再起動A03
「ちょっと待ってろ。俺が行く」
意を決して、俺だけが後車する。
グラディオスの前にいたのはクランドだけではない。カイドウやアーレス、シドウの姿もある。
足早に接近する。ただし、焦りだけは悟られないように努めた。
「艦長!」
「おお、戻ったか。手間が省けたな。ふたりとも、紹介しよう。彼が我が艦のパイロット科、副隊長のエース・ノギ少尉だ。出自は特殊だが、実力は確かだ。軍学校の出であるふたりにとっても刺激になるだろう。コンセンサスを重ねてほしい」
俺がクランドを呼ぶと、早速俺の紹介をしてくれる。
すると、男女揃って敬礼をする。
「ハナ・ケビンレイです。スイス支部から参りました。パイロットに就任することになりました。よろしく、副隊長」
「同じくスイス支部から来た、ジョー・ゴウシンです。整備科に配属されます。なにやら若手ながら凄まじい副隊長がいると噂を聞いています。お会いできて光栄ですよ。ノギ少尉」
「………エース・ノギです。軍の出自ではありませんが、人類を救済したいという意志はあなた方と同じだと思っています。こちらこそ、どうぞよろしく」
あくまで最初はフレンドリーに。
しかし、警戒は厳に。
ジョーもさることながら、このヒナと瓜二つにして、ただ唯一見分ける方法として、胸部装甲の厚みが薄いという点ですぐ判別できるハナも、なかなかの………曲者なのだ。
「しかし、スイスからなぜ?」
「上のお達しだ。この前のEタイプの件で、本部も我々を無視できなくなったと考えるべきだろう。ふたりとも優秀なパイロットと整備士だ。戦力の増加ならば、ありがたくいただくさ」
詫びとして優秀な人材を派遣した。とクランドは考えている。
けど、それは半分ほど間違っているんだなぁ。もう半分は厄介払い。ただの押し付け。左遷に等しい。
大きな爆弾をふたつ抱えてしまったようなものだ。
クソッ………わかっていれば、せめて片方だけは拒否できたのに。
悔しさが滲む。顔に出さないようにするので精一杯だ。
「ではふたりとも、こちらへ。これよりグラディオスを案内する。………ノギ少尉、ご苦労だった。通常業務に戻ってくれ」
「ハッ。では、失礼します」
クランドはシドウ、カイドウを連れて、ハナとジョーの案内をするべくタラップを上がる。
俺は敬礼したあと、踵を返す。シーナたちが待つジープへ。
「どうだった?」
助手席に乗ると、シーナが訪ねる。
「やっぱり補充要員として派遣されたみたいだ。………ああ、ソータとアイリはここで降りて、グラディオスに戻りな。俺はドイツ支部に用事があるから、こいつを足に使う。どうせこのジープをハンガーに戻さないといけないしな」
「う、うん。じゃあ」
「またあとで。エー先輩。シーナさん」
まだふたりはハナのことで動揺している。
困惑しながらジープを降りると、シーナがアクセルを踏んで発進した。
「………クソッ!」
「わぁ! おい! 急に大声出すなよ」
「これが叫ばずにいられるかよ! ハナだけならともかく、ジョーが来るなんて………最悪だ!」
ふたりきりになると、俺は全力で叫んで左手を膝にぶつける。右では骨を砕いてしまう。痛いで済まない。
「補充要員ってのは、間違いないのか?」
「原作どおりなら、そういう名目だろうよ。ハナはパイロット。ジョーは………整備科」
「ハァッ!? ちょ、ちょっと待てよ! ジョーって航海航宙科だろ!?」
「なんか知らねえけど整備士だとかほざいてやがった。だからシーナ、頼んだ」
「ふっざけんな! あんな厄介者を丸投げすんじゃねぇ!」
「こちとらハナがいるんだ! 役割分担した方がいいだろ。お前、なんのために俺がお前を推薦したと思ってる? こういう時のためにお前をグラディオスにスカウトしたんだよ」
「カァーッ! 使い勝手が最悪な少尉殿だな! まったくよぉ! ………でも、それは、わかってる。私だってみんなが、いや推しのオスキャラ限定だけどさ。ジョーにメチャクチャにされたくないもん」
「………一応、全体的に守る努力はしろよ?」
「チッ。わーってるよ。それが私の役目なことくらいさ」
これは、俺とシーナという転生者がタッグを組んだ結果、二馬力体制となった成果である。
双方の問題を、どちらも対処できるという魅力がある。
だが、あのふたり───特に毒を含んでいるあのキャラに対し、どこまで俺たちが太刀打ちできるのか。
これは本部が差し向けた爪と牙だ。そこに秘めたる毒で内側から腐らせる。対してもう一方は偶然というか、自ら問題をばら撒くクソッタレだが。
「下手をすりゃ………グラディオスが沈む」
「くっ………私たちの考察が甘かった。それは認める。でもさ」
「ああ。まだ詰んだわけじゃねぇ。シーナ、ジョーの処遇はお前が決めていい。最終的にヤベェことになったら俺にパスしろ。これでも権力だけは持ってるんだ。いざとなりゃ、どこかで強引に降ろす」
「少尉権限が、そこまで人事が利くとは思えないんだけど?」
「艦長を丸め込む。でなけりゃ、俺たちは日本跡地に到着することもできねぇかもしれねぇ。………守るしかねぇんだよ。みんなを」
「わかった。手に負えなくなったら、お前に任せる。でも、そうなる前に私が潰すかもね。こう、プチッとさ」
「尻に鉄でもぶち込んでやれ。………いや、それするとマジでお前も降ろされるかもだから、そういう気概でいけって話だけど」
シーナは整備士だ。ハムスターみたいな印象があるくらいチビだけど、これで意外と体力と筋力がある。そうでなきゃ、ひとりでガリウスFを整備できるはずがない。アーレスの鬼畜キャンプで鍛え抜かれたことだし、ジョーにいざ絡まれても、振り解いて金的を狙うことだってできるだろう。
俺たちはハンガーにジープを戻し、徒歩でグラディオスに戻る。
かなり時間はかかったが、足早に移動することで10分まで短縮することができた。
そして、グラディオスのハンガーに入り、
「ハナ姉ちゃん!」
「ヒナ! やっぱりグラディオスに乗ってたんだね、あんた!」
本編にはなかった、感動の再会に直面するのだった。
抱き合うヒナとハナ。外見が瓜二つなせいで、全員が唖然としている。
「へぇ、やっぱお前ら姉妹だったのかぁ? けどよぉ、デケェのと小せえのとで見分けがつくから便利だな! グァッハッハ!」
「カイドウさんサイテー」
「整備長。今のセクハラ発言、軍議にかけられたいですか?」
「お、おおぅ………悪かったって。いや、そうだな。済まねえ。つい、な。もう二度と言わねえから、そんなおっかない目をすんじゃねぇよ」
瓜二つといえど、ハナの方が迫力がある。その凄みに物怖じしたカイドウ。俺だってあんなのに詰められたら問答無用で謝罪したくなる。
リアクションありがとうございます!
というわけで新キャラたちを出していきます。
次回は7時頃に更新予定です!
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