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反撃のグラディオスC03

 赤と黄色のビームが、ふたつの赤く燃えている物体を繋げるラインとして、空中を凄まじい速度で駆け抜けた。


 この世界にはないはずの遺物。されど開発されないなどという固定概念は、もはや通用しない産物。


 それが俺の手のなかにあるというのなら、使ってみせるまでのこと。


 空中に飛び上がったタキオンもまた赤熱化する。グラディオスの落下速度に合わせた慣性によって、本来受けるはずのないダメージを負いつつも、この砲撃にすべてを賭けた。


 グラディオスクルー全員の思いが込められた一撃は、吸い込まれるようにEタイプのコアに直撃。この短時間で感覚だけで習得した照準の合わせ方が功を奏す。


 コアを焼かれたEタイプが、声にならない悲鳴を上げて、ゆっくりと傾倒していく。


 そして、銀色の光となって───消滅した。



『うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


『やったぁああああああああああああああああ!!』


『ついに倒したぁぁああああああああああああ!!』


『追撃、敵の新たなワープがないか探れ!』


『っ、総員、警戒態勢を維持! 戦闘は終わっていません!』



 やっと2体目のEタイプを殲滅して、勝利の雄叫びを上げていたところに割り込むクランドの厳しくも現実的な指摘に、オペレーターが緊張を帯びた声で叫ぶ。


『レーダーに敵影無し!』


『熱源、周囲に確認できません』


『大気圏外からの追撃、ありません!』


 トリプルチェックが次々と完了していく。


 クランドは残心の構えを解かず、数秒黙したあと───深く息を吐いた。


『水を差してしまって済まなかった。敵の追撃が無い以上、本艦の特務はこれで終了したものとする。オペレーションテンハ、クリア。………我々の勝利だ!』


『うおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


『っしゃぁああああああああああああああ!!』


『きゃああああああああああああああああ!!』


 クランドの合図で、再びぶち上がる歓声。


 それを耳にしながら、俺はゆっくりと、しかし確実に高度を下げた。


 メインスラスターを全快に、グラディオスと相対速度を合わせ、しかしもう甲板に降り立つことはできないだろう。


 するとオペレーターからの指示で、多少の損害は構わないから、どこにでもタキオンを設置するようにと許可が降りる。グラディオスの装甲が陥没してしまうが、なりふり構っていられる余裕もない。一度も補給をしていない影響で、推進剤も少なかったのもある。


「くっ………」


『頑張れエー先輩!』


『もう少しっすよ!』


『根性を見せろ副隊長!』


『もう見てられないわねぇ。私が出るわぁ!』


『やめろってんだ! テメェらのガリウスはもう限界だ!』


 ハンガーからは後輩たちのエールが絶え間なく届く。


 勝利の雄叫びをあげていた面々も、残された課題にやっと気付いた。俺こそ水を差してしまう形になってしまい、罪悪感があった。


 飛び上がってEタイプを撃ったタキオンはもう限界で、そして俺自信も限界だった。


 脳内チップのキャパがあれで尽きるどころかオーバーして、今にも意識が飛びそうだった。


 左手でヘルメットを脱ぎ捨てる。危うく鼻血で溺れかけるところだった。


 頭痛と吐き気と倦怠感が襲う。タキオンの各部で異常が発生した。陽電子砲がデッドウェイトとなっている。空気抵抗も凄まじく、本来大気圏内でも素早く動ける完璧なフォルムであるはずが、Eタイプの体内に潜った影響もあり外装が歪んで、流線的なフォルムを失いつつあったのも大きい。


「もう………少し!」


『警告。これ以上の操縦は脳に深刻なダメージを与えます』


「今ここでやらなけりゃ………死んで、それでお終いだろうがっ」


 嘔吐し、血を吐き、それでも食らいつく。


『グラディオス、レイライトリアクター臨界稼働! 3機による同時稼働で、姿勢制御を密に! 逆噴射開始! タキオンを見捨てるな! 墜落しないよう推力を保ちつつ、高度も下げろ!』


 ここら辺の科学はエース・ノギでも詳しくはない。マッハ20で飛翔しながら落下を続ける宇宙船が、スペースシャトルとは違った動作をする。やはりここら辺はロボットアニメならではの、とんでも理論が働いて可能にしているからか。


 それを可能にしているのがレイライトリアクターという代物か。


 タキオンはもう、飛んでいるというよりも斜め下に落下している状態だ。スラスターはまだ動いているが、俺ではもう、精密な動きはできない。


 そこでクランドはグラディオスを強引に制御した。艦の負担も省みず、目的地まで向かえないかもしれないのに、タキオンを助けるためだけにクルーを危険に晒す。


 タキオンはやがて、減速したグラディオスの甲板ギリギリに墜落した。柔らかで華麗な着艦とは言えない、無様に潰れたカエルみたいになりながら、それでも母艦に触れられたとあらば、全力を振り絞って、甲板に穴を開けてしまうが右腕のヒートナイフを突き立てでもタキオンを固定する。


『タキオン着艦! 成功です!』


『うぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!!』


 3回目の雄叫び。頭がガンガンする。声を上げることもできず、そのままとなってしまう。


『パイロット、バイタル低下していますが、意識はあります!』


『よし。艦が安定し次第、タキオンを回収し、エース副隊長を救出せよ! アーレス、カイドウ、行けるな!』


『お任せを! グラディオスを救った英雄を、必ず助け出します!』


『損害が少ない六号機の応急修理は、グラディオスが安定するまでには済ませる!』


『よし。レイシア。メディカルルームの治療ポッドをひとつ解放してほしい。可能か?』


『はい。むしろ、収容されていたひとたちが率先してエースくんのために出ようとしているので、それを抑えるのに大変ですけど、なんとか!』


『ならば、いい。………オペレーター。このまま降下して、進路に連合軍の支部はあるか?』


『最寄りの支部は………ドイツです。ベルリン支部に着艦申請をします』


『頼む。………聞こえるか? エース副隊長』


 グラディオスクルーの声が勢いよく流れていくなかで、俺に話しかけられたのだと理解するのに数秒を要した。


「………は、い」


『喋り辛いのは理解している。返答があったので、安心した。そのまま聞いてほしい。………感謝している。きみという存在が無ければ………今頃、多大な被害を出していただけでなく、グラディオスは敗北し、地球に降り立つこともなく、Eタイプにやられていただろう。あとのことは任せてほしい。きみは………十分過ぎるほど成果をあげた。休みたまえ。………ありがとう』


 確かに、もう声も出せない。


 クランドから初めて、はっきりと感謝された。自然と唇の端が吊り上がる。


 タキオンのリンクはまだ切れていない。


 甲板の端から、初めてゆっくりと外の世界を見た。


 海が広がっていた。遠くに陸地が見える。


 勝った。俺は、俺の運命に勝った。


 原作破壊行為のツケに抗い、全員で生きて、地球に降り立った。


 第12話「反撃のグラディオス」も、これで終わる。


「へへ………」


 薄く笑った。


 第1クールが終了したのだ。


 これでしばらく、戦いは発生しない。


 ゆっくりと休めるのだ。それを実感すると、体が重くなってきた。


 なんだか、すごく眠い。


『お疲れ様。エー先輩。お帰り』


 艦が安定した飛行ができるようになると、ヒナの六号機がエレベーターから甲板に現れ、タキオンを抱きしめて回収する。


「ただ、いま………」


 勝利の余韻が、やっと俺に感慨深いものを与えてくれた。


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

これから第13話に向かいたい………ところなのですがぁ。ちょっと違います。

第13話は第12話の半年後から始まりますので、以前から申し上げたように、閑話を挟みたいと思います。第12.5話的なものを、オムニバスのように書いていきます。


次回、いきなり衝撃的な新キャラが出ますので、ご期待ください!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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