ガリウスG大改造計画
早くも1週間が経過した。
特別休暇を終えた俺たちは業務に復帰する───わけにはいかなかった。
ここはなにもかもが、これまでとは異なる環境。地球なのだ。ドイツ支部を間借りしているのである。
ソータたちはパイロットとして機体に乗り、地上での慣熟訓練に入りたかったのだが───展開が、俺の予想を裏切った。
なんと、大気圏内装備への換装などシステムの調整や整備や推進器の切り替えなどで3日もあれば終わると考えていたのに、床一面に広がるガリウスGのパーツを見て、唖然としてしまった。
ソータたちと並んで口を開く俺に、仏頂面のカイドウが接近。
「昨日からガリウスGはオーバーホール、それから改修することになった! つまりテメェらが現状で乗れる機体はねぇ! 邪魔になるから、お前らは大人しく計画書でも目を通してやがれ!」
だとさ。
ソータたちならともかく、ミチザネ隊の副隊長である俺にもそんな計画は知らされていなかった。
驚きつつも、いつも誰かが作業していた長い簡易デスクに散らばった紙の計画書を手に取る。
「え、なにこれ」
「嘘だろ………こんなタイミングでかよ!」
「正気を疑うな………」
「ね、ねぇ。みんな。こんなの………できるのかなぁ? は、はは………」
パイロット全員が真っ青になる。
一方で、俺はそこまで焦ることはなかった。
むしろ、逆に───
「おやっさんッ!!」
「だぁ、もう来やがった! お前の言いたいことはわかってらぁ。でもなぁ、俺はあくまでお前のプランに乗っかったってわけじゃねけよ。ケイスマンの野郎の遺産のなかから、このプランが出てきやがった。それがお前のプランに似てた。効率は残念だがケイスマンの方が上。だから採用した。これだけだ。以上! 解散! 散れクソガキ!」
カイドウの言動が、いつもよりも荒々しい。
なんだか余裕を無くしているようにも見える。
多分、ガリウスG大改造計画はケイスマンの遺産からサルベージしたものだったとしても、以前俺が提出したものと類似してたのだろう。だからこそ認めたくないのだ。俺がドヤ顔するとでも思ってるんだろうな。
そんなこと、するはずがないのに。
「おやっさん。これ、演習に間に合うんですか?」
「………間に合わねえだろうな。だから九号機から十三号機までのどれかに、あいつらを乗せることになるだろうぜ」
だからこそ俺は真剣にカイドウに向き合った。「だから言っただろ。ザマァ」なんて言うはずがない。
俺の心が伝わったのか、突き放すような言動をせず、いつもどおりの態度に戻ったカイドウは苦虫を噛み潰したような顔で唸る。
「一から八号機のオーバーホールだけでなく、大規模な改修、改造………長く見積もって、半年は要するだろうな。かなりキツいが、やるしかねぇ」
半年。ギリギリだ。本編の第2クール、つまり第13話は、第12話の半年後から始まる。
秋を越えて冬になり、年を跨いで新春頃にドイツを出るのだ。
ただ、もしこのガリウスG大改造計画が半年で終わるようなら、そこから始まる地獄だって、優位に進めることができるかもしれない。
「俺も手伝います」
「馬鹿野郎。お前はもう整備士だけに収まる男じゃねぇだろうがよ。パイロットだろうが。ガリウスG大改造計画だけやりゃいいってもんじゃねぇ。同時にタキオンも地上に対応できるように調整するし、ジャケットだって作る。こっちは俺らに任せな。お前はお前にしかできねぇことがあるだろうがよ。そっちに集中すりゃいい」
「………はい」
俺にできること。それは計画書を手に、狼狽しまくっているパイロットたちを宥めて、新たな領域に踏み込ませること。
新型のガリウスを半年も経たずして改造するのだ。ソータは案外感心している。高機動に優れた追加パックを不要とする、さらなる高機動型のガリウスGに生まれ変わるのだから。
カイドウは一号機から八号機まで、クレーンに吊り下げた状態で装甲を外していく部下に指示を出す。
受領した際は、鏡みたくピカピカの装甲だったのに、今は使い古したせいで全体的に傷がつき、細かな部分が熱で変形していた。この外部装甲まで全取り替えだ。8機分の予備パーツがあっただろうか。いや。あったとしても、そのまま使わないだろう。切ったり削ったりして、細分化して流用するのだ。
「予備パーツの在庫、大丈夫なんですか?」
ひとしきり指示を終えたカイドウのためにペットボトルの水を差し出す。大声であれだけ叫べば喉も乾く。小さく礼を言ったカイドウは受け取ると一気に飲み干した。
「ふぃ………在庫は、余裕な分だけあるはずがねぇな」
「ドイツ支部にあるはずがないし………じゃあ、どうするんです?」
「おいおい。お前がそれを言うかぁ? お前が橋渡ししたんじゃねぇか。伝手はあるぜ。ほれ、お前がとっ捕まえたあのガキさ」
「………オードリアインジェクション社!」
「そういうこった」
第10話Aパートで保護したシャトルのパイロットと乗客、すべてがスパイだった。特にトーマスという少年が厄介だったが、俺が未然に防ぎ、決定的瞬間を抑えて拘束。オードリアインジェクション社のスパイと認めさせた件だ。
オードリアインジェクション社は、第五世代ガリウスEの量産に携わった会社だが、安価かつ量産性が優れていただけで、製造しても不備が多く見つかったり、欠陥品が大半だったという、あまり良くない噂が流れた会社だ。
第六世代ガリウスFのコンペで、ライバル社であったエングレルファクトリー社と競ったが、軍配はエングレルファクトリー社に上がってしまい、その後業績が右肩下がりになってしまった。
エングレルファクトリー社は量産性ではオードリアインジェクション社にわずかに劣るが、安定した品質と、欠陥のない職人技による設計で、今でも主力量産機として各支部に行き渡っている。シドウもこの前までガリウスFに乗っていたくらいだ。
そんなオードリアインジェクション社が、どこから聞きつけたのか───まぁ真実はビーツによるリークだったのだけど、救助者を装ってグラディオスに接近したのだ。
トーマスにガリウスGの情報を抜き取らせ、次期量産機のコンペに勝てるよう備えるために。
本編ではトーマスは宇宙を漂流したが、俺は自爆などさせず、クランドに本社との連絡先を教えさせ、交渉し、ガリウスGの情報を与える代わりに最高品質を条件に安価で買い取る契約を取った。トーマスはその窓口となった。
ゆえに、待っていればいずれ、オードリアインジェクション社に発注したパーツが届くという算段なのだ。
「良い状態で、届きますかね?」
「もし手抜きしやがったら、グラディオスに仕掛けた悪行を全世界にリークしてやるって、クランドが散々脅してやがったからな。それはまず、間違いねぇだろ。あっちも予算が厳しいが、先行投資だと思えば済むしな」
大人の世界による駆け引きの末、勝ったのはやはりグラディオスだった。
ならば、俺も俺で、できることをするか。
「おやっさん。ここの支部の支部長と知り合いなんですってね。ひとつ、お願いしたいことがあるんですけど」
「なんだ。改まって。遠慮すんな。言ってみな」
「戦闘機、あったら乗せてやりたいんです。ソータたちに」
「………あー。なるほどなぁ。それもそうだ。いいぜ。頼んでおいてやらぁ」
機体がアップグレードするなら、パイロットも適応しなければならない。
多分、知ったらヒナたちが「鬼」だの「悪魔」だのと、俺を罵倒するのだろうなあ。
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