銀の髪の少女A05
「根性あんじゃねぇかよ、シーナ」
「うん。かなり見直した」
んべぁあああ………脳がとけそう。あのハーモンきゅんとソータきゅんにまで認められちゃったぁ。
そうか。これが覚悟をもって臨む挑戦ってやつなのか。
必ず痛みを伴うが、成果が出ればこちらのもの。一か八かの大勝負。
エースはこうやって、行動に移すことで周囲の信頼を勝ち取ったんだな。
「中国支部周辺にお住まいの皆様、ご機嫌よぅ。私は連合軍、グラディオスに所属している者なのだけど………あなたたちのこれは、宣戦布告とみてよろしいのかしらねぇ?」
私の前に盾となるために立ち塞がったユリンは、ゆらりと紫色の髪を揺らし、きっと私が見たら心臓の発作を起こしかねないくらいの怖い笑顔をしていることだろう。
また、ユリンの隣にハーモンきゅんとソータきゅんが立つ。コウきゅんは直接私の隣に来て、肩を抱くようにして支えてくれた。アイリが慌てて私の額にハンカチを押し当てる。かなり痛い。深く割れているような傷を作ってしまったようだ。
「だ………黙れ! 黙れよ軍の雌犬! お前たち軍が好き勝手するから………この国は………」
「なにかしらぁ? 仰りたいことがあれば、はっきりと申し上げてくださいなぁ?」
「っ………とにかく、その女を寄越せ! その女さえこちらに来れば、我々は大人しくここを去ると約束しよう」
リーダー格───ではないだろうが、自発的に代表としてユリンと対話をする青年は、ユリンの次の行動に恐怖しながら、しかし強気な姿勢は崩さない。下手には出ず、相手が子供ということもあるゆえに言いくるめられるという変な自信があるのだろう。
だがこいつらは勘違いしている。
ユリンは問題があれば、そのような問答程度で穏便に済まそうなどという優しい女ではない。
「あらら。なにか勘違いしているようねぇ? この銀髪の子を追いかけていたことについて問答はしていないのよぉ? あなたたち、この艦のクルーに石を投げたわよねぇ? それについて、どう謝罪をするのかと聞いているのよぉ?」
それは難民に対してには理不尽であり、もっとも必要な質問である。
「………それについては、謝罪を、する」
「謝罪をして、どうなさるおつもりぃ?」
「い、いや。だから謝るから………許せ」
「あらぁ? ああ、そうなのぉ。ではあなた、仮にあなたの身内に対して、ここにいる私含めて仲間の全員が石を投げて怪我をさせたとして………あなたは私たちがごめんと謝ったからと言って、快く許せるのかしらぁ? あらそぉ。じゃあお手本を見せてほしいわぁ。家族を連れてらっしゃいなぁ。お子さんが適切かしらねぇ。ちなみに私、硬球くらいのサイズの石なら130キロ以上で投げられるのよねぇ? お子さんやご両親がどうなろうと、あなたは笑顔で許せるのよねぇ? ほらぁ………連れて来てくださいなぁ」
「っ………」
いや、こっわ!
マジで怖いなユリン。ブチギレると、相手をこんなにも容赦なく詰めるのか。
ほらほら。とにじり寄るユリン。その手には、私が浴びた石が複数握られている。
ハーモンきゅんも怒ってる。指を鳴らして臨戦体制に。
けれども、これ以上はよろしくない。私は難民を迫害したいわけではない。彼らにものっぴきならない事情があるのだ。
そして、これらの衝突は、本当に………癪になるのだが、エースの予想のうちだったらしい。
「動くな! 全員手を上げろ!」
「ハナ姉ちゃん!?」
「無事か、ヒナ? いや、こちらの整備士の方が怪我人か。お前たちはこのまま艦に戻れ。私たちが護衛をする!」
拳銃を構えたハナがグラディオスから降下した。騒ぎを聞きつけた砲雷科の人間も一緒だ。
私たちを囲んで壁を作ると、たじろいでいた難民たちに全員で銃口を突きつける。そういえばハナも、実銃による訓練を受けていたのだったな。
さらに難民が恐怖し、手を上げて両膝を突く者たちが続出する。
難民とパイロットたちの諍い程度なら大人たちが数人出向いて仲裁を行うが、私という負傷者が出てしまった以上、武装して警戒していた人材すべてが出撃する必要があった。
難民を無力化したのはいい。これで本編が進む。この銀の髪の女の子を艦内に収容すれば、それでいい。
さ、嫌だけど………銀髪のメス。ソータきゅんにテレパシーでも送りやがれ。それをキャッチしたソータきゅんが混乱するんだ。あれは可愛かった。大好き。
けれども銀髪のメスは、いつまでも私を見上げていた。私が手を離しても、離れようとしない。
改めて見てみると、薄汚れているくせに、可愛い顔しやがって。穢れのない純粋な瞳が、私を射抜くようだった。
やめろ………そんな目で私を見るな。
なんて言うんだろう。正月とかで親戚が集まった場で、私の趣味を赤裸々に公言し大演説をした末に、大人たちが凍りつくなかで、幼いガキどもが私を見上げ「ボーイズラブってなぁに?」とあどけなく澄み渡った純粋な瞳をして聞かれたような心境となる。実際にそんなことはしなかったけど。
「シーナ。その子を連れて戻れ」
「………いや、まだすることがあるんだ。コウはこの子を頼むよ」
つい咄嗟に呼び捨てにしてしまった。そんな余裕はないからだ。彼のジャケットを掴んで、よろめきながら立ち上がると、銃を突き付けられて怯える難民たちに歩み寄る。
「聞きたいんだけど。あの子を捕まえたら、報奨金が出るって? 誰がそんなこと言ってたの?」
「………誰が教えてやるかよ。お前が報奨金を独り占めするつもりだろ!」
「興味ねぇよそんなの。それより、素直に答えろよ。お前の尻がぐちゃぐちゃになる前にさ」
「ひっ………わ、わかった! 教える! 教えるから銃を下ろせ!」
失礼なモブ中のモブオスめ。誰が銃を持ってるって? そこらで拾った廃材を尻の穴に突き立てただけだろうが。
「一昨日、変な連中がここに来て………丁度、あんな感じの女の子を探してるって言ったんだ! 生死は問わないから、捕まえろって!」
「変な連中ねぇ。………どんなやつ?」
「わからねぇよ。少なくともここらの奴じゃなかったし、俺らと同じじゃなかった」
「ふーん?」
間違いないかな。こりゃ。
エースの奴も、見通しが甘い。
この難民らを唆したのは、きっとアリスランドの人間だ。
アリスランドの艦長代理、ビーツ・クノこと楠木美壱とかいうクソは、私たちと同じく転生者で、エースとも前世で面識があるとか。
グラディオスとアリスランドは敵対する。転生者が絡んでも未来は変わらなかった。
だったら、これはビーツとかいうクソの作戦に違いない。原作を知っているのだ。どうせエースを困らせる魂胆で、あの子を狙ったのだろう。
だがビーツにも予想外なことに、ここには私がいる。エースでは対応できないことも、私がいればなんとかなることは実証された。
そしてこの男の言動からして、難民のなかに中国人がいることもわかった。
ハオはこんなことをしない。つまり………罠か。
「いいこと教えてやるよ。あの子を捕まえても、報奨金は出ない。差し出したところでお前たちも殺される。無駄に命を散らすことにならなくて、よかったな」
そう告げて、私は今度こそコウきゅんに保護される。そろそろ限界だった。すると銀髪のメスも私に寄り添う。ともにグラディオスへと退避するのだった。
意味わかんねぇぞ。この銀髪のメスは………。
リアクションありがとうございます!
申し訳ありません。今週の土日は多忙でして。どうしてもたくさんの更新ができなくなりました。
2回更新は心がけますので、何卒それでお許しを。
多忙ではなくとも、そろそろきつくなってきました。なにぶん、ストーリーをふたつ作っているようなものでして。後半になると辻褄合わせが大変なことになってきます。多分、矛盾だらけで、伏線だったり………あぅあぅあぅ。考えることがたくさんなのです。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
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