表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/319

反撃のグラディオスB05

 原作では、これからグラディオスがすべてを覆して、絶体絶命のなかでEタイプを凌駕する───というタイミングでコウが死んだ。


 原作は、今とは違って、ソータとアイリは両思いになってもいないし、子供みたいな恋愛もしていない。勘違いの末にすれ違いを繰り返し、いつしかアイリは、よく会いに来てくれるコウとともに過ごした方が楽になると気付いてしまう。


 そんなコウはアイリに懸想していた。アイリの方は恋愛感情ではなくとも、近くにいても不快感のない相手と認識していた。もう少し進めば、アイリはコウへの感情を恋だと認識を改めたかもしれない。


 そして第12話「反撃のグラディオス」のBパート。激しい艦隊戦の最中、廃コロニーを本命にして、Eタイプへ衝突させるという試みを行ったことを察知したのだろう。猛々しい怒りを湛えたEタイプは巨大な顎を開いてグラディオスへ突撃したのだ。


 その時グラディオスはレイライトブラスターを放った直後で、短いスパンで連射できるとはいえ、数秒の時間を要する。その隙を狙われた。


 グラディオスにはアイリがいた。コウはアイリを守ろうとした。


 この時、コウはアイリを愛していたが、その恋が叶わぬことを───悟っていた。


 やはりすれ違いが生じても、アイリの視線は無意識にソータに向かってしまう。近くにいれば追いかけてしまう。その視線を、コウが知らないはずがなかった。


 コウはアイリに振り向いてもらうために、様々な努力をしたのだが、ふたりが培った時間に勝てるはずもなく、悲恋の末に諦めた。第1クールの終盤で。


 コウは廃コロニーに突入し、爆薬を抱えて飛び出した。シドウの制止も聞かず。


 そしてソータに連絡を入れる。「アイリはお前を想っている。俺はその相談を受けただけだ。お前はどう思っているかは知らないが、アイリを悲しませることだけは許さない。向き合えよ。そのための時間を作ってやる。これはたったひとりのちっぽけな男が、心を癒やしてくれた女へ送れる最大にして最後の礼だ。それを彼女に伝えなくてもいい。………やり遂げろよ。ソータ」と言って通信を切り、無防備なEタイプの背後に特攻を仕掛けたのだった。


 ただ、Eタイプも襲い掛かるコウのことを気付いていないわけではなかった。


 無数の触手を飛ばして、コウが駆る四号機をバラバラにした。攻撃はコクピットブロックにも達し、半身が潰れたコウは吐血しながらも、最後の力を振り絞って四号機を加速。爆薬とともにEタイプの背後に突撃に成功したのだった。


 それがコウという、悲しき運命を辿った男の末路。


 愛する女を守り、愛した女の幸せを祈った、男のなかの男。その姿に泣かない者はいない。


 俺だって、コウがそんな思慮深い性格をしているとは思わなかった。


 ソータとアイリの間に割って入ったのは面白くなかったが、その生き様に尊敬の念を覚えた。


 だからこそ、俺が介入したこの世界では生きてほしい。コウを愛し、コウが愛する誰かを見つけて欲しいのだ。


「死なせねぇ………絶対に死なせねぇぞ! コウッ!」


《ハルモニ! 八号機の被弾を分析! 被弾した左腕の残骸から射線軸を計算! 敵の位置を割り出せ!》


《イェス。メカニック・エース》


 口頭入力よりも遥かに早い、脳内チップでの通信でハルモニに指示を出す。俺は脳内チップでコウの四号機の場所を特定。


 ハルモニはすぐにFタイプの予想潜伏先を割り出した。コウは火炎の弾道を目視したのだろう。ハルモニとほぼ同一のルートを飛翔している。


 ならば、俺がやることはひとつ。


 唸るタキオン。四肢に力を溜めて、バネのように解放。全推進器を用いて、目的地まで一直線に移動した。







『アイリ! 無理しないで。もういいから、俺たちに任せて離れるんだ!』


『そんなのできない! これは私にしかできないことなの! やっと私に任せられた重要な仕事なの!』


『そんな仕事知るか! アイリがいなくなる方が、俺にとっては………自分が死ぬことより怖いことなんだよ!』


 スピーカーから聞こえる同僚たちの声。


 コウはパイロットとして、ソータを尊敬していた。普段は羞恥などがあり、絶対に口に出すことはないだけで。


 そしてもうひとり、アイリも異性として気になってはいたが、ソータと離れることなく、どこか夫婦のようなやり取りをするので、早期に諦めがついた。失恋という類ではない。納得した形で、アイリへの諦めがついた。


 だが、今のふたりはなんだ? 特にソータだ。


 見てはいられなかった。第三者が聞けば、ただの痴話喧嘩なのだが、アイリを目で追っていたコウは、ふたりの仲を納得した者として、どうしてもお節介になれずにはいられなかったのだ。


「落ち着け、ソータ。お前、エー先輩から言われたことをもう忘れたのか? 敵がアイリを見なければいいだけのことだろう。お前はもっと派手に動けよ。アイリを狙った敵は、俺がやる。お前はこの現場を動けないなら、ジャケットを脱いだ影響で幾分軽くなった俺の四号機が遊撃に出るのが最適だ。お前の不安は俺が取り除く。勝つためにな!」


 こんな長々と語るつもりはなかった。だが、つい口にしてしまった。言いたかったことのすべてを。


 ソータだけでなくハーモンもコウを止めようと叫ぶ。コウは構わず四号機を飛翔させた。


 八号機を狙った敵の弾道は見えていた。これまでの経験からして、敵が移動しようとも、時間と距離には限りがあることは知っている。


『なにをしているギグス! 勝手に戦線から離れるな! 艦長の指示を待て───』


 シドウが叱責するも、最後までコウが聞くことはなかった。途中で通信を遮断した。


「俺が守るんだ。誰もジグと同じにはさせない! 俺もエー先輩と約束したんだ。守ってみせると!」


 コウが愛した兄のような、悲惨な末路にさせないために。コウは命を賭すと決意する。


 お気楽で、楽観的で、愚か者で、お調子者で、交友関係も広く、しかしアウトローの道に足を踏み外してしまった兄。ジグ・ギグス。親不孝者の代名詞。結局は組織のトカゲの尻尾切りにされて死んだ。殺されたのだ。


 親が不幸になったのは間違いなくジグのせいだが、コウはそれでもジグが好きで、死因を調べて、真実を知った。


 それからだ。誰も死なせたくないと考えるようになったのは。


 この非常時に軍人に志願し、我が儘な性格だったハーモンが破綻し、アンノウンに囲まれて惨殺されるのは目に見えていた。それでもコウは、いつも殴り殴られを繰り返す喧嘩相手だったハーモンの死を回避せんと、パイロットを辞任するよう命じたこともあった。


 コウは本来、とても優しいのだ。不器用なだけで。愛を知っている。


 だからこそ、仲間の危険で我を失ったソータの危うい心境を、少しでも緩和せんと、アイリを狙った敵を倒しに行く。


 自信はあった。タイタンジャケットがなくとも。尊敬する副隊長が交戦した新型だと推測できるが、勝機はあると信じた。


 そして、ついに発見する。


 かなり離れたところに1体の、Fタイプがいた。


「うぉぉおおおおおおおおおおおお!!」


 裂帛の気合い。ライフルを掃射して、八号機を狙撃しようとしたFタイプを阻害。狙撃途中だったFタイプが四号機を迎撃せんと、腕の結合を解き───しかしその時にはもう、四号機はFタイプの懐に潜り込んでいた。


「おおおおおおああああああああ!!」


 ロングソードを一閃。頭から足まで一刀両断する。


「倒せた………俺にも、倒せ………たっ!?」


 ところが、それがブラフで、コウは誘い込まれたのだと知る。


 アンノウンを撃破して油断したコウの眼前に、新たなFタイプがワープして、コクピットに銃口を突きつけていたのだ。アンノウンにこんな知能があっただなんて。侮ってかかったコウの失態が、自分の死を招くことになる。


 所詮はこんなもの。数秒で命が終わると確信したコウは、薄ら笑う。


「………ジグ。俺も、すぐそこに………」


ブクマ、評価、リアクションありがとうございます!

1回目!

というわけでバイバイ、コウ!

次回は7時頃に更新します!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ