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あの日に向けて

 俺の第1選考という名の、補充要員になるため立候補した人員に加点していく期間は、あっという間に過ぎてしまった。


 端的に言おう。ネームドキャラは8割発見し、俺なりに加点することができた。


 審査員である俺は、独自に調査し、リストのなかにいる人員とコミュニケーション、つまり面談することが許されている。


 主要となるネームドキャラは大半がパイロットだ。模擬戦などでも一戦交えたことがある。


 俺はよくハンガーに出入りした。指揮官となったシュナイツに声をかけ、呼び出してもらうのだ。


 4人のパイロット。九から十三号機を任せることになる。あとひとりは本編開始後に合流する。


 印象はいい。中堅が3人。ひとりは新人。なかなかの好感触。


 シーナの協力を得て、問題視していたジョーを探っていたのだが、なんと、ドイツ支部にはいないと判明した。


 それはそれでいい。そのジョーという男がグラディオスに乗らないというのなら安心はできる。


「本当なら、俺も行きたかったんだがな」


「シュナイツさんまで行ったら、ドイツ支部が危ないですよ」


「けどなぁ………こんななりしてても、憧れるもんは憧れるんだよ。エース。どうか、もしあの4人が採用されたら、面倒を見てやってくれ。それにしても本当に………アレンでいいのか? アレンは、その………見どころというか。筆記試験の結果は良かったんだが、実技で光るところがないというか」


 アレンとは十三号機に登場する新人パイロットだ。


 確かにシュナイツの言うとおり、光る部分がないというか、消極的な操縦しかできないのだが、第2クールの中盤で真価を発揮する面白い少年だ。それを事前に見抜いたクランドとシドウの眼力には驚くばかりだな。


「いいんですよ。彼、面白いですよ。今は光らなくとも、磨けば輝きます」


「かーっ。新人のくせに第七世代に乗れるとか、羨まし過ぎだな」


「まだ決まったわけじゃないですよ。俺が入れる点数なんて微々たるものだ。もっとも難しい関門を突破できなければ、グラディオスのパイロットにはなれません」


 シュナイツが座る車椅子は電動で、右手のレバーで操作しながら進むそれに案内され、休憩所に入る。


 缶コーヒーを奢ってくれたので、ついでとばかりにシュナイツの愚痴を聞いた。


「なんだ、関門っていえば………パイロットはお前の乗るガリウスとタイマン張れってか? それは無茶だぜ」


「俺のガリウスじゃないですけど………うーん。でも実技っぽいことはすると思いますけどね」


 俺にも試験内容は明かされてはいない。俺の口が軽いからかな。


「………エース」


「はい?」


「アレンはともかく、中堅の3人は優秀だ。俺もかなり手塩にかけて育てた。採用されればきっと役に立つ。どうか、頼んだぞ」


「………はい」


 シュナイツからの信頼を感じる嘆願だった。


 そして───




 


 ドイツ支部に降り立って、来週で半年が経つ。


 始まるのだ。第2クール。アンノウンだけではない。アリスランドとも決着を付けなければならない、泥沼の戦いが。


「………ふぅ」


 新たな軍服に袖を通す。


 紺を基調にしたもので、エース・ノギも成長期というだけあって、そろそろ丈が合わなくなったところだ。


 尉官がみっともない姿をしていては示しがつかない。クランドから指摘され、新調した。


 襟には少尉を現すピンバッジ。腕にはパイロットのサブリーダーを現すワッペン。


 新たな門出に相応しい姿。


 俺は今日、この瞬間のために備えてきたグラディオスとドイツ支部とで合同で行われる式典に出席する。学徒兵のなかで唯一の尉官となった、俺の姿を───ビーツ、いや楠木美壱は笑うだろうか。関係ないか。あいつに笑われても、俺は俺として、グラディオスを勝利へと導くためにここにいる。


 自室を出る。


 通路をしばらく歩き、ひと通りの多いポイントになるとピンを背筋を伸ばす。アーレスに教わった、誰かの上に立つ者として相応しい歩き方───ちょっと歩調が変になる。やっぱりダメだな。そもそも、俺が誰かの上に立つというのが慣れていないから、どうしても早々にボロが出る。


「ノギ少尉。おはようございます」


「おはようございます。グラディオスには慣れましたか? 来週の出航に間に合いそうですか?」


「慣れてみせますよ。でなければ、あなたたちに示しがつかない」


「期待しています。では」


 選考会を潜り抜けた数十名が、グラディオスの各セクションに割り当てられる。今、すれ違ったのは航海航宙科に配属された新クルーだ。階級は俺よりも下らしく、大人であるのにプライドなど関係なく、子供の俺に敬礼して、丁寧な口調で接してくれる。規律を重んじること。クランドの理念に合致することが最初の関門だ。当然彼らは突破している。


 それから予定どおり、ハンガーに赴く。


「おっ。我らが少尉殿のお目見えだぜぇ」


「やめてくださいよ、おやっさん。っていうか、式典までそう時間がないんですから、そろそろ作業を切り上げて、シャワーを浴びて着替えてください。間に合いませんよ?」


「ガッハッハ! 言うようになったじゃねぇか! この前までひよっこだったお前がよぅ………立派になっちまいやがって」


「泣いてます? まったく。涙脆いんだから。そういうのはシドウ大尉に向けてあげてください」


「バッカ野郎! シドウのはもう済ませてらぁ! あとはあいつの結婚式とかにとっておくぜぇ!」


 相変わらず賑やかなひとだ。


 カイドウが吠えると、周囲の整備士たちも笑う。


「じゃ、俺もそろそろ準備すっかぁ。おう、あとは任せたぜ! あと、おいエース。軍服新調したんだから、こんなところにいるとオイル臭くなるぜ?」


「わかってます。すぐ出ます」


「ならいいけどよ。じゃ、あとで会おうぜ」


「はい」


 カイドウは「よっこらせ」と呻きながら移動する。ずっと宇宙空間の、それも無重力区画にいたせいか、常に近くにある重力が鬱陶しく感じているらしい。俺はこれはこれで好きなのだけど。


 そんな彼を見送って、しかし言動とは裏腹に、ハンガーのより奥へと進んでいく。


 改修された一から八号機。未改修の九から十三号機。そしてタキオン。俺たちはこれから、この14機で戦いに挑むことになる。


「ソータ!」


「あ、エー先輩。おはよ。さっきカイドウさんと話してたけど、今日が式典なんだ。そっか」


「こんにゃろ。お前は出ないからって気楽なもんだな」


「うん。俺、そういうの興味ないし」


 一号機から降りてきたソータに声をかける。


 第13話では半年の療養で顔色はよくなったが、やはりまだ瞳に影があるソータが印象的だった。しかし今、ソータにその影はない。子犬みたいに尻尾を振りながら、俺の前に立つ。頭を撫でると喜んでいるのが、また可愛い。


「ソータきゅんぎゃわいっ、あ、ごめんね。なんでもないよ」


 なんかハンガーの一角で、過激派がまた暴走しかけた声が聞こえたが、無視することにした。


「ノギ少尉、お、おはようございます」


「ちょっと少尉さーん? こんなところで油売ってていいんですかー?」


「サボるのはよくないと思いまーす」


「っていうか、早く私たちのも改修機にしてほしいんだけどー?」


 早速、ドイツ支部から引き抜いたパイロットたちに囲まれる。


「させませんよ皆さん」


「改修はしばらくしないって言ったじゃないですか」


「エー先輩にツバ付けないで欲しいわぁ」


 おっと。詰め寄ろうとした3人の女に、ヒナ、シェリー、ユリンが拮抗した。俺の前に立ち塞がる。


 ちなみに新人の男の子は、ハーモンが兄貴風を吹かせたいのか「危ねえから下がってな」と回収してくれた。先輩やってんなぁあいつ。


 アイリはソータの隣に並んで笑っている。本編にはない笑顔。


 そう………本編にはない、かけ離れた、パーフェクトな布陣。離脱した主要キャラ、機体はいない。


 これでいい。


 万全を期す。本編開始時の倍以上の戦力。ハンガーは空きが目立ったが、今では所狭しと機体がズラリと並んでいる。実に壮観である。


「ソータ」


「うん?」


「勝つぞ」


「うん」


 隣にいたエースパイロットは、曇りのない笑顔で首肯する。アイリも同様。


 俺は、これが見たかったんだな。



ブクマ、リアクションありがとうございます! あと少しで総合評価が800となりそうでオラワクです。

以上で閑話を終わり、次回から本編に戻………いや長ぇ! ついやり過ぎました。本編の倍以上は書いてしまいましたとさ。

今週の土日ですが、なんとしても7回更新したいので、頑張りますので応援よろしくお願いします!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です! 最近はいただける感想などが不足してきており、皆様のお声がない状態で少しだけ不安です。どんなことでもいいのでお聞かせいただけると嬉しいです!

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