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シーナ・サクラ②

 上陸するキャラが続々と増えていく。


 ハーモンきゅんは選ぶっている………というよりも、なんか丸くなった印象? 軍人としての自覚が出た?


 そのなかにはクスドきゅんがいて、あの作戦のあとだから自信が少しついたようだけど、ここの支部の連中にジロジロと見られて早速挙動不審になっていた。可愛い。抱きしめたい。慌てるかな。舐めたらどんな味がするだろう。でもクスドきゅんはハーモンきゅんに舐められた方がおいしいジュルリぬふふふ。


 あー、堪能した。でもこれで終わりではない。いずれ接近して、名前を覚えてもらって、誰かの推薦を得てグラディオスのクルーになるのだ。


 天破のグラディオスの生粋のファンとして、ただ見て終わるだなんてもったいないことなどしたくない。


 それにしても、だ。


 さっきから、上陸して数分経つが、一ヶ所に集まっているグラディオスクルーがギスギスしていないのが目立つ。誰もが爽やかに笑い、伸びをしたりして、地球の空気を堪能している。


 それはネームドキャラたちも同様で───っていうかおかしいよね?


 なんでハーモンきゅんとコウきゅんが、仲良さげにしてるの!?


 おかしいよね、きみたちぃ? 対面すればいつも喧嘩してたぢゃん。


 サフラビオロスでも、グラディオスでもそうだったぢゃん。


 クスドきゅんと一緒に談笑なんかしちゃって………え、目の錯覚なの? 私の目、もう腐った?


 ソータきゅんなんて………あ、おい。なに親しげにしてんだ、あのメス! アイリ、やめろ! どうせならシドウ様とイチャイチャさせたいのにっ! ソータきゅんの半径10キロメートル付近に存在すんじゃねぇ!!


 お………おかしい。


 なんなのこれ?


 私、もしかして悪夢でも見てる?


 なんでこうなった? みんな親しげにしてる。仲良くしてる。グラディオスで、なにかあったとしか思えない。


「あ、エー先輩だ」


「エー先輩、こっちっすよ!」


 ソータきゅんとハーモンきゅんが手を振る。そんな………あの狂犬みたいだったハーモンきゅんが、可愛いだと!?


 きみ、なんで忠犬みたくなったの? いつの間に躾けられたの!?


 私はその正体を探るべく、ハーモンきゅんのご主人様を探した。


 その視線の先。タラップを降りる男の子………と近くに介助目的で群がる、メスども。


「っ、あ?」


 思考が………バグる!


 異変は加速するばかりだ。


 そのオレンジ色の髪の毛をした男の子に付き従う人員が、おかしかったのだ。


 メスどものなかに、変なのがいた。


 ヒナとかいう胸だけが取り柄のメス。あと顔がかなり可愛い程度。


 おかしい………なんで生きてんだこいつ!?


 第6話で死んだはずだよな? 


 それにこいつ、ソータきゅんに気がある描写があったのに、なんで他の男にくっついてんの?


 てか、あのオスはなに?


 ヒナだけじゃない。シェリーやユリンとかいうどうでもいいメスを従えて………え。ハーレム?


 おかしいよなぁ。いつから私の知っている「天破のグラディオス」は、ライトノベル原作のハーレムストーリーになったんだぁ? あれってオリジナルストーリーのはずだろぉ?


 ………………………


 ………………


 ………


 あ………わかったかも。


 今日の私は冴えている。


 推理小説なんてろくに読まないのに。ピンと来てしまった。


 あいつだ。あいつもきっと、私と同じなんだ。


 オレンジ色の特徴的な髪。車椅子に乗り、シェリーに押されて輪のなかに入る。


 ソータきゅんも、ハーモンきゅんも、コウきゅんも、クスドきゅんも、シドウ様も、ついでに他のメスどもも、みんな笑顔であいつを囲んでいる。


 そりゃ、笑顔なのはいいことだ。


 でもな、だからって言って、超えちゃいけないラインってもが存在するんだ。


 あのオス、私の理想と程遠い世界を構築しやがった。


 ネームドキャラでもないくせに。親しげにしやがって。車椅子に乗って同情されちゃって。


「許せない………あの野郎、私の聖域を穢しやがった………っ!」


「オゥ、どうしたんだいお人形ちゃん? 今日も相変わらず小さなお胸と、おかしな目をしてるね───」


「うるせぇブチ殺すぞフニャチン野郎っ。テメェ誰の許可を得て私に声をかけてやがる。モブキャラの分際でしゃしゃりやがって。私の聖域に入りたけりゃ、作中で呼ばれるような名をもらって来い」


 偶然通りかかった同僚のイケメンが、笑いながら私に声をかける。同期のなかでもかなりモテる部類にいるのだが、私の眼中にはない。毎度冷たくあしらっているのだが、どうやらマゾらしく、頻繁に私に声をかけてはセクハラをして喜んでいるド変態だ。


 だが今日の私は、超弩級の激昂を湛えていたので、イケメンモブの睾丸を握って脅迫してしまった。


 ビクンビクンと跳ねながら悶える馬鹿に、放送禁止用語のオンパレードで罵倒を続ける。泣いても罵倒してやった。


「………はっ」


 我にかえると、多くの視線が私に集中していることに気付く。


 同僚たちは当然、声をかけるか迷っていた上長ら。そしてグラディオスクルーのみんな。


 やっちまった。と後悔する。


 こんな暴走をしたのは初めてで、自分でもブレーキの踏み方がわからなかった。


 この支部の人間なら、まだいい。けれどもグラディオスクルーはまずい。


 私の夢が。ソータきゅんたちと一緒に過ごすための、理想郷が遠ざかっていく。


 行かないで。と手を伸ばしても、もう遅い。


 私は気の毒なものを見る目を向けられ、苦笑していた車椅子のオスに気遣われた。なんて屈辱。


 見てろよ、あのオス。絶対に度肝を抜いてやるからな。


 復讐を誓った私は、その日からグラディオスを独自に調査した。


 グラディオスクルーは激戦続きで疲れていたため、数日の休みを与えられ、通常勤務に戻るとのこと。


 その後、特別手当と称したEタイプを倒した報奨金と、追加で休暇を与えられるそうだ。ローテーションを組んで街に遊びに行くとか。


 私はできるだけモブキャラを狙って話しかけた。グラディオスクルーの主要な人物に失態を見られただけで、あの場にいたのはパイロットと艦長と整備長、参謀だけだったし。居合わせていない人物なら、まだ私が話しかけても気さくに応じてくれた。


 調査の結果、知る衝撃的な事実。


 あのオスの名はエース・ノギ。サフラビオロスコロニーに住んでいた学徒兵。整備士見習いだったのがパイロットになる。苦労が絶えない野郎だったとか。詳しいことは聞けなかったが、名前と出身と、人物の関わりさえ聞ければいい。


 学徒兵どもにも調査の手を伸ばす。正規軍よか口が軽いガキどもだ。軍人としての自覚が芽生えたとしても、シーナ・サクラは17歳。歳も近いし警戒はされなかった。


 知りたいことは大体わかった。


 あとはアプローチをかけるだけ。あのオスを、利用できるかもしれない。


 変わり者という噂も絶えない。私と同じだ。


 相容れない存在ではあるが、話くらいは通じるところがあるだろう。


ブクマ、リアクションありがとうございます!

なにやらシーナが敵になりそうな………?


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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