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シーナ・サクラ④

「義手って………そんな怪我したのか?」


「ああ。色々あってさ」


「おやっさんって………カイドウさんのこと?」


「知ってるのか?」


「あ、やべっ。………えっと、私は………整備士だから。噂くらいは………は、はは」


「んん?」


「ははは………」


 モブオスは私の顔を覗き込む。


 つい「アニメ見てたから知ってるんだよ」と口を滑らせそうになったが、そんなことを言えばより不信感が増すだけだ。


 逃げようとしたのだが、モブオスは左腕で私のコートの襟を掴んでいた。猫みたいな掴み方だ。どれだけ身動ぎしようが、モブオスの握力から逃れることはできない。


 しばらくモブオスが私の顔を覗き込む。初めて近くで見たが、イケメン………の部類には少しだけ入る容姿だった。ちょっとだけ心臓が跳ねる。くっ………本編では名前さえ呼ばれもしないモブキャラの分際でっ。


「それで? なんで俺を付け回したわけ?」


「………」


「あ、そう。そんなに熱心なファンなわけね、あんたは。シーナ・サクラさんよぅ」


「誰がテメェなんぞのファンかクソボケェッ!! ………は? なんであんた、私の名前知ってんの!?」


 誘導尋問に引っかかり、自ら沈黙を破ってしまう。モブオスの腿を蹴ってみたが、効果なし。


 それよりも驚愕したのが、このモブオス───エース・ノギが、いきなり私の名前を当てたからだ。それも、なんの躊躇いもなく。あたかも前から知っていたような口振りで。


「右腕に端末付けてるだろ? ハッキングさせてもらったよ。前に、ペンタリブルってコロニーで、そういう事件があってな。支部の人間を語る間者がアリスランドのクルーだったって………いや、そんなこと言ってもわからないか」


「いやアリスランドって、第2クールから登場する艦だろ?」


「は?」


「あ、ヤベッ。………え?」


 また口を滑らせた。


 けど、なんか………おかしいよな。


 このモブオス、今なにをほざきやがった?


 ()()()()()()()()


 そんな馬鹿な。


 こいつが、単なるモブキャラが、なんでアリスランドを知ってるんだ?


 しばらく、私とモブオスは見つめ合う。


「………ちょっと、聞きたいんだけどさぁ」


 先に口を開いたのはモブオス。


 信じられないものを見る目。多分、私も同じ顔をしているかもしれない。


 こいつの表情で、とある仮説が浮上したのだ。


「多分、私も同じことを聞きたいと思う」


「………じゃあ、一緒に言うか。タイトルを」


「う、うん。いいよ。じゃあ、せーの」


 一拍置く。




「「天破のグラディオス」」




 ………………………


 ………………


 ………


 ヤーベェ。初めて会ったかも。


 こいつもだったのか。


「………ハァ」


 モブオス───いや、エースは私を解放した。


 かなり疲れている表情だった。


「ど、どした? 腹でも痛いか?」


「いや………ここにも()()()がいたのかって思ったらさ、つい」


「ここにも? え、お前今、ここにもつった? 他にもいんの!?」


「いる。………最悪な奴だけど。それはまた今度聞かせてやるよ。きっと驚く。それよりもだ。まさか………同郷の奴に会えるとはなぁ」


 あ、こいつ世界標準語から、日本語に切り替えた。


 私の反応を見ている。なるほど。そういうことなら。


「そりゃ、私だって驚いてるけどさ」


 久々に日本語を喋る。エースは深くため息を吐いて、質問を続けた。


「天破のグラディオス、最終回は見たか?」


「見た。泣いた」


「俺も。劇場版の決定でまた泣いた」


「わかる」


 ちょっとだけ、テンションが上がった。


 前世で、アニメの話ができる奴がいなかった。


 泣けるということは、こいつも筋金入りのファンということか。


 いやはや………人生、なにがあるかわからないもんだねぇ。


「じゃ、改めて。俺は小此木(おこのぎ)瑛亮(えいすけ)。前世は大学生。20歳。転生したらエース・ノギになってた。サフラビオロスにいてな。で第1話どおりアンノウンに襲われて、グラディオスに収容された」


「サフラビオロスかぁ。いいなぁ。………コホン。私は櫻木(さくらぎ)椎菜(しいな)。前世では社会人。26歳。ふふん。歳では勝った。で、転生したらここにいた。こっちではシーナ・サクラになってて、ドイツ支部に志願して整備士してるわ。あんたは?」


「整備士見習い兼、パイロット兼、副隊長兼、参謀補助」


「は? 肩書き長すぎでしょ!? あんたなにしたの!? そんな名前知らないし、好き勝手したんじゃないでしょうね!?」


 エースがサフラビオロスにいて、グラディオスに収容されるだけでも幸運なのに………っ!


 モブキャラの分際で、しゃしゃりまくっているこいつの自由奔放な指針に腹が立ち、胸倉を掴んでガクガクと揺らす。とにかくこいつが羨ましすぎる。贅沢だ。嫉妬を禁じ得ない。


「お、俺はっ………死んでいくキャラたちを、救いたかったんだ」


「はぁ?」


「第6話のヒナショック。第7話のアイリショック。これを回避したくて………色々、やった」


「………」


 掴んでいた手を離す。


 死んだり、傷付くキャラが多いのがこの世界たるアニメの特徴だ。


 私も録画だったが、消化している際にヒナというメスが戦死して「え、マジ?」と驚いた。こういう可愛いくて、豚みたいなオスのファンから推され、同人誌でおもちゃにされる人気のあるキャラは最後まで生きてるだろうなぁと嫌気がさしたところで、まさかDタイプに殺されるとは予想もしていなかった。


 第7話でアイリというメスヒロインが重傷を負った時もそう。


「ど、どうやって回避したわけ?」


「ビームシールドを製造して、Dタイプからヒナを守ったら重傷を負った。第7話ではレイライトブラスターの区画から全員を追い出して、俺ひとりで作業したら………はは。このザマだ」


「………マジか」


 苦笑するエースが右腕を掲げる。義手になったということは、右腕が消し飛んだのだ。


 つまり、こいつは自分が犠牲になるつもりで………メスどもを助けたのだ。


 こいつには、相当の覚悟がある。私に同じことができるのか………疑問になるくらい。


「でも、その甲斐あって、みんな仲良くなれたよ。喧嘩もしたけどさ。男子を見たか? 友情を築けたんだぜ? 苦労したよ。でもまさか、第9話でソータとハーモンの代わりに、ヒナとシェリーとユリンがバッチバチの喧嘩をやらかすとは、思いもしなかったけどさ」


「うわ、なにそれ。絶対泥沼じゃん。喧嘩の原因は?」


「あー………あれは………俺を巡って?」


「は? なに言ってんのテメェ? テメェみたいなモブキャラに、みんなそこまで………あ」


 そういえば、このモブオス、3人のメスと妙に仲が良かったような。それこそ、恋人みたいに。いや恋人そのものじゃん。てか、それでいながらみんな知ってるようだったし。


「まさかテメェ………ハーレムを築きやがったのか!? わかってんのかテメェ! これはライトノベル原作の、チートハーレム主人公がやりそうな無双譚じゃねぇんだぞ!? 作品が違ぇんだよ! 結末を知ってるからって、好き勝手に酒池肉林しやがって! ふ、不潔だ!」


「仕方ねぇだろ。………タキオンを動かすためだったんだ」


「タキ、オン………ッ!?」


 私は、こいつがなにを言ってるのか、まったく理解できなかった。


リアクションありがとうございます!

というわけで、AとBの次は、AとCを巡り合わせてみました。シーナからすれば、エースのしたことがぶっ飛びすぎてて理解不能になるのも当然です。

次は15時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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