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共同作戦⑤

 俺よりも早くこの場所でキャンプを張り、あの謎の物体について実験を繰り返していたというビーツ。


 輸送機を先にホバリングさせて垂直に着陸させると、隣にタキオンを降ろした。


 タキオンのコクピットから外に出る。


 200メートルほど離れた場所に奴のキャンプがある。輸送機や様々な機体。そして漆黒のタキオン。


 ビーツはすでに漆黒のタキオンから降りていて、俺の機体が着地するための暴風が吹き荒れるにも構わず、作業を進めているようだ。


 タキオンから降りて、俺も奴のキャンプに入る。


「………よう」


「………ああ」


 俺が声をかけると、特に興味のない声音で返答をするビーツ。振り向きもしない。


 別に、振り向いて特別な反応をしてほしいわけではない。


 それに俺を目視せずとも、ビーツは別の視点から俺を見ている。例えばキャンプの各所に設置されたカメラから。


 俺も奴も、必然的に敵同士だ。そんな敵をイレギュラー対応に必要だからと、懐に入れて平然とできるはずがない。監視カメラで互いの動向を探るのが必然的な定石となるのだ。


「あれは、なんなんだ?」


「わからん。ある日突然、地球に現れた異物。どれだけ調査をしようが、その隊は全滅する。上層部も無視できなくなったのさ」


「ドイツ支部では、まったくそんな話しは聞けなかった」


「馬鹿め。それは基地の防衛システムが正常に作動しているからだろうが。イタリアとドイツ。近いようでかなりの距離がある。日本と韓国という距離ではない。噂になろうにも、ここら一帯が人間の住める土地ではなくなった。軍も過去、調査を行ったが壊滅させられては、手の出しようがない」


「なら、なおのこと脅威として認識して、連合軍全体が一丸となって───ってのは、無理な話しか」


「ああ。そこはどこと変わらない。いつ、いかなる場所、いかなる国、そしていかなる世界だとしても。俺たちの前世にはない、高度な技術を持っていたとしてもこうだ。ひとというのは、根底は変わらない」


 性別、年齢、国籍、人種、宗教、政治───などの人間として必要なものを持ちながら、地球全体が一丸となり、なにか特別な目的に向かって邁進したことなど、一度たりともない。振り返る歴史が、一度でも平等であった時がないように。


 全人類共通の敵という、アニメならではの設定があったとしても、人間は利己的でいられなかったことなど無いのだ。


 ゆえにあの赤い物体が、アンノウンと同様でありつつも、第三勢力として人類の敵となったとしても、それで世界が変わるということは、無いだろう。いつもなにも変わらない。愚かだとしても、それが人間という生物なのだから。


「俺たちで対処するしかない」


「………本当の狙いは?」


「無い。あったとして、お前に教えるはずがない」


「お前が自分以外の目的で動くような人間じゃないことくらい、わかってるんだよ」


「ほう、では………俺が誰なのか、当ててみろよ。小此木」


「………」


「………ふっ。まだわからないのか」


 正直、わからないことだらけだ。


 まず転生後の容姿が、前世には共通していないこと。シーナの件を考えると、性別だけは一致して持ち越せているのかもしれない。


 ならば性格で一致する人物を探す。


 小学生、中学生、高校生時代の交友関係。すでに希薄。友達もそこまで多い方ではなかった。


 大学となると、友人にこんなクズはいない。ではこんな終わってる性格をしている奴がいたか………同級生、先輩、後輩。サークル関係。いや。いない。


 ただわかるのは、こうして会話をするだけで虫唾が走るが、それに反して案外話しやすいことに驚いていた。


 ビーツが俺の前世を知っているように、俺もこいつの前世と面識があり、会話をする仲であり───わからねぇ。


「まぁいい。それは重要ではない。今求められているのは、あの赤い物体の倒し方だ。………これを見ろ」


 ビーツはパソコンから立体モニターを移動させ、俺の前に差し出す。


「現在、リアルタイムで記録しているものだ。注目すべきは、あのクレーターに注がれている海水にある」


 モニターには、海水を注がれたクレーターが映っていて、今は放水を止めているらしい。ただ穴を掘るだけでなく、臨時のトンネルをコンクリートで固めて、落石や土砂から守っているらしい。排水弁も付ければコントロールもできるのか。


「これが10分前。そして、現在だ」


 映像を横にフリックすると、写真に切り替わる。


 特に変化は見受けられないが、脳内チップで分析した結果、たった10分で発生した恐るべき事実を知る。


「………水位が、下がってる?」


「そうなる。あの巨大なクレーターには大量の海水を注いで熱エネルギーを封じてやったが………あの赤い物体は完全に機能を停止させてはいない。未だ、内部に高熱を保っている。その高熱で海水が蒸発していると考えられる。………分析は済んだな。ならば放水を再び開始する」


 ビーツは特に指でパソコンを操作するわけでもない。俺と同じく脳内チップで排水弁を操作して、放水を再開させた。開通させたトンネルは、出口は未だコンクリートに覆われているわけではないので、土砂を巻き込んだ茶色の海水がクレーターへと流れ込む。


「今後の課題は、あの高熱をどう効率的に奪い、致命代となり得る一撃を与えられるかに限られ───おい。なにをしている?」


「ああ、コーヒーもらうぞ」


「俺のものを勝手に漁るとは浅ましい奴め」


「福利厚生のうちだって思いな。司令官。一時的にとはいえ、俺の上官になりたいんだろ? なら、こういうのを部下に提供する義務があると思うね。………なんだこりゃ。新品ばっかじゃん。お前飲んでないの? コーヒー嫌いか?」


「嫌いではない。その気になれないだけだ。どこぞの誰かとは違って、やることが多くて忙しい身でな。………ふん。飲みたいなら好きにしろ」


「あと、報酬は別途でもらうからな」


「成功報酬として支払われる。………どうせオルコットの豚の金だ。俺の懐事情が痛むわけではない」


「あっそ」


 こいつと会話をするだけで疲れてくる。なら、せめてもの嫌がらせに、新品のコーヒーでも開けてやろうとストックを探ると、確かに収納棚にはそれがあったが、どれも一度でも封を切られている気配のない新品が、整頓して並んでた。


 コーヒーが嫌いではないという割には、一度たりとも手をつけていない。備え付けの紙コップやウォーターサーバーはその形跡があったが、水しか飲んでいないという印象だ。


「………お前、ちゃんと飯食ってるのか?」


 コーヒーだけではない。レトルト食品もそうだ。ろくに手をつけた形跡がなく、整然と並んでいる。アラカルトもそうだ。


「余計な詮索はするな」


「………ふーん。わかったよ。じゃ、いらねぇならコーヒーの袋、ひとつもらっとくわ」


「チッ。欲深い奴。まぁいい。好きにしろ」


 こういう時だからこそ一服するべきだと思うし、現に俺はコーヒーが飲みたかったが、ビーツはそうではないと。


 なぜだかな。今のビーツに、謎の既視感を覚えた。


ブクマ、リアクションありがとうございます! 更新遅れてしまい申し訳ありません。仕事が長引いておりました。

エースとビーツを対談させるのは初めてでしたが、案外………いい感じになっていると思います。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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