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グラディオスB05

 針の筵ってのは、こういう時のためにある言葉なのだろうな。


 着替えてミーティングルームに戻れば、ほぼ全員から好意的とは呼べない視線を突き付けられた。


 ここにいるのはエース・ノギの同級生と、後輩たちだ。


 サフラビオロスに住んで、その暮らしを愛していた者たち。


 ミーティングルーム前方には巨大なスクリーンがあった。作戦の概要を説明するためのものだ。


 チラッと一瞥すると、大破し、真っ二つになったサフラビオロスが映っていた。


 同行してくれたシドウが険しい表情をすると、レイシアがハッとして映像を消す。レイシアも、まさかこんな結果になるとは思っていなかったのだろう。愕然としていた。


 お通夜のようなムード一色に包まれる室内。


 最初の襲撃で彼らは住む場所を奪われた。あるいは家族や友人を失ったかもしれない。


 そして次の襲撃で、思い出が詰まった場所が崩壊した。


 泣かずにはいられないだろう。女子たちは肩を寄せ合って涙している。


 痛ましい空気のなか、刺殺する寸前のような、殺意さえ込められた視線が次々と俺に集中する。


 ソータはこれに耐えたのか。………すげぇ奴だよ。


 さて、誰が来るかな。


 本編では奇声を上げながらハーモンがソータを殴ったんだっけ。


 うん。ハーモンに殴られても、仕方ない。ハーモンだけじゃなくて、ここにいる全員から「死んで詫びろ」と非難されようと、受け入れるしかない。


「お前………お前っ。なにして………なんてことを………っ!」


 その時、フラフラと歩み寄ってきた男がいた。ハーモンではなかった。


 俺と同室の同級生だ。


「他にやり方があっただろ………なんでサフラビオロスを壊したぁっ!」


 なぜこいつが動くのか、意味がわからなかったが、なにも不自然なことではない。


「言え! お前ならもっと………もっとうまくやって、俺たちの居場所を壊すなんてこと、しなかっただろうが!」


 名もない少年が拳を振り上げる。


 俺は甘んじて、その拳を受け入れることにした。


 しかし、


「えっ」


「シドウッ!?」


 俺の眼前に割り込んだシドウが、少年の拳を頬で受けた。


 ソータがハーモンに殴られた時だって、その場に居合わせなかったくせに。俺を守るなんて、どういうイレギュラーだ?


「な、なんで………軍人がこいつを庇うんですか!?」


「いや、そうではない」


 殴られてもなお直立し、唇の端を赤くしたシドウは、血を拭うこともなく拳を振り抜いた少年を直視する。


「此度の任務で諸君らの住居が失われたこと、軍を代表して謝罪する」


「そんな理由はあなたには無いはずだ」


「いや、ある。我々は市民を守るために組織された。そして此度の任務の隊長は俺だ。隊員の失態は隊長の責任である。ゆえにその拳、俺が頂戴することにした」


「しかし!」


 ………だよな。


 シドウが庇ってくれたのは正直予想外で、嬉しかった。


 だがコロニーを失った怒りをシドウにぶつけるのは誤りであると、全員わかっている。だから俺にぶつけようとしているのだが、シドウがそれを許さない。


 行き場を失った怒りは、やはり俺がすべて受けるのが筋である。


 ソータがハーモンに殴られたように。それである程度の溜飲が下がるというものだ。


 ところが、シドウを押し退けてでも俺を殴ろうとした少年の横にソータが立ち、贖罪の機会を奪う。コミュニケーションが極端に苦手なソータが、率先的に動いたのだ。


「待ってよ先輩。確かにサフラビオロスを壊した否定できないよ。でも、他にやりようがなかったっていうのも、事実なんだ」


「ああそうだな。お前が最初にサフラビオロスを壊したんだったな! 言い訳だけはご立派なコンビだよ!」


「うん。俺のことは好きに言っていいよ。事実だ。………でも、エー先輩は違うんだよ」


「なにが違う!?」


「エー先輩は俺のためにこの任務に同行してくれたんだ。俺が緊張しないようにって。それで最善を尽くした。サフラビオロスのことは俺も残念に思うけど、あれが精一杯だったんだよ」


「そんなわけあるか! お前たちならもっと」


「なら、次の出撃は先輩にお願いしようかな」


「はぁ!?」


「そこまで言うんだったら、模範解答を見せてよ。敵の襲撃に遭っても、なにも犠牲にすることのない戦い方を。その時は俺とシドウ少尉もフォローするから。エー先輩以上の守り方を俺に教えてよ」


 ソータがここまで言う奴だなんて、知らなかった。


 彼は受動的で、高圧的な物言いをされれば剣呑な瞳をするだけで反論はしなかった。したとしても、2クール目の中盤辺りからだった。ハーモンに殴られても、周囲が止めに入るまでされるがままだったくらいだ。


 それが今はどうか。


 俺を守るためだけに、必死になって戦っている。


 敵愾心はない。


 ソータなりに言葉を選び、上級生を諭そうとしていた。


「ば、馬鹿言うな! 俺はパイロット科じゃない。整備科だ!」



「エー先輩だって整備科だ!」



「っ………!」


 ソータが初めて叫ぶ。悲痛な面持ちで。


「整備科のエー先輩が、命をかけてガリウスに乗ったんだ。なんのためだと思う? みんなのためでしょ!? あんな普通じゃない敵に襲われてさ。こっちはほぼ丸腰だってのに………あの方法じゃなくちゃ、倒せなかったよ」


「遺憾ながら、レビンスと同意見だ。俺のカスタム機でもあれに対抗するためには、同等の機体を複数用意し、高度な連携をせねば倒せまい。ゆえに、これは俺の力不足でもある! 殴るなら俺を殴れ! 罪には問わない。これはグラディオスクルーの落ち度だ」


 この双璧に、俺を殴ろうとした少年は俯きながら「………わかった」と呟いて踵を返す。


 納得はしていないだろう。


 これは今までにない変化だ。


 だが、だからと言って、俺の落ち度が帳消しになるわけではない。失態はタトゥーのように俺についてくる。


 今泣いている女子たち。行き場を失った怒りを湛える少年たちは、この先ずっと俺を許さないだろう。


 それだけは忘れてはならない。


たくさんのリアクションありがとうございます!

急に暗くなり始めましたが、これでいいんです。

エースへの認識は分割されます。総受けではないのです。ですが、これでエースが望んだ展開にも一歩ずつ着実に進んでいます。

さて、ストックがひとつ失われてしまいましたが、新年会でベロンベロンになるまで飲んでしまった先日の酒が本日も残っていることでしょう。


そんな私の尻を蹴り上げ、「書けよコラァ」と応援してくださる温かい応援が必要です! ブクマ、評価、リアクション、感想、誤字脱字指摘、ご意見、なんでもください!

いただけばいただくほど、二日酔いも醒めて、キーボードを叩けるはずです! よろしくお願いします!

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