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シーナ・サクラ①

 宇宙戦艦というのを見るのは初めてだった。


 ベルリンは海に面していない内陸の首都だから。戦艦は海に面しているところにある。


 支部の基地には滑走路があり、発着するのは戦闘機───よりガリウスが主流。大気圏内装備の高機動型。フライトユニットを装備。その度に轟音が鳴り響く。


 けど、今日この瞬間。ガリウスのエンジン以上の爆音と強風を巻き起こし、上空から巨大な鉄の塊が舞い降りた。


 支部から展開する主要な施設はバリアで覆われて、そこに暮らす人々に注意喚起が促される。基地なんて大騒ぎだ。


 宇宙戦艦が大掛かりな任務を終え、修理のために長期滞在を余儀なくされ、ドイツ支部に着艦しなければならない。一応、連合軍にはそういう決まりがあり、前もってそういうスペースを拡張していたが、上の連中は「まさか来ることはないだろう」と高を括っていたところに宇宙戦艦が着艦申請を出してきたので、てんやわんや。


 なにか特別な理由が無ければ申請は弾けない。で、その理由が見当たらないし、この支部の最高責任者は案外乗り気で、着艦を許可してしまったゆえ、数時間後に現れた宇宙戦艦───特殊強襲特装艦グラディオス級一番艦グラディオスを収容することが決定したのだ。


 グラディオスは………かなり酷い有様だった。


 激戦を潜り抜けたのだとわかる。グラディオスを見上げる誰もが息を呑んでいた。


 だが、さすがは連合軍が誇る最新鋭艦。本部は使い捨ての駒としたけど、見事這い上がった。歴戦を潜り抜けた操舵手の腕も大したものだ。壊れかけているとはいえ、常に安定した姿勢制御。大地とほぼ水平になり、ゆっくりと降下して、この支部の施設へ負担をかけることなくドッキングを完了させる。


 タラップを伸ばして、昇降口を接続すると、降りてきたのは予想どおりグラディオスの艦長。そして整備長。初めて見た。興奮を禁じ得ない。ふたりとも渋いねぇ。テンション上がる。


 私も志願して、グラディオスの収容のクルーの一員として現場に居合わせたことで、双方のトップ同士の会談を目の当たりにすることができた。


「ドルテ!」


「やぁ、クランド!」


 軽く手を振るクランドに応じたのは、うちの支部長。ドルテ・ヤーゴイア。宇宙で生まれ、地球を愛するため降下した男。穏健派なのか、尖ったところがない。平々凡々とした性格だが、施設に関しては手抜かりがない。給料もちゃんと出してくれる。ホワイト企業でも目指しているのかと思える中年男性。


 ふたりは相対すると、敬礼する。カイドウも敬礼した。うわぁ………マジもんのエリート軍人ってのを見たようで、感心する。


 ここら辺は本編にないからなぁ。第13話が始まるのは今から半年後だし。語られざる歴史の裏側を見ているんだな。私は。


「着艦申請に応じてくれて感謝する。ドルテ」


「なーに。軍学校時代の恩を返しているだけさ。きみも久しぶりだね、カイドウ。相変わらず整備士をやれているようで安心したよ」


「おうよ。お前も支部長になってたんだな。やるじゃねぇか」


 敬礼を終えて、握手を交わす3人。どうやら旧友らしい。旧交を温めつつも、そのやり取りがしばらく続く。


「こうして3人が揃ったのは何十年振りかね。アーレスもいるんだろう?」


「20年は経っているだろう。アーレスは砲雷長として勤務している」


「懐かしいなぁ。みんな、夢を叶えたんだね。僕は支部長。クランドは艦長。カイドウは整備長。アーレスは砲雷長かぁ。壮観だなぁ」


「つっても、俺やアーレスはクランドに拾われた身だぁ。半分くらいはクランドの采配だぜぇ」


「だとしても、クランドは実力無きものをクルーにはしないよ。実力があるからこそ乗艦させたんじゃないか。………ああ、すまない。興奮して業務を疎かにしてしまった。ようこそ、グラディオスの諸君。ドイツ支部へ。我々はあなた方を歓迎します。支援は惜しみません。激戦を潜り抜けたあなた方に敬意を示すとともに、この支部の滞在を許可します。お互いのためになる、有意義な時間を過ごせるよう心がけましょう。クランド艦長」


「ふっ。………感謝する。ドルテ支部長。艦の被害は見てのとおりだ。だが、クルーが負傷している。そちらの医療機関に収容したい。可能か?」


「もちろん。すぐにこちらで手配しよう。それとクルーの皆さんもお疲れだろう。是非、揺れない大地を踏み締めるといい」


「すまないな。………あとで一杯やろう」


「ペンタリアルで購入したスコッチがあるぜ。アーレスも一緒に4人で飲もうや」


「それも是非に。きみたちの武勇を聞かせてほしい。………さぁ。こちらも仕事に取り掛かるとしよう。彼らがこの支部の整備士たちだ。どれくらいの期間になるかはわからないが、精一杯やらせてもらう」


 支部長が私たちに手を振って、合図をする。


 整備士たちは一斉にポジションまで走っていく。私は軍人になって一年も立たないペーペーだ。やれることも少ない。先輩に呼ばれるまで、簡易的な作業をする。


 だが、それでいい。


 支部長には最大の賞賛を送りたいね。だってさ、クルーの上陸を許可したってことは、お目に掛かれるってことじゃん。


 私が愛する、最推しキャラたちに!


 あえてタラップ付近で作業をする。


 そこから優先的に降ろされる怪我人たち。ドクター。んであいつは、レイシアという艦長の娘。



 メスはいいんだよ、メスは。



 オスを寄越せ。私の生き甲斐。目の保養。オスよりもオスらしいオスを寄越せ。見せろ。早く、見せろっ。



「っ………ぐ、ぎ」


「ねぇ見て。お人形ちゃん、今日はすごく機嫌悪そう」


「近寄らない方がいいよ。狂犬病を発症したのかもしれない」


「いやだわ。怖い」


「今日も狂ってんなぁ。お人形ちゃん」


 周囲の新人の同期どもは好き勝手言ってくれる。そんなに顔に出てる………のだろうな。


 でも構わない。最推しキャラに会えるなら。興味の欠片もわかないモブキャラどもよ。私の顔芸を好きなだけ見て、ドン引きするがいいさ。


 そして、やがて、名もなきモブたちが上陸し、待望の瞬間が、ッッッキタァァアアアアアアアアア!!


 うわぁああああああああああああああああああああ!!


 ぅわ。あわ、わ、んあ!


 ああああああああああああああああああああ!!



 ソータ・レビンスきゅんだああああああああああああ!!



 んぎゃわいいいいいいいいいいいいいいいいおいいいい!!



「ぬふ、こふっ、えふぅっ」



「ね、ねぇ見て? お人形ちゃん死にそうになってる」


「狂犬病の発作かもしれないよ?」


「衛生兵呼ぶ?」



 うるせぇぞモブキャラどもっ!


 黙って見てやがれ!


 んでぇ、続いて上陸したのはワイルド系ワンコ、ハーモン・デクスターきゅん!!


 大人のオス代表、シドウ・ミチザネ様!


 ハァ、ハァ………ヤッベェ。死にそう。嬉しい。死ぬ。


 次は小さいワンコのクスドきゅんかなぁ?




「んびゃっ!?」




「あ?」




 心臓が、止まるかと思った。


 次に上陸したのが、第12話で戦死したはずの、私が夢でイチャイチャしたくらいの最推したる美形、クール系代表。


 コウ・ギグスきゅんだったのだから。


 思わず叫んでしまう。変な声が出た。


 それを聞いたコウきゅんと目が合った。


 ヤベェよ。死ぬ。


 なるほどなぁ。これが前世で、アイドルのライブで目が合ったと嬉しげに語っていた同級生のメスどもの心境だったのかぁ。


 わかるわぁ。死にそうになってるもん。


 で、でも………なんで?


 なんで、死んだはずのキャラが………生きてるのぉ?


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

1000に届くまで、あと少しですね!

シーナちゃんは、面白ぇ女として、今後活躍してもらうとします。


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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