反撃のグラディオスB04
Eタイプはもちろん、グラディオスをも上回る大質量の廃コロニー。
廃棄されて久しく稼働した、中破したまま大勢の死体を抱えた墓場のようなそれが、猛然と宇宙空間を突き進む。
廃墟では様々なものが舞い上がり、そこかしこの穴から飛び散っていく。死体や瓦礫、コロニーを構成していたパーツの数々。塵とともに多数の穴から吐き出して、まだ距離があるアンノウンEタイプへと突き進む。
「フェイズ5からフェイズ6に至るまでの時間は………約800秒。廃コロニーはその大きさから、メインバーニアに点火してもそこまで早くは進めない。問題となるのは、この約13分間で、俺があいつを救えるかにかかってることだ」
『メカニック・エース。発言の意図が理解できません』
「理解する必要はねぇ。ハルモニ。ここではなく、廃コロニーを注意して見ておけ。必ず敵襲がある。そのタイミングを俺に教えろ!」
『イェス。メカニック・エース』
タキオンは今、40体を超えるBタイプに包囲された。自ら包囲網に突入したので孤軍奮闘の形になったのだが、今さらBタイプごときで騒ぐ俺たちではない。クスドもまた、俺が包囲されたからといって、ミチザネ隊の誰かに救援を寄越すような、甘っちょろい指揮はしない。俺も事前に通達しておいたし、なによりクスドが俺を信頼してくれていた。
右腕のヒートナイフでBタイプを切り裂き、突き破る。
左腕のヘビィガンでCタイプを撃ち抜く。
ネイキッド状態とはいえ、作中最強の部類にいるオリジナルガリウスのひとつだ。俺という中途半端なパイロットが搭乗しているからといい、その性能で単独行動を可能にしていると言える。
「くっ………」
『エース副隊長、脳内チップのキャパシティ、20パーセントを超えました!』
『エー先輩っ!』
『ダメだ! 誰もポジションを変更することは許さない! エー先輩を信じてほしい。エー先輩なら大丈夫だって。僕だって自分の機体があれば、今すぐにでも助けに行きたいけど、エー先輩はそんなこと望まない! 戦闘を継続。フェイズを死守するんだ!』
軽い頭痛と発熱を覚えると、オペレーターが状態を報せる。途端にヒナが動こうとするが、クスドが阻止。やっぱりクスドはわかっているし、見えている。
劣勢に陥った仲間を信じることがどれだけ困難か。ギリギリを見極める難しさは、クランドでも至難の業だ。しかしクスドは間違えない。俺も、そう信じることにした。
タキオンに脳内チップで指示を出す。目を閉じる。もう眼球から得る視覚的情報は必要としない。神経をタキオンのメインカメラとリンク。深く、より深く機体に潜り込ませる。
ヴッ───とタキオンが唸る。
各部スラスターが稼働。通常の操縦では不可能な挙動。ソータのそれを参考に、インプットした行動パターンを模して加速する。
「っ………あ」
タキオンと接続した意識が薄れかけた。タキオンの推進力はガリウスGの上をいく。ソータの挙動を模せば、Gによって体が潰れそうなくらいの負担を強いた。
ヘビィガンの弾倉が激しく減る。ヒートナイフは1本が折れて、2本目に換装した。
『タキオン、戦線を維持! エース副隊長の脳内チップのキャパシティ、30パーセントを超えますが、交戦時よりアンノウンの数が半減しています! このままいけば40パーセントに到達する前にアンノウンを殲滅可能!』
『よし! フェイズ6発動準備! 八号機、目標に向けて全速力を維持! だが、まだフェイズは残っている。半分も進んでいない。各員、被害を最小限に留めつつ、敵に最大の損害を与えよ!』
フェイズ6こそ、打ち上げ花火が開花する瞬間である。
すでに480秒が経過。残り半分。
雑兵に等しいアンノウンの数もかなり減った。
一挙に包囲したBタイプとCタイプが、なりふり構わずタキオンに押し寄せる。ミツバチがスズメバチを蒸し殺す時と同じ方法だ。いかにタキオンとて、密着されては装甲が高熱に負ける。
だが、接近するならば、こちらの狙いどおりだ。
BタイプとCタイプがタキオンに触れようとする寸前。右腕を突き出したタキオンはその場できりもみ回転する。
「っぅ………残り1本」
『エース副隊長、アンノウンの群れを撃破!』
つう───と鼻から血が垂れる。啜って飲み込んだ。脳内チップの処理に体が悲鳴を上げている証拠だ。ついに頭痛が発生する。
だがタキオンの高速回転によるヒートナイフの斬撃で、残存兵力を一気に消滅させることができた。
ヒートナイフは衝撃に強くはない。何十体というアンノウンを切り裂けるほどの強度もない。すぐに折れてしまい、最後の1本となる。
だが、そんなことは構わない。グラディオスへ向かう敵がいなくなった。本来ならこのまま直掩に入るところ───
『警告! 八号機、狙撃されました!』
「なにっ!?」
確かに俺は、アンノウンがアイリを最大の脅威と断定して、殲滅すべく行動することを阻止せんと動くあいつが犠牲になることを、阻止するつもりだった。
アイリの出撃は原作にない。
原作ではEタイプがグラディオスに襲い掛かるので、それを命懸けで止めようとするのだ。
だが………これは。
『アイリィッ!!』
『だ、大丈夫。まだやれる。私自身に怪我はないから。心配はしなくていいよ』
ソータが悲痛に叫んだ。気絶しなかっただけ評価できる。
八号機は左腕を損傷した。副隊長権限でアイリのバイタルチェックをするが、確かに問題はない。戦闘を継続できる。
ただ、なぜ左腕がいきなり消し飛んだのかが問題だ。
Dタイプを疑うも、タキオンのメインカメラが見逃すはずがない。
残る可能性───長距離攻撃。
「Fタイプだ!」
ゾッとした。Eタイプ2体目の出現よりも恐怖の度合いが強い。
もう何度も体験しているが、未だ慣れないどころか慣れる気配がないし、慣れてはいけない気がする。俺の原作破壊行為によるツケが、俺でなく味方を襲う瞬間を。
Fタイプは昨日倒したばかりの新型だ。両腕がライフルになっていて、合わせると巨大な砲塔となり、長距離攻撃を可能にするのだ。それがアイリの八号機の腕を狙撃した。よくコクピットに被弾しなかったものだ。
展開は原作を逸脱し、全員に平等に襲い掛かる。
考えられる可能性は、あいつだけでなく、アイリの死。
ダメだ。それだけは絶対に回避する。俺の推し活の対象を、こんなところで戦死させてなるものか。
「総員、ビームシールド展開! コクピットを守れ! この際、機体の足が狙われても仕方ない。でもコクピットだけ守れば、あとは俺がどうにでも───」
『お、おい馬鹿やめろ! え、エー先輩、ヤベェっす! コウの野郎、単独で出て行きやがった!』
「………っくそがぁ!」
ハーモンの報告に、俺らしくない悪態をついた。
原作において、この戦いで誰が死ぬのか。
コウである。
この流れはまさしく、敵は違えども、コウが戦死する展開そのものだった。
7回目!
本日もPVが凄まじいことになっています。ありがとうございます!
次回も熱い戦いとなるよう、努力します!
次回の更新は0時頃となります!
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