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反撃のグラディオスB08

 覚醒の共通認識といえば、空間認識能力の増幅と、人間の限界を超えた反射速度だろう。


 そして、各々の能力が加算されることになる。


 アイリの場合、脳波の増幅。


 前々から、その予兆があったのだ。ドローンカメラの操縦において、言葉では表現できなかったものの、彼女なりの正解を掴んでいた。


 それがあるからこそ、理解を得たからこそ、俺のように脳内チップで増幅した脳波によって、直接的な操縦をしなくとも、総じて脳波ですべてをコントロールできるようになる。


 それが今、アイリの覚醒によって進化を発揮している。


 俺ですら不可能だった5機以上の、それも5倍の数を同時に操っている。それでいてすべてを別の動きをさせることができる。


『コロニーのメインバーニア、修理完了しました! 八号機による修理と思われます! こ、こんなことが………』


『驚くべきことだが、今はその真偽を問うべきではない。フェイズ6発動する! アイリ・ナカダ! コロニーを再び全速力で戦線に投入せよ!』


『すでにやっています』


 アイリは、驚嘆するオペレーターやカイドウに、歌うように答えた。


 声が弾んでいる。ハイになったテンション。それがすべてを物語る。


 メインバーニアの修理を終えたガンビッドもソータの直掩に加えた。計20機の無人兵器がソータに追従する。


『アイリ! 一緒に、行こう!』


『いいよ、ソータ。それを待ってた!』


 なんて………なんて尊いやり取りだろう。


 俺の最推し活対象者たちが、覚醒を遂げた末に、手を携えて同じ目標に向けて邁進したのだ。


 それに感動できないようでは、推し活などやっていられない。


 さっきからゾクゾクしっ放しだ。


 原作から逸脱した展開に、俺は涙さえ浮かべている。視界をタキオンのメインカメラとリンクしていなければ、今頃視界不良になって撃墜している。


『いくよみんなぁぁあああああああああ!!』


 アイリは廃コロニーが半ば崩壊するくらいの加速を与えた。経年劣化で脆くなっていた部分がボロボロと剥がれ落ちていくが、超重量の乾き切った大地やコロニーを支えるフレームは頑丈で、いくら振動を与えようと曲がることはない。


 アイリの咆哮によって、ついにフェイズ6が始動する。


 徐々に巨大化して見える廃コロニー。それが遠近法によるものだと、今さら認識する。本来ならグラディオスなどすっぽりと飲み込んでしまえるほどの大きさなのだ。割れ、崩壊した大地とフレーム。徐々に先鋭化していく。まるで巨大な杭。待避壕にしていた港など原型を留めていない。


『各機、八号機の射線より退避! 巻き込まれるぞ!』


 シドウが叫ぶと、全機が加速する。ただし、ヒナとユリンが電流を浴びて挙動が鈍く、推進剤を使い果たしていたのか幾分か遅れる。シェリーが手を伸ばすも、たった1機だけで2機を牽引はできない。そして、それを見逃す俺ではない。


「みんな、掴まってろ!」


「エー先輩っ」


 六号機を右手で、二号機を左手で、五号機を肩で捕らえ、加速する。遅れて出撃した分、タキオンの推進剤にはまだ余裕があるし、推進器の数も出力も違う。すぐに廃コロニーが通過するであろうポイントから、3機と同時に離れることができた。


 また、やっと廃コロニーの脅威を察知したEタイプが火炎弾を放射するが、質量が違いすぎるゆえ、火炎を浴びても表面が崩れるだけで基礎が壊れることもない。退避しようにも反転も間に合わないだろう。


 火炎弾で包み込まれる廃コロニー。タキオンのメインカメラが、そこにいたマゼンタ色のパーソナルカラーの八号機を、瞬時に駆けつけた青い一号機が抱き上げて、大量のドローンカメラとともに戦線を離脱するのが見えた。


 巨大な燃える杭が、傷無しだったEタイプの顎を───穿つ。


 メリメリメリと食い込んだ廃コロニー。それでも長距離を飛翔したことで推力を得て、勢いは止まらない。背後にいた傷ありだったEタイプをも巻き込んで、それでも進み続ける。


 やがて、廃コロニーの中央まで進む。その頃にはアンノウンの高熱で融解を開始していたが、フェイズ6で期待されていた効果が発揮した。


 傷無しだったEタイプの顎を切除し、それでも奥へ奥へと進む廃コロニーが、深傷を負わせている。


『今だ! 点火! フェイズ7発動!!』


 クランドの合図で、サフラビオロスの5倍はあった爆薬が、起爆する。


 途轍もない衝撃だった。ガリウスがより遠くへと突き飛ばされるほどの。


 しかし、物理的に内部で爆発を発生させたことで、これから本当の狙いが、始まる。


「ソータァァアアアアア!!」


『待ってたよ。行こう、エー先輩ッ!!』


 ソータの一号機も、八号機をシドウに託して戻ってきた。俺のタキオンとともに爆進する。


 傷ありだったEタイプは顎に傷を負い、爆発で突き放された。よって最初のターゲットは、傷無しだったEタイプ。巨大な顎を失い、不揃いな歯が並んでいた上顎も消し飛び、龍の頭部を模しているようだったそれも、もう原型を留めていない。


 ソータと俺は、一号機とタキオンは、共通する装備を提げている。


 一号機の腰の後ろにも搭載されていたのだ。バスターソードが。


 爆炎のなかを両手で携えたバスターソードを掲げて突き進む。


 やがて目前に現れたのは、真っ赤に燃える太陽のような、初めてみるアンノウンの断面図のような、原型をほぼ失ったEタイプ。


 バスターソードを振り上げる。全スラスターを用いて、凄まじい熱量を発するEタイプの直上から、巨大な刃を振り下ろした。


 されども未だ100メートルはあるEタイプ。バスターソードの刀身をEタイプの本体に食い込ませ、強引に叩き切っていく。


 やがて中央に到達した時、お互いが左右に分離し、広い刃を滑らせてバスターソードを抜くと、やはり、予想どおりの縦穴があった。


 廃コロニーが跡形もなく粉砕するような規模の爆発で、Eタイプが大量のアンノウンを圧縮して取り込んでいたメカニズムが判明する。これはその見本となる断面図だ。


 その縦穴に対して、一号機とタキオンは、両腕のビームシールドを出力全開にして───突撃。


 先行する一号機は右へ、後続のタキオンは左へバスターソードを食い込ませる。


 まるで巨大魚の解体を、内部に侵入して行っているかのような感覚。ひたすら赤い景色が続き、装甲が熱によって塗装が焼け焦げると同時に、Eタイプの縦穴を貫通。


「コアの位置………下か!」


『了解! 俺が上からやる!』


「わかった! クロスするぞ!」


 アンノウンにはコアと呼ばれる心臓部がある。多くが人間同様、胸を思わせる場所にそれがあり、武器などで貫くことで消滅させることができる。


 Eタイプの場合、人間と似たような形状をしていなかったため、コアの場所を特定するのが難しかったが、これだけ切り刻めば露出する。


 そして、俺とソータがEタイプにとどめをさそうとした直後、アイリが脳波で操縦するガンビッドとドローンカメラが俺たちの直掩として追従した。


 俺にも10機の無人誘導兵器が援護につく。


 鳥肌がたった。俺はいつもダイレクトサポートをする側だったのに、ついにアイリによってダイレクトサポートを受ける側となったのだ。


 タキオンのレーダーを介して、それぞれの動きを読み取る。


 各機、俺が脳内チップで操る以上の機敏な機動。


 細部に至るまでの完全なる支配。


 すごい。と感嘆する。


 これで確定した。


 アイリはすでに、無人誘導兵器の運用に関しては、俺を上回った。脳内チップも移植していないのに。


 いや、それは違う。


 覚醒を可能とする者に、脳内チップなど必要ないのだ。むしろ邪魔となる。


 これが才能の違い。


 天然と養殖の違い。


 今日、この瞬間、アイリはグラディオスにとって、必要不可欠な存在となったのだ。


 アイリは俺の後輩だが、もう俺の上をいく。過保護になる必要はないという意思表示。


 それがなんだか少しだけ寂しくて、少しだけ悔しかった。


ブクマありがとうございます!

次回は15時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします! 皆様のお声をお聞かせください!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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