階級の爆上がり
微睡のなかにいると言ってもいいだろう。
あれからどれだけ経ったのだろうか。───約半日か。
なにがあったのかを思い出す………。
ドイツ支部から飛び立った第七世代ガリウスGの改修型を駆って、救難信号を頼りに駆けつけたソータたち。
アンノウンを軽く殲滅するほどの戦闘力には舌を巻く。特にソータのハイマニューバは、すでにタキオンにも劣らない。重力があってもなおDタイプに匹敵するんだもんな。
呼び戻された輸送機の上に膝を突いて乗せられるタキオン。シドウがカイドウから教わったのか、脳内チップを遠隔操作して休眠モードにしたお陰で、俺は久しぶりに寝落ちするという感覚を味わう。それでもわずかに意識がタキオンと接続していたので、無言であっても周囲を見渡せた。
輸送機の直掩に入る8機のガリウスG。壮観だった。
ドイツ支部に戻ると慌ただしくなる。支部の医療機関には入らず、グラディオスに収容される。
なんというか、いつもの流れみたいな。
ハルモニから特務終了の旨を受け取ったクランドが「どうせ倒れる」と判断して、治療ポッドを起動準備するようレイシアに伝えていたそうな。脳内チップの再生を促すには、やはり治療ポッドに漬物みたくジャブジャブと漬けられるに限るってね。悲しくなるわ。
で、元々怪我をしているわけではなかったし、疲れていたけど眠れなかっただけということもあり、夜には脳内チップの再生も完了。また動けるようになったので、レイシアから「お帰り」と言われてメディカルルームから放り出されたのだった。俺を収容するだけに緊急起動したようなものだし、不機嫌からのお小言連鎖が来るかと思いきや、放り出すにしても乱暴にされなかったし、怒っているような様子もなかった。
数時間の強制的な睡眠で歩行が可能になって、レイシアも俺を観察する目的で、ハンガーへとともに向かう。
そこで待っていたのは、グラディオスクルーの大半だった。
「お帰り。エー先輩」
「お疲れっしたぁ!」
「まさか、お前がもうすでに特務を可能にするほど実力を上げていようとはな」
ソータ、ハーモン、シドウが言う。
「コホン」
「あ………失礼しました。艦長」
「うむ。これは軍務だ。メリハリを付けなければな。大尉」
「ハッ」
咳払いするクランド。頭を下げるシドウ。けど、今クランドはなんて言った? 大尉? え、二階級特進? シドウって戦死したの?
「ああ、きみは知らないのだったな。きみが特務へ向かっている際、Eタイプ撃破における功績が認められ、各々の階級が上がったのだ。パイロットは特にな。目覚ましい成長を遂げ、前代未聞の功績を挙げたなら当然だが。シドウ大尉の特進も驚くだろうが、実はもっと特進した者がいる。誰だかわかるかね?」
「えっと………ソータですか?」
「いいや。きみだ。エース。おめでとう。特務終了の旨を受け、グラディオスへ帰投したその瞬間より、これよりきみを少尉へと特進させる。以後、きみが使っている部屋も正式に貸与される形となるだろう」
おっとぉ………なんだぁ、この展開は。
戦死よりもエグい特進じゃねぇか。死ぬよりも凄いことをした気分。
俺が少尉………そんな自覚、特にわかないけど、すごいことだとはわかる。だって俺、今まで………あれ? 階級、なんだっけ? 一番下じゃなかったか? 確か、2等兵とか。
副隊長に就任してからも色々あって階級のことなんて気にしてられなかったから、伍長くらいかなぁなんて考えていた。
そこから軍曹とか曹長とかをすっ飛ばして、准尉には収まらず、いきなり少尉とか。どうなってやがるんだ。
おおおお。とクルーたちが感心の声を上げ、さらに変化して拍手へ。
「では、特務の仔細を聞きたいところではあるが、それはまた明日でもいいだろう。すでに見たとは思うが、ガリウスGも改修した。こちらの報告も兼ね、きみには明日に出頭してもらいたい。………過酷な環境にいたことは、傷だらけになったタキオンを見ればわかる。今晩はゆっくりと休みたまえ。食事は………あ、ああ。レイシア。用意してやるといい」
クランドにレイシアが「野暮なことを言うな」と鋭い視線が突きつけられる。俺を気遣い、そして暴走しないための処置としての早期解散。キャロットケーキの刑に処されたくないがゆえ、クランドの判断は今日も的確かつ迅速。
「では、解散。全クルーはエースからの土産話を聞きたいだろうが、それはまた明日以降にしておいてやれ。まずはタキオンの修理だ。カイドウ。頼んだぞ」
「おうよ。じゃあな、エース。パイロットと機体、五体満足で帰ってきただけでも満点をくれてやらぁ。まだ時間はあるんだ。しっかり治しておいてやるから、お前は自分の体をなんとかするんだな」
クランドとカイドウに返事をする───前に、ガシッと両腕をロックされた。そこからは早かった。まるでストレッチャーに乗せられてる気分。
俺の腕を掴んだシェリーとユリンが綺麗な笑顔と野獣の瞳をして疾走。ヒナとレイシアも続く。短いやり取りのあと、レイシアの体力が尽きて失速。
早々に俺の部屋にぶち込まれると───
「ハァ、ハァ、ふぅ………」
「エー先輩?」
「あら、珍しい」
「エー先輩がこんな積極的になるなんて」
部屋に戻るや、俺は汗とか、普段ならまず最初に気にするエチケットも忘れて、3人を抱擁した。
ヒナたちはらしくない俺の姿に困惑する。
それでも俺は、左右の手にシェリーとユリンを、正面にいたヒナの首筋に口元を埋める。
「ごめん………俺の方も、限界だ」
「くすぐった………前の、脳内チップの件と同じになっちゃった?」
「ああ。たった1週間なのに………情けねぇ。寝れないし食べられないし………お前たちのことが頭から離れられなく、おわっ!?」
多分、言葉の選び方が悪かった。肉食獣のモチベーションに火をつけた。
俺はシャワールームに運ばれて、軍服を剥ぎ取られ、優しさの蹂躙を受ける。
なんて───至福。同じく服を脱ぎ捨てた彼女たちと固まってシャワーを浴びる。異性の柔らかい体が押し当てられ、程よい温度の湯が潤滑油のような働きをして、より俺のなかで最優先となった欲望が疼き出す。
石鹸とシャンプーによる同時攻撃。今さらだけど、消臭剤を頭から被っていた生活ゆえ、かなり酷く垢が溜まっていた。それを根こそぎ落とすと、ベッドへ。
「お帰り。エー先輩。脳内チップの副作用で食欲と睡眠欲が低下しちゃったのはわかったよ。でもエー先輩が私たちを欲しがるのは、本心だもんね?」
「ああ。………ずっと、寂しくて………。ひとりって、辛いな」
「うん。そうだよね。私も辛かった。だからもう我慢しなくていいよ、エー先輩。ほら、おいでー」
あっ。とシェリーとユリンが呟く。ヒナが先行して俺を独占した。出遅れたふたりも動き出す。
もう3人は、俺が喜んでしまう術を知り尽くしてる。しゃぶり尽くす勢いで探られた。人権など無いに等しいくらいのプレイを受けた。
「じゃーん。エー先輩、これ見てぇ」
「エー先輩が特務に言っている内に、作っておいたんです。これでエー先輩が大好きな、赤ちゃんプレイ風オイルエステの真似ができますね。通称、Uプランですっ」
酷いもんを持ってくるユリンとシェリー。バケツのなかに溜まる液体は、タプタプと波打つ。水よりも粘性が高い───まさか。まさか、こいつら………っ!
い、イカれたカウンセラーが元凶かぁあああああああああ!!
しかも古傷を抉る作戦名まで持ち出しやがってぇえええええええ!!
なんでローションっ………しかもバケツ1杯入ってるんだよぉおおおおお!
掃除が大変………くそっ! せめて仕返ししてやる。シーツをローション塗れにして、洗濯を請け負ってくれるレイシアの苦労を増してやるっ!
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イカれております。このテンションも久しぶり。ただいま。でも次回もかなり狂ってます。あの子大暴走。
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