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共同作戦④

「お前を信じる根拠がない」


『俺もお前ごときを信用するなど反吐が出る』


「組んだ途端に後ろからやられる可能性も高い」


『それはお互い様………いや、甘ちゃんのお前に、俺を殺すことはできないか』


「けど………もしそれが、本当にグラディオスのためになるっていうなら………俺と手を組んでやってもいい。とりあえず、あとで頭を下げに来な」


『違うな。お前が俺に協力させてくださいと言いに頭を下げに来い』


 嫌な奴。クズだとは知っているけど、俺を呼び寄せたからには、あっちから頭を下げるのが筋だというのに、それさえも拒みやがるか。いいご身分だこと。


 俺とビーツは一旦距離を開き、前後の敵を、俺たちを飽和しようとしていたCタイプを切断して、両端から穴を開けると旋回し、敵陣を崩しにかかった。


 ビーツの言うクレーターの下、もっとも低い場所にある穴の底には、赤く耀くなにかがあった。


 確かにそれは、宇宙から見たなにかだ。これがもっと光を増すことで、宇宙から視認できるほどの閃光となる。


 原作にも外伝にもない現象。だが、こんな規模の異変は、とてもではないが俺の原作破壊行為のツケになるとは考えられなかった。


 ビーツは言った。アリスランドから派遣した先遣隊が、これによって壊滅させられたと。


 ガリウスも人間も無関係で殺傷するような異物が、そこにいるのだろう。


「チッ………なにをすればいい」


 互いに頭を下げるという選択肢がないなら、水掛論などしてないで、ビーツの考察を聞きながら対策案を練るしかない。また舌打ちしながら、敵陣を大きく退けた漆黒のタキオンを見る。


『あれを破壊する』


「俺たちの装備で可能とできるのか?」


 漆黒のタキオンもまた、俺のタキオン同様ネイキッド状態である。ハードポイントにロングソードを懸架している点を除けば、俺のタキオンと微々たる箇所の形状が異なるだけで、そこまで大きな差があるとは思えない。


『あらゆる手段を試したが、効果は薄かった。だが、あの赤い輝きもまたアンノウンと同様の熱量を持っている。ならば水を注ぎ、変化を調べるという手もある』


 ビーツは独自の調査を続けて、それでも効果が望めなかったのだろう。少し声音に緊張が混じっていた。


『お前はここで、アンノウンを処理し続けろ。俺は一旦抜けて、水を運ぶ』


「海まで何キロあると思ってやがる。まさかバケツで運ぶとか、頭おかしいこと言わないだろうな? っうお!?」


 その時だ。


 クレーターの底で異変が起きた。


 赤く輝くなにかが動き出したのだ。


『注意しろ! その光に触れるな!』


「くそっ! そういうことは先に言え!」


 それは赤い水柱のような、あるいは急成長した樹木のような。地上から俺たちがいる上空まで数秒で迫ったのだ。


 射線軸上にいるアンノウンが()()()()。赤い光は質量を有していて、俺たちやアンノウンの存在など虫ケラとしか見えていないのか、振り払うようなリアクションを取ったのだ。


「この赤い光はアンノウンを殺すのか!?」


『少なくとも同族とは思っていないのだろうよ。死にたくなければ捕まるな! 1分耐えろ!』


 漆黒のタキオンが戦線を離脱する。赤い光のターゲットが俺だけに絞られた。


 急激に成長する樹木の枝のような伸び方する赤い輝き。まるでルビーのような質感でありながら柔軟。


「ぅおおおおおおおおお!?」


 タキオンが得意とする逆噴射からの加速。そしてフェイントモーション。トリッキーな飛行をしても、赤い輝きは執拗に俺を追い回す。それも他方向から。太い枝から幾多もの細い枝が伸びるように、タキオンの逃げ場を奪おうとする。


 すでに俺が乗ってきた輸送機は遠くへ移動させてある。巨体ゆえ機敏な動きができないそれでは、この赤い光に狙われてはひとたまりもない。


 また、ビーツを信じるしかない以上、漆黒のタキオンをこれに追わせるわけにはいかない。俺がギリギリまで引きつけるしかないのだ。


 なるほど。これにビーツが派遣した先遣隊が壊滅に追い込まれたのだ。アリスランドは現在、原作には未だ登場していないはずの第八世代ガリウスHを製造、所有している。俺たちが所有しているガリウスGより高性能であることには違いないが、在籍しているパイロットが悪い。多少高性能で、アンノウンをいくらか楽に撃破できる機体だったとしても、こんな───タキオンでさえも追い詰めようとする、わけのわからない輝きを放つ無機質な物体に追われてしまっては、数秒とせずに瞬殺されるだろう。


『警告。メカニック・エース。脳内チップキャパ40パーセントを超過しました』


「もうかっ………こいつを構い続けるのも、もう限界だぞビーツ!」


『待たせたなゴミクズ。お前に救いを与えてやろう』


 縦横無尽に動き回るタキオンも、消耗戦に持ち込まれてしまっては、俺の体がもたない。たった1分の操縦で40パーセントのキャパシティも駆使してしまうマニューバに、Gで内臓がイカれそうだった。


 そんな時、戦線離脱したビーツが戻ってきた。


 クレーターの壁面が崩れて、ニュッと円錐形のものが現れる。


 ドリルだ。地中を掘削していたのだ。


 ドリルを持つ機体が穴から出ると、そこから勢いよく水が流れ込む。


「海水か!」


『ああ。こいつを黙らせるためには、地下から海水を運び込むしかなかったのでな。これまで何度も試したが、地中の振動で感知され、あと一歩というところで妨害された。お前という囮に構っていなければ、この策は成功することはなかった。見ろ』


 タキオンが地上から上空へ飛び上がる。先程のドリルは無人機で、タキオンから降りて操縦していたのだろう。


 一方で地中を掘削されてできたトンネルから大量の海水をクレーターに流し込まれた赤い輝きを放つ無機質な物体は、巨大な樹木の根本に海水を浴びると、大量の水蒸気を発しながらビクンビクンと震えた。


「収縮してがやる」


『一気に冷却してやったからな。原理はアンノウンと似ている部分がある。つまり弱点も共通している』


 ルビーの巨木が震えながらも伸縮を繰り返し、痩せ細り、ついに縮んでいく。


 ビーツのいうとおり、この赤い物体は高熱を帯びていた。それこそ、伸びる前は赤く輝く一帯の周辺が溶岩と貸すほどに。乾燥し、水分さえもなくなると、有機物は消え失せ無機物だけが溶けたまま、溶岩となって活火山の噴火口状態となっていたのだ。


 そこに大量の海水を注ぎ込めば、水蒸気を上げながら溶岩が冷えて、体積を保てなくなるのか。


 最初こそ海水を蒸発させる勢いで沸騰させていたが、絶え間ない海水の供給で熱エネルギーを保つことさえ困難となり、やがて水蒸気が収まっていく。加熱が追いつかないほどの冷却が完成したのだ。


 2月頃のローマ。天候は曇り。外気としては10度以下。しかし水はより冷えているため、熱を保とうにも水中にいるのでは困難となる。


 赤い物体は、今もなお注がれる海水の下で、完全に沈黙したのだった。


「………勝った、のか?」


『これで勝てれば、特務などという形で、お前など呼び寄せたりはしない。安易な発想は控えろ。馬鹿め』


 こいつは相変わらず一言多い。


 ムッとするが、あれだけ危険極まりない敵の前でビーツと口論をするなど愚の骨頂。今はあのクズの言うとおり、警戒を続けるべきだ。


「………けど、これじゃ手の出しようがねぇぞ」


『文系のくせに、少しは頭が回るじゃないか。そのとおりだ。今、こいつは熱を奪われただけ。活動を停止しただけに過ぎん。余計なちょっかい………仮にビームでも撃ち込めば、奴に余計なエネルギーを与えかねない。………これはあくまで、時間稼ぎに過ぎない。とにかく、戦闘は一時的に終了だ。………来い。ミーティングを開始する』


 まだビーツが頭を下げていないので、特務を承諾したわけではないのだがな。けど、今それを言ったところで、なにも始まらない。


 ビーツはローマのクレーターから1キロメートルほど離れた場所で、単独でキャンプをしていた。それなりの広場である。


 俺はそこに輸送機も呼び出し、タキオンとともに着地したのだった。


評価、リアクションありがとうございます!

エースとビーツ、転生者であり、ライバルであるふたりの謎の共闘はいかがでしょうか?

この閑話のラストを飾るのに相応しい話しだと思っております!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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