再起動A04
「それにしてもふたりはそっくりねぇ。もしかして双子とかぁ?」
ユリンが尋ねる。
「確かに、昔は双子とよく間違えられたよね」
「実は私とヒナは従姉妹なんだ。ワルステッド家は宇宙へ。ケビンレイ家は地球で過ごすことにした。私は年に一度、宇宙に上がってヒナに会いに行ったものさ。サフラビオロスにも行ったことがあるぞ」
「そう。なら、会ったことがあるかもね。ユリン・エフナール。二号機のパイロットよぉ」
「ああ、よろしく」
握手をすハナとユリン。
なぜだろう。危ない者同士が握手をするだけでヒヤヒヤするのは俺だけ? 俺だけだよなぁ。
ハナの印象は、ヒナの外見を9割ほど似せて、性格と口調を男勝りにした感じ。歳は俺と同じで17歳。あのハーモンでさえ臆する姐御肌な一面がある。
時として大胆不敵かつ、予想もしない行動でチームを盛り上げるムードメーカーとなるのだ。
本編ではヒナを守れなかった負い目があるソータたちが、ハナを見るとどうしてもヒナと重ねてしまい、落ち込んでしまう。するとハナは「私とその子は違うだろ」と笑いながら尻を叩く。
戦争をしているのだから、どうしても犠牲は出てしまう。忘れることはできないし、困難ではあるけど克服することはできる。それがハナの主張だった。
そう。ハナはヒナと似ているだけの他人だと主張するのだ。あくまで他人であると。
けど、今回はヒナも生きているし、なにがあったのかは知らないが、目的を変えてきた。ヒナがいるのでは彼女の主張で親族であると露見してしまうので隠蔽することはできない。
ならば………ハナの目的とは?
この俺ですら知らない思惑があるのは確かだ。
難しい考察になってきたぞ。
すでにシーナは俺から離れて、四号機の整備チームがいるところに移動している。視線をそちらに移動させると、彼女の視線が時折九号機に飛んでいるのが見えた。
ナンバーズの九から十三号機は未だ改修されていないネイキッド状態である。ハナは原作どおり九号機に搭乗する。その整備チームのなかに………いる。ジョーだ。
ジョーは灰色の髪をワックスなどでツンツンに尖らせているのが特徴で、本部の意向で出向した優秀な整備士であるにも関わらず、常時物腰が低く、口調も丁寧。柔和な笑み。着任して早々にチームと打ち解けた。その毒が染み渡るのも時間の問題だ。
「なーに眉間に皺寄せてやがる。エース」
「デッ!?」
その時だ。今はどうにも手の出しようがないもどかしさからか、つい眉間に皺が寄るという、とてもではないが補充要員を迎える顔をしていない俺を不審がり、カイドウが尻を硬いファイルで叩いてきた。
「お前、なにが気に入らないってんだ? ええ?」
「いえ、そういうわけでは」
「ならもう少しくらい明るい顔しろってんだ。ほら、怖がって話を聞くに聞けない、可哀想な新人がこっち見てるぜ? シドウみたいになるんじゃねぇよ。お前の化け物みてぇなメンタルが、早々にやられるとも思えねぇし。愉快そうにしろたぁ言わねえが、気くらい遣ってやれや」
「え、あ、ああ………そうですね。少しくらいリラックスしても良さそうだ。じゃ、行ってきます」
「おうよ」
まだなにも手が出せないなら、様子を見るしかない。なにかあってからでは遅いが、そうなる前に阻止する必要がある。されども証拠なき糾弾は冤罪だ。ギリギリを見極める必要がある。
変に肩に力を入れても仕方ない。カイドウのお陰で自然体に戻ることができた。その甲斐あって、ずっと俺に話しかけたそうにしている新人パイロット、アレンが近くで「あぅあぅ」と言いながら手を伸ばそうとしているのを、やっと見ることができた。
「どうした。なんか用か? アレン」
「え、えっと………僕の十三号機のことなんですけどっ」
「うん」
「ふぉ、フォーメーションについてご相談が………ありまして。で、でも副隊長がお忙しいようでしたなら、また今度で大丈夫ですから」
ドイツ支部から引き抜いた新人パイロットであるアレンは、消極的で内気な性格をしていた。
ある意味で初期のクスドを見ているようだ。常にオドオドして、自信のない表情で、遠慮がちな意見を述べるところとか。
「いいよ。今行く」
「え、でも副隊長もお忙しいのでは?」
「そうだとしても、お前たちの面倒を見たり、マネージメントするのも俺の仕事だから。遠慮しないで、なんか悩みがあるなら言ってみな?」
「は、はい!」
ふむ。アレンは低身長かつ童顔で、伏せ目がちで、かなり中性的な顔立ちだから腐女子にも人気が出たんだよな。みんなの末っ子みたいな? シーナもツバ付けてたみたいだし。
だから優しくしてやると、すぐ落ちる。それはいい。新参者が安心する環境を作るのも、今の俺の仕事であることには変わりないのだから。
アレンはどちらかと言えば、ソータやクスドと同じ部類だな。仔犬系。ハーモンは大型犬で、コウは………大きな、猫? 以前、この考察を語ったらシーナが泣きながら喜んでたな。で「場所を代われや」って脅された。
『グラディオスの各セクションのリーダーへ伝達。艦長が会議の要請をしました。至急、艦長室までお集まりください。繰り返します───』
「会議?」
「出航は明日なのに、随分と急だなぁ………っとぉ?」
アレンとともに艦内放送を聞いて首を傾げる。すると、襟首を掴まれて強引にハンガーから連れ出されるのだった。
「呼ばれたんだからお前も行くんだっての」
「いや、俺はリーダーじゃないですし」
「いつものことだろう。気にするな」
ミチザネ親子にホールドされる。呼び出されるなら構わないけど、それなら名指しでいいのになぁなんて愚痴ると、またもや両名から「いつものことだろ」と理不尽かつ的確な指摘を受ける。
道中でアーレスたちと合流し、そのまま艦長室へ。とても自然な流れ。当然のように用意されている俺の椅子。言われずとも来いってか。
「揃ったようだな。急な呼び出しをして済まない」
クランドが述べる。俺がいることになんの指摘もしない。
「先程、本部より急な事例が降った。特務だ」
「特務ですか」
「ほう」
「またもや」
各々の反応はまばらだが、決して拒否するスタンスではない。それがグラディオスの役目であると理解しているのだ。
「我々はこれより、アメリカ支部へと向かうことになっているのは諸君も知るところだろう。しかし、経路が修正されることとなった。西ではなく、東を進むようにとのことだ」
東───来たか。本編だ。
海を渡ればアメリカに行ける。ただし、東となると当然陸の上を行くこととなる。
「クスド」
「はい」
ざわめく艦長室で、クランドに説明役を、元はデーテルが担っていた役目につくクスド。参謀として、しっかりとやっているようだ。でもこれじゃ副隊長じゃないか。クスドの出世も近いかな。
「グラディオスは中国支部を経由し、元日本支部跡地へと向かうこととなるでしょう」
「日本支部? あそこは30年前に滅んだはずでは?」
「微弱ながら、なんらかの反応を検出したので、グラディオスが調査するように。とのことです。………現在、大気圏内外問わず航行できる艦は、グラディオスのみです。他はすでに宙へ上がっています。また、各支部が派遣する余力もない状態です。グラディオスが最適かと」
デーテルのセリフをそのまま述べるクスド。なんだか嬉しくなるね。あの虫ケラの代わりに、手塩にかけて育てた後輩がミーティングを仕切るというのは。
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