグラディオスの戦力のひとりに数えられる実力派のパイロットだ。


 第七世代ガリウスG五号機を任せられる。そして───いや、今はなにも言うまい。


「ユリンはパイロットに志願するのか?」


「ええ。そのつもりです。ソータくん。ヒナさん。アイリさん。よろしく」


「うん。よろしく」


「こちらこそ」


「頑張ろうね」


 ユリンはソータたちに手を差し伸べて、順番に握手を交わす。


 で、最後に俺を見て、数秒の間を置いて手を差し出した。


「私の機体が決まったら、整備をよろしくお願いしますね。エース先輩」


「ああ。任せろ」


「………ふふっ」


 なんだ。今の意味ありげな悪魔みたいな笑みは。


 ユリンは俺を見極めようとしたのか。


 本編ではソータを見極めようと画策していたような。そのせいで色々とトラブルがあったっけ。


 じゃあ、なぜ俺が?


「でも、エース先輩なら、絶対に近いうちに愛称で呼べる気がします」


「お、おう。そうか。嬉しいよ」


「こちらこそ。………力があるひとって、とっても魅力的ですよね」


 ………少しだけ、わかってきた。


 ユリンがソータに興味を持ったのは、ソータが躊躇いもなくアンノウンBタイプを倒すために中破したサフラビオロスに誘導し、爆破したからだ。


 彼女の述べる「力」とは、単純な腕力ではない。


 なにかを成し遂げるための能力そのものだ。


 その上で自分が凌駕する願望を持っている。


 ユリンは本編でソータを追い詰めたひとりだったのだ。


 そして今回、ソータが負うはずだった汚名は、俺が横取りした。結果、ユリンは俺をロックオンしたわけだ。


 蛇に睨まれた蛙みたいな心境にさせやがる。


 ユリンは紫色の長髪をなびかせて、優雅に去る。あの後ろ姿だけでも緊張を禁じ得ない。


 つまり、なにか?


 俺にユリンの手綱を掴んで管理しろってか。あのヤベェ女を? 敵に回すと徹底して嫌がらせしてくる、あいつを?


 冗談じゃね───と言いたいところだが、つまりはそういうことだ。


 これがもし、最強チート使いハーレム王タイプの主人公が闊歩するゲームだったとしよう。


 棘と蜜を兼ね備えた、超ド級の危険な女も攻略対象となり、しかも選択肢を間違えただけど好感度メーターに関係なく殺されるとすれば。


 俺は今後、ユリンの扱いに関しても、まったく間違えられない。


 いや、どうせこれからやろうとしていることも、微塵も間違えられない無理難題に近しい問題なんだ。そこにユリンが加わっただけ。ああ、胃が痛くなる。


「とりえあずさ、指針も決まったことだし………次はあの子たちだよね。私、ちょっと声をかけてくるね。みんな知ってる子たちだから!」


 ヒナは天真爛漫で、そして自主的に活動できる女の子だ。


 俺たちの指針が決まると、嘆いている同級生らに声をかけて回った。


 これは本編でも見た。軍属になるかならないかの、究極の二択とも言える選択に判断しかねる1年生たち。


 ヒナは決して無理強いをするタイプではない。軍人になりたくないと明確に宣言した同級生の意見を尊重する。


 ただ「なった方がいいんだろうけど勇気が出ないんだ」とか「戦って生き残るべきだってわかってる。でもいざって時に私は動けないと思う」などの、ポジティブとネガティブな意見が混在した同級生らの背中を押してやれるのだ。


 実際、難民全員が軍属になったわけではないとファンブックに書かれていた。戦うことを強いられず、窮屈な思いをしながら、次のコロニーで降ろしてもらう手筈になったと。


 思い出してみれば、第7話以降で、たった1回ではあるが、道中に立ち寄ったコロニーがある。補給面の描写や、ソータたちの病み始めた生活の描写しかなかったが、負傷兵が降ろされたなかで、顔も名も知らない数名も降りていたような気がする。


 まぁそれでも構わない。戦いたくない奴に無理矢理銃を握らせても、錯乱した末に自分か味方を撃ちかねない。


 クランドも承知している。やっぱり人格者なんだな。あの不器用ツンデレ艦長は。


「………な、なぁ。エース」


「うん? ………お。どうしたんだよ。イリス」


 ユリンの時とは違う、まったく緊張感を要さない会話が発生した。


 縦にも横にもある程度の広域があるレクリエーションルームの一角を陣取った俺たちの輪に、イリス・クスナという本当に希少な、ていうか存在感が無さすぎてファンに名前さえ覚えてもらえず「誰こいつ?」となった2年生の男が声をかけてきた。


 なにが希少って、こいつだけ2年生にして、名前があるってことだ。ちなみに登場した話数は、こことあと………あれ、どこだっけ?


 2年生であるイリスが声をかけたことで、残ったソータとアイリがイリスを睨む。


 まぁ2年生の大半が俺の敵になってしまったからね。殴ろうとするなら受けるけど、ソータ辺りが殴り返しそうだ。どうやって止めようか。


「エースは志願するのか?」


「まぁな」


「………強いな、エースは。昔からそうだ。1年生の頃、お前はケイスマン教授に叱られてばっかだったけど、他の連中はそう厳しく言われてなかった。ケイスマン教授はお前に期待してたんだ。それが今年になって整備科(こっち)に転部してきて、なんだこいつってなったけど………うん。今になってケイスマン教授がお前に期待してた意味がわかった。俺なんて、まだ決められてないんだ。軍人になるべきだってのは、頭でわかってるんだけどさ」


「………そっか」


 また、コメントし辛くなる。


 俺がエース・ノギになったのはつい最近のことだ。去年のことなんて知らない。


 どうしたもんかね。まったく。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

明日ですが、2回から3回に変更して更新しようと思っております。

AIイラストのバリエーションも微々たるものですが増えました。Xの方で公開しておりますので、チェックしてみてくださいね。夜、寝る前などに作っているのですが、ちょっと難航しております。細かな部分がどうしても作用してくれないのです。結果、やり直しを繰り返しています。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなど思いつく限りの応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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