再起動A06
ついに、この時が来た。
第13話Aパートの序盤では、生き抜いたキャラクターたちが力強く息づいていることを示すため、様々なアングルからセリフを述べていく。
やはり学徒兵の、パイロットを中心として物語が進行する。そしてソータの帰投。ハナと出会い、ショックを受ける。
中盤に差し掛かると、グラディオスが新たな特務のためにドイツ支部を出航するのだ。
ブリッジからクランドが全クルーに語りかけ、半年振りのグラディオス再起動を宣言する。
会議の翌日。天候は晴天。時刻は正午過ぎ。グラディオスは半年間の侵食を共にしたドイツ支部の同胞らに別れを告げ、いよいよ発進する。
俺はブリッジで───はなく、残念ながら所定の位置で発進に備えた。シドウとともにいる。いつでも有事の際にハンガーに駆けつけられるところだ。
部屋のモニターには、地上の映像が映されている。ドイツ支部の同胞、そしてグラディオスを降りることになった同胞たちが手を振って見送ってくれた。
ああ………なんでブリッジにいれないだろう。クスドに頼むべきだったか。
アニメでは自由に視点が変わる。ブリッジでは厳かな空気のなか、クランドが命じるのだ。「レイライトリアクター、起動」と。
ついでに言えば機関科も見たかった。グラディオス後方にある大型レイライトリアクターが回転を始め、エネルギーを供給するのだ。圧巻だろう。
「おっ………!」
「始まったな」
グラディオスが振動する。俺は変な声が出た。シドウは苦笑する。
発進シークエンス、超見てぇ。
グラディオスは直接設置されていて、ランディングギアなんてないから、滑走路に入って走り出せば双方が大変なことになる。
ゆえに浮上し、メインスラスターで推力を上げて飛翔するのだ。
グングンと地上が遠くなる。
同時にモニターの映像の片隅で、ドイツ支部のガリウスFが出撃。ガリウスや輸送機程度なら、アンノウンがいる外界から遮断するようなバリアを部分解除すればいいのだが、宇宙戦艦が通過するとそうもいかない。
大半のガリウスFが飛翔し、上空を覆っていたバリアが消失した穴を埋めるべく滞空する。
とはいえ、100機編成の部隊だ。すべてが防衛に回るわけではなく、10機ほどが防衛網から離れてグラディオスの直掩につく。
その護衛も数分もすればドイツ支部に戻る。ハイマニューバで先行し、グラディオスの前方でそれぞれがクロスするような軌跡を描き帰投していく。曲芸飛行に等しいそれは、グラディオスへの激励も意味していた。
「お、お、おっ」
「しっかり掴まっていろ。無重力空間とは違う。気を抜けば大怪我をするぞ」
とは言ってもさぁ。
グラディオスは西へ機首を向けていたから、直進したのち反転する必要があった。方法は戦闘機と同じだ。全体が傾いで旋回する。俺はそのせいで、斜め下へと床を滑りそうになった。シドウが支えてくれなければ床を舐めていたかもしれない。
「修行が足りないな。少尉」
「くっ………でも、これじゃハンガーも大変なことになってそうですね」
「事前にこうなることは通達済みだ。親父も抜かりはないさ」
「だといいんですけど」
飛行機だったら客席のベルトを締めて体を固定するなりするが、生憎ここにはそういった類いのものはない。ソファに座ったままだもんな。恐ろしいことするよ。欠陥じゃねぇか。
シドウが自信たっぷりに語るので、気になって脳内チップを介して、艦内のカメラにアクセスする。この機能は、ブリッジに作用しないからフラストレーションが溜まる一方だった。
だがハンガーなら別だ。確かにカイドウならそんなミスをするはずがないと思ったのだが………
『う、わぁあああああああ!!』
『なにしてる馬鹿野郎! 工具は一ヶ所にまとめてベルトで固定しとけって言っただろうがよ!』
『うわ、最悪。塗料缶までぶちまけられるし』
『あれ固定してたの、学生連中じゃなかったか?』
『いや、補充要員の連中じゃないの?』
『誰がチェックを怠ったぁ!』
『ギャーギャーやかましいぞ馬鹿息子ども! 責任の追求したって仕方ねぇだろうが! あとで全員で掃除すりゃいい!』
………あららぁ。大惨事。
予想できた悪夢がハンガーで発生していた。まるでコント。コントで済ませられれば楽だったろうに。
「………チッ」
「どうしたエース。まさか忘れ物でもしたのか?」
「あ、いえ。なんでもないです」
思わず舌打ちしてしまうと、シドウが眉根を寄せる。どうにか誤魔化せた。
内部カメラで見てしまったのだ。とある馬鹿が、大惨事を見てほくそ笑んでいるところを。ちなみにシーナも目撃していた。
整備士たちは専用のブースで身を寄せ合って、旋回に対処していたようだ。ガリウスを固定することばかりに躍起になっていたせいで、そいつが引き起こした最初の問題に対処できなかった。
それから数分後にグラディオスは安定した飛行となる。
俺とシドウはともにブースを出て、同じく別のブースで飛行に対処していたパイロットたちと合流する。
「いやぁ、マジできつかったっす」
「あんなの初めて………ってわけじゃないけど、普段は機体に体が固定されているから、フリーになっちゃう分、どうしてもねぇ」
「コウさん。ありがとうございました。その、庇ってくれなかったら、壁に頭を打ち付けてました」
「気にするな。ああいうのは想定できた。誰かをカバーするのも仕事のうちだろう」
「でも、ちょっとだけ楽しかった! っていうのは不謹慎かなぁ?」
「いや、それは個人の自由だろう? ヒナは自由であっていいさ」
まぁ、仲のいい子たちだこと。
後輩系の男の子ひとりと、姐御系の女の子がひとりと、お姉さん3人が加わった翌日、パイロットはすぐに打ち解けた。というのも新参の5人が、それぞれの能力を活かしてコミュニケーションを取っているからだ。同性同士はすぐに仲良くなり、特徴を知ると異性との会談に進む。男女比率が一瞬にして逆転したが、それでも互いが臆することなく、負い目もなく、遠慮もなく話し合うことで友情を育む。あとは戦場に出て絆を育めばいい。
「あ、隊長! エー先輩!」
ヒナが俺たちを見つけて駆け寄る。
「ね、ね! 窓から外見ました? もう地上があんなに遠いの!」
ぴょんぴょんと跳ね回るヒナ。とても可愛い。とても16歳とは思えないあどけない言動。
しかし気持ちがわからないほど無粋ではない。
ヒナ含め、俺たち第1クールから登場する人物は宇宙コロニーの出自。ゆえに地上から離陸するという感覚と景色が斬新で、興奮してしまうのだ。
全員で展望デッキへと向かう。13人とひとり。グラディオスの主戦力。子供たちはべったりと展望デッキの分厚いガラスに額をつける。まるでショーウィンドウの向こうにあるおもちゃに見入る子供のよう。ヒナが特にそれだ。額どころか鼻先までつけている。
俺やシドウ、3人の中堅女性パイロットたちは子供たちの姿を微笑ましげに見ていた。途中でシドウたちに「なぜお前は行かない?」と問われる。子供ならあの姿になって当然だと思われていて、忘れがちだが今の俺は子供であった。
不審に思われないよう、苦笑しながら「副隊長として大人びてみただけです」と誤魔化しながらガラスへと向かう。
その途中でのことだった。
「副隊長。聞きたいことがあるんだ。いいだろうか?」
「ん? あ、ああ。いいけど」
俺に、ハナが話しかけてきたのだった。
少し眉根に皺が寄っている。
なんだか………嫌な予感がした。
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