再起動A07
「ふんっ!」
「おぐっ!?」
「エースッ!?」
「お、おい! なにやってんだテメェ!」
なんてことだろう。
ハナからいきなり、重たいボディブローをもらった。
なぜ? え、なんで?
慌てて止めに入るシドウ。立ち塞がるハーモンとコウ。唯一の親族であるヒナは困惑していた。
「いきなり済まない、副隊長。しかし私には、あなたを殴らなければならない理由がある!」
「え、えー………ちょっと待って………俺、お前とはほぼ初対面で、昨日挨拶したきり会話はなかったよなぁ? 粗相なんてした覚えはないと思う、けど?」
突然の奇襲。ハナのボディブローは早くて反応が遅れた。脳内チップが先に反応し、腹筋を固めていなければ吐いていたかもしれない。肝臓を確実に射抜く一撃だった。倒れはしないが蹲る。
恐る恐る確認をする。シェリーが支えてくれなければ、すぐ喋ることもできなかっただろう。
「私への粗相はなかったさ。しかしあなたは、聞くところによると、ヒナと交際しているそうではないか。私は………ヒナが大好きだ。他の男に取られるくらいなら、と略奪を一計したこともある!」
ハナが抱える狂気だった。
くそっ………俺はまた見誤った!
本編でハナがなぜグラディオスに着任して、ヘラヘラしていたのか、もう忘れていたのだ。
ハナはグラディオスに復讐するつもりだったのだ。
従妹であるヒナを見殺しにしたグラディオスのすべてに。
しかし、今回ヒナは生きている。ゆえに復讐するつもりはないだろうと早計な思考をしていた。これは俺の失態だ。
考察不足だった。
こいつ、ある意味で………ガチ勢だ。
「ハ、ハナ姉ちゃん? なに言ってるの? 略奪………!?」
「ああ! そうだとも! 可愛いヒナが下らん輩に奪われるくらいなら、いっそのこと私のものにそてやろうと考えていたさ! ヒナは私と結婚して幸せに暮らせばいいと」
「お、女の子同士だよ!?」
「なんだ宇宙では禁じられているのか? こっちでは法の多くが機能しないことで、割とフリーになったんだ。そして、従姉妹でも結婚できると前々から知っていた。私が大好きなヒナを幸せにしたかった!」
くそっ………同性愛者のガチ勢じゃねぇか!
荒廃した法で多様性も緩和的になってきたから、宗教も文化も関係なくなってきたってか。
ふっざけんな。多様性は他人に押し付けるもんじゃねぇ! 強要もするんじゃねぇ! 誰かを巻き込むな!
シーナ含め、なかなか厄介なキャラになってしまったものだ。
もしかしてあれか? 俺の原作破壊行為によるツケとか?
「だがっ………昨日、ヒナの顔を見てわかった。ヒナが誰かと交際していると知った時は、相手を惨殺してやりたくなったが、ハナは………とても幸せそうだったんだ。だから、私は………身を引くことにした。私はヒナが幸せでいてくれれば、それでいいんだ。気付かされたよ。私がやろうとしているのは、私のエゴをヒナに強制しているのだって。多分、それでは本当にヒナが幸せになることなど、ないのだろう………」
「ハナ姉ちゃん………」
ちょっと、空気が変わった。
そうか、こいつ………まだ救いようがあったんだな。
思想を他人に押し付け、その底の見えない沼に落として破滅させることがよくないと、気付いたんだ。それも他人から説得されず、自分で悟りを開くように究極の結論を得た。
すごい。そんなことができる奴が、いったいどれくらいいるのだろう。世界中の人間がこうだったら、まだ世界がより良くなるだろうにな───
「だがな副隊長。聞くところによると貴様、ヒナでは飽き足らず他の女をふたり囲っているそうだな? そう、そこで貴様を支えているきみと、私と対峙しているきみだ。そして噂によると? 最近になってもうひとり増えそうだとか? ドイツ支部出身の整備士の女と行動を共にすることが多くなったとヒナが嘆いていたぞ!」
ガァッ………情報がオープン状態だから伝達するのも早ぇこと。
「いや、その整備士ってシーナのことだろ? 言っておくけど、あいつコウの女だからな? 俺が手を出すわけないだろ」
「そ、そうなのか? いやでも、仲睦まじくしているところを目撃したと、証言が多く出ているぞ!」
「あー、そりゃ勘違いだ。シーナはインターネットで知り合ってな。昔、日本語を教わってたんだ。ドイツ支部で再会して、今度は俺が色々教えているってわけ。仲睦まじくしてるってのは、確かにそう見えたんだろうよ? 会話の内容なんて、大半がコウとののろけだし? コウが好きなものを教えてやってるわけだ」
「エッ、エー先輩………やめてくれ。その辺で………」
コウは顔も耳も真っ赤になって、俺を止めに入る。なんてお可愛いこと。
あれから2ヶ月。シーナの暴走癖は、なんとか治った。コウと仲直りして、交際を再開した。でもシーナも男なんて、それも二次元の世界の男なんて夢のなかの存在だし、前世でも経験がなかったらしく、俺にアドバイスを求めるようになったのだ。廊下、食堂などで大っぴらに対談するから、他人にはそう見えてしまうのだろう。
ちなみに、コウは俺とシーナのミーティングを容認している。以前、コウのツンデレ猫の部分と、淡い独占欲の部分が出てシーナとの関係について詰問を受けたが「お前を喜ばせたいんだよ。愛されてんな」と教えると、嬉しさ半分と照れ半分の、なんとも可愛い反応が見れたので満足している。
それに不満を持たれようが、俺とシーナの関係はアドバイスをする側と受ける側であると主張しておかなければ、また余計な勘違いをされてしまう。それだけは避けたい。
「だ、だが………ヒナを含めて女性3人と同時交際するなど………貴様はイカれている! ヒナだけを見ているなら私も身を引くつもりだったが、貴様がそんなハーレムを築きたいなどという妄言をしている限り、私は貴様を許さない! 必ず略奪してやる! 副隊長だろうが知るか! 貴様は私の敵だァッ!」
これだからガチ勢は。
俺がなにを言ったところで、納得しないのだろう。それはわかるが、だからと言ってパイロットたちがいる前で宣言するのもどうかと思う。
けれども、俺にも悪いところはあるのだ。ハナの言うとおり、俺が自分に言い訳などせず、早期に素直にヒナの告白に応じておけば、こんなもとになるはずがなかった。
ほら、シドウは呆れ、アレンは驚愕し、中堅の女性パイロット3人は………なんか微妙な表情をして引き気味になっている。そりゃね、グラディオスでハーレムを築いてしまった俺に言い訳をすることなど到底許されないけどさ。せめて人権くらいは残しておいてくれると嬉しいのだけどね。
と、その時だった。
「………ハナ姉ちゃんに、なにがわかるの?」
「え………ヒ、ヒナ?」
「ハナ姉ちゃんに、エー先輩のなにがわかるのっ!?」
ヒナが、唐突にブチギレた。
リアクションありがとうございます!
次回は19時頃に更新します! ストックが無いのなら作るだけ!
やったりますよあと29000文字以上(9話分)書いてみせますって! まさに狂気!
作者からのお願いです。
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