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再起動A08

 ヒナがこんな怒り方をするなんて知らなかった。滅多に激昂するタイプではないから、余計に迫力が目立つ。


 凍りつく空気。驚いた俺たちは身動ぎすらできなかった。


 なにより動けなくなったのがハナである。最愛の従妹がここまで激昂するところを見たことがないのだろう。


 ヤバいぞ。これはヤバい。パイロットが揃った翌日早々に、チームワークもクソもなくなるかもしれない。


「ちょ、ちょっと………落ち着こうか、ヒナ」


「エー先輩は黙ってて!」


「あ、はい」


 歯を剥き出しにして唸る獣の威圧感。ヒナに逆らえなくなる。あのユリンでさえなにも言えない。


「ハナ姉ちゃんさ………どういうつもりでエー先輩を殴ったの? 本当にエー先輩のこと、調べた? 私たちはどうでもいいの。なにを言われようが覚悟してる。でも、エー先輩を傷付けるのだけは許さない」


「で、でもこれはヒナのために………」


「私のことはどうでもいいって言ったよね!? エー先輩、どれだけ傷付いても、怪我しようと、私たちを助けてくれたの! 守ってくれたの! ついこの前だってボロボロになって帰ってきたし。だから今度は、私たちがエー先輩を助けなきゃいけないの!」


「それは、ヒナが抱えている使命感であって、盲目的になっているというか、常識で考えておかしいだろ? ひとりの男が複数の女を抱えて愛するなんて、普通じゃないって」


「普通じゃなくてもいい! 私が、私たちが話し合って決めたの。確かに盲目的なのかもしれない。周りが見えてなくて、非常識で、他人からああだこうだ言われる関係だっていうのもわかってる! でも、それでも私たちはエー先輩のためにできることをしたいの!」


 ………覚悟がなかったのは、俺だけだったのかもしれない。


 3人の少女たちに囲まれることが、やはり負い目があったのだ。それで他人からの指摘に言い返すことができなかった。


 けどヒナたちは、違った。


 なにを言われようが言い返す。自信があった。自覚、覚悟もあった。


 ヒナたちは自分で決めた。確固たる決意で。俺とともにいることを。


 俺のために、生きてくれることを。


 なんてファン失格な立場であり、恵まれた環境であることか。


 もう、俺はファンだからという言い訳はできないな。


 腹を括るしかない。


 一夫多妻がなんだ。俺は絶対にやり遂げるぞ。


「ハナさん。言いたいことは山ほどあるでしょう。けど俺も、浮ついた思考だけでヒナたちと一緒にいるわけではありません。傷の舐め合いだってことも理解してます。けど、それでも俺は、彼女たちと一緒にいたい。イカれた思考だと自覚してもいます。一般的に考えても普通じゃない。非常識で、糾弾されるかもしれない。でも俺は、それを一身に受ける覚悟です」


 初めてだった。


 ヒナたち以外に、面と向かって決意表明をするのは。


 言い訳をしない。共に生きると決めたからだな。


「………応援はしない。そして、認めない」


「わかっています。ご不満はどうぞ俺にぶつけてください」


「ちょっと待ってよエー先輩。それを許したら、エー先輩がまた傷付くばかりだよ。ハナ姉ちゃん。エー先輩の敵になるなら、私もハナ姉ちゃんの敵にムゴッ」


「ストップ。ヒナ、家族でそんなこと言っちゃダメだ。従姉妹なんだから。憎しみ合っちゃいけない。ハナの敵になっちゃいけない。そんなことじゃ、一緒に戦えない」


 本格的にヒナがハナに決別を示そうとする前に止める。


 シェリーとユリンも、ハナを敵対意識を持ち、決別を示すことになれば、チームワークがズタズタだ。せっかくナンバーズが欠けることなく、第3話で見続けたように、フルで揃っているのだから。


 そしてなにより、深い悲しみと絶望に暮れたハナが、なにを仕出かすかも………それを加味して、回避できるものは全力で遠ざけたかった。


「お前たち、一旦落ち着け。ケビンレイもだ。この場は俺が預かる」


 シドウが割り込む。ハナはキッとシドウを睨むが、これまで初期のハーモンとコウの諍いを宥めてきた経験は無駄ではなく、睥睨を軽く流す。


「エースの言うとおり、言いたいことは山ほどあるだろうが、まずは引っ込めてほしい」


「それでなにかの解決になるとは思えないのですが」


「案外、そうではないかもな。ケビンレイ。まずは相互理解………というのは酷だな。ヒナを始め、シェリー、ユリンを知ってほしい。そして最後にエースのことを知るといい。俺は少なくとも、この4人の関係性は異常だとも思うが、それで保たれているものもあるんだ。特に、このエースという問題ばかり引き起こす副隊長は、これで何度も窮地を救っている貢献者でな。俺は信頼している。お前は信頼せずともいいが、すべてを知った時、信用ならできるかもしれない。まずは、それを目指してほしい」


「………難しいし、不可能だとは思いますが………わかりました。隊長を信じます。私はなにも、グラディオスのなかで喧嘩をするためにここに来たわけではありません。アンノウンと戦いに来たのですから」


「理解が早くて助かる。………というわけだ。全員、ハナとの聴取に付き合ってやってくれ。忌憚ない意見でいい。知っていることすべてを教えること。チームワークが乱れることだけは避けたい」


 シドウなりのフォローは、これでうまくいく………とは思えないのだが、俺にはできないことだ。


 戦闘においてもハナと組まされることはないだろう。


 そしてハナ自身も軍人としての自覚がある。普段はともかく、有事の際は私怨で俺を撃つ………ことはないはずだ。彼女が抱える闇が爆発しない限り。


 これで一旦解散となる。新参者が俺に偏見を持つ機会となってしまうだろうが、ハナ以外は説得すればわかってくれると思う。


 ヒナは浮かない顔をするが、ハナが「話し合いたい」と言うと、俺を見上げる。「頼む」と頷くと、いくらか冷静さを保ち、ハナとの対談に挑んだ。シェリーとユリンも同席するようだ。


「………お前の体のことは理解している。苦労することになるが、お前には恩がある。決して胸を張れる事態ではないだろうが、それでもフォローはしてやる。思い詰めるなよ?」


「感謝します。隊長」


「………お前をそんな体にしてしまったのは、俺たち大人の責任でもあるからな。なにかあれば、遠慮なく頼れ。いいな?」


「はい」


 シドウは俺の肩を叩いて、業務に戻る。


 それぞれがポジションへと向かう。とはいえ、機体の調整は終わっているし、シミュレーションくらいしかやることがない。アレンはハーモンとコウが面倒を見て、事情を説明してくれるらしい。俺から離れていく。ソータとアイリはしばらく俺を見ていたが、今は放置するべきだと判断して体質する。


 残されたのは、俺と………ドイツ支部から引き抜いた中堅パイロットの女性3人だった。


「えっと………なにかご用ですか?」


「ご用というか………ねぇ?」


「話には聞いていたし、実際エース副隊長がヒナちゃんたちと仲が良すぎるのは最初から知ってたことだし。ねぇ?」


「ま、ここはお姉さんとして、副隊長坊やとしての悩みを聞いてあげるべきかって。ねぇ?」


 ねぇねぇ3姉妹か?


 第2クールでは戦闘描写にはよく映らなかったし、なんていうか消耗品みたいな扱いだったから印象が薄くなりがちだったが、こうして対面してみると、美人だし、いい匂いがする───いかん。早速浮ついてどうする。ヒナたちを悲しませるべきではない。


「それは、また今度ということで」


「えー? なんで?」


「これ以上誤解されるようなこと、したくないんですよ。お気持ちはありがたいのですが、遠慮させていただきます」


「ふーん? 節操のないハーレム志望の肉欲坊やかと思ったんだけど、案外根性あるのねぇ」


 忌憚も遠慮もない感想だこと!


 仕方ないけどさ!


「勘違いされがちな立場にいるのは理解してます。でも、それが俺のすべてではありません。俺のことが知りたければ、他のパイロットたちに聞いてください。では」


 そう言って、俺も展望デッキから退室した。


 歳上のお姉さんに迫られるのは嫌いではないけど、本当に誤解されたくない。


 それに今は、やるべきことがあった。


リアクションありがとうございます!

ハーレムもの………って、かなり辛いです。でもやったからには一貫します。明日にはBパートに移れそうです。

ラストは21時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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