反撃のグラディオスB07
その名を───覚醒。
どんなアニメにも存在する、主人公、あるいは主人公勢の限られた人員のみが使える特殊能力。
天破のグラディオスにも存在するのだ。
脳の奥底で開花を待つ、未だ使われたことのない領域を、こじ開けること。
《ハルモニ! ミチザネ隊副隊長権限を行使! ソータ・レビンスが搭乗する一号機のコクピット内の様子を開示! 映像データを見せろ》
《イェス。メカニック・エース》
ここからは誰にも聞かせるわけにはいかない。
俺は一号機のメインモニターの横にある、各機との映像通信用のカメラを起動して、一号機のコクピットにいるソータの顔を見た。
また、ゾクッとした。
このアニメの覚醒は、肉体の一部の変化によって表現される。
それが眼光。
ソータの目は一号機に劣らず青い。
その青い瞳が淡い燐光のようなエフェクトを発するのだ。
間違いなく、ソータは極限の怒りで覚醒していた。
次の瞬間、一号機がヴッと唸る。機敏なんてものではない。タキオンの動きをトレースしていた。
一号機にはタキオンのシステムをコピーして移植してある。だがそれは、あくまでこれまでソータたちが培った戦闘データを基にした行動パターンを模したものであり、タキオンの独自の動きまでインプットはしていない。
ソータはすべて感覚でタキオンを再現したのだ。
推進器は足りていない。唯一ガンビッドジャケットを背負い、銃弾やミサイルを撃ち、推進剤だって半減しているとはいえ、あのジャケットは重い。その重量さえ感じさせない、残像を残す勢いの挙動。
それを可能にするのがソータの覚醒である。
傷無しだったEタイプに迫る一号機。まるで放たれる電流が、どんな軌道を描くのかすらわかっている動き。ガンビッドから一斉射撃。いや違う。ガンビッドがジャケットから離れた。ソータは一号機を激しく操縦しながら、ガンビッドを同時に操縦し始めたのだ。
『こ、こりゃあ………どうなってやがる!?』
『一号機の動きが、これまでとは明らかに違う!』
驚嘆するハーモンとコウ。
小さくとも密集させることで火力を増すことに専念するソータの挙動は、すでにナンバーズのメインカメラでは捉えることができないだろう。
傷無しだったEタイプの眼球らしき場所にガンビッドのビームを集弾させる。集弾でやっと弾けた眼球らしき球体に、Eタイプは激しく悶えた。より憤怒しソータの一号機を電流で執拗に迎撃するも、間に合わない。
すると傷ありだったEタイプも動き出す。ソータを危険視し、友軍であるはずの隣接しているEタイプごと潰す勢いで火炎弾を吐く。傷無しだったEタイプの角が消滅し───もうすでにソータはそのポイントから移動していた。まるで傷ありだったEタイプが、火炎弾を撃つことを理解していたような機動だった。
たまらず傷ありだったEタイプが電流を放とうとする。
「させるかよお!! 各機、傷ありだった方のEタイプに集中砲火! ソータを援護しろ!」
希望は新たな場所で芽吹いた。
ソータの覚醒という、原作でもそうだったように、流れに添うような形で顕現したそれを、勢いを、止めるわけにはいかない。焼石に水だろうが構わない。タキオンは前進し、傷ありだったEタイプへヘビィガンを連射。俺の指示に従う二から七号機が密集して砲火を浴びせる。
あとは、クスドの指示どおり、整備士の誰かがパワーローダーで出撃し、十数キロ先にある廃コロニーのメインバーニアまで辿り着けるか、なのだが───
『私だって、ソータと気持ちは同じ』
ヘルメットが、少女の声を拾った。
気になって音源を意識で追う。
廃コロニー。八号機───アイリ?
『ずっと悔しかった。なんで私はみんなと同じことができないんだろうって。でも、エー先輩に教わってドローンカメラの操縦士になって、やっとみんなと同じものを見ることができた。でも違った。私だってパイロットになりたかった。それが、やっと夢が叶って───ソータが、私を求めてくれて………やっと、わかった。私はきっと、この時のためにここにいるんだ。みんなに守られてばかりじゃない。今度は私がみんなを守るために」
アイリの声は全員に届いていた。
一号機の俊敏性が、より増す。苛烈さも、冴えさえも。
『ソータは私を守ってくれる。さっき被弾した時なんて、泣きそうな声してたもんね。でも、そうじゃないんだよソータ。私ね、嬉しいんだ。やっとみんなと同じものを見れて、同じ不安を抱えて、同じ緊張を持って、同じ傷を背負えた。さっきの被弾でわかった。怖いけど、嬉しかった。みんなと同じになれたから。そう。嬉しい。今、私とっても嬉しい! ソータ………ソータ! 待っててね。今、私もそっちに行く!!』
八号機の周囲にあったドローンカメラが、一斉に動いた。
それはグラディオスが戦況を把握するために設置したもので、なかにはソータが使う予定のないガンビッドまである。
その数───20機。
増産が間に合ったり、修理したものすべて、アイリが動かした。
俺は絶句せずには、いられなかった。
20機。無人兵器のすべて。
脳内チップを移植する前後に限らず、俺が操縦可能だったドローンカメラおよびガンビッドは4機までだ。そして俺以上の数を操れる人間はグラディオスにはいないはずだった。
5機を超えるとキャパが一気に消耗して、脳が焼けてしまう。
にも関わらず、アイリはなんの異変もなく、変哲もなく、さも当然であるかのように、俺の5倍の数の無人兵器を支配下に置いたのだ。
ガンビッドがビュンと動く。すべてメインバーニアへ。ガンビッドのカメラに侵入。なんと溶接したり。本来導入していないはずの、そこらに転がっていた型落ちしたガリウスの腕の残骸を拾い、ドッキングするとマニュピレータを得て、メインバーニアの修理を独自に始めてしまったのだった。
また、ドローンカメラのすべてが戦線に投入される。その数12機。グラディオスが放出したすべて。Eタイプが放つ電流、火炎弾を華麗に回避し、攻撃を潜り抜けてソータの直掩に入る。
なんと、圧倒的な数をもってして、ソータのダイレクトサポートを開始したのだ。
「ま、まさか………これって!」
俺は、とある可能性に気付いた。すぐにハルモニに脳内チップを介して申請する。
《ハルモニ! ミチザネ隊副隊長権限を行使! アイリ・ナカダが搭乗する八号機のコクピット内の様子を開示! 映像データを見せろ! 早く!》
《イェス。メカニック・エース》
瞬時に脳裏に八号機のコクピット内が投影された。
信じられないことが発生していた。
ソータだけではない。
アイリもまた、覚醒していた。
それもデバフによる負の感情ではない。むしろバフ的な、プラスの感情。ネガティブな部分を跳ね除け、ポジティブなテンションでゾーンに突入。脳の奥底にある道なる領域の鍵穴を破壊して、アイリが本来持っていた───しかし、本編には一切描かれることもなく、設定にはない覚醒を遂げてしまったのだ。
機体の色同様、アイリのマゼンタ色の瞳が、淡い燐光のエフェクトを纏う。
奮撃するソータとは違い、アイリは悠然として、嬉しそうで、楽しそうだった。
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3回目!
ストックが足りませんけど書き続けるので問題ありません!
ソータとアイリ、メイン主人公とヒロインの同時覚醒。この熱い展開が書きたかった!
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