反撃のグラディオスB01
誰もが固唾を呑んで、その瞬間を待っていた。
必要がないのはわかっているが、つい息を潜めて、身を縮めてしまう。
そしてその瞬間は、一帯が静寂に包まれている一方で、ブリッジでは大声で始まろうとしていた。
「グラディオス、システム起動!」
「システム起動します。各部オンライン。異常無し。レイライトリアクター回転数上昇。臨界到達まで1分」
クランドが艦長席で指示を出す。オペレーターが現状を報告する。クスドは不在となっている副艦長席に座っていた。どの瞬間も見逃さないよう、緊張しながらもモニターをチェックする。
「ドローンカメラからの映像回せ! サーモグラフィー起動!」
「サーモグラフィーに切り替えた映像、来ます。………交戦予想ポイントに熱源無し」
「よし、グラディオス、発進! 微速前進!」
「了解。グラディオス、待避壕を抜けます」
操舵士がグラディオスの全システムがオンラインになったことを確認し、サブスラスターで姿勢制御しながら廃コロニーを脱するように操る。
鈍い音を立てながら、超重量の宇宙戦艦が、ついに廃コロニーから姿を現す。
「レイライトリアクター臨界まで、あと20!」
「艦長! サーモグラフィーに異変発生! 交戦予想ポイントより後方に、多数の熱源発生!」
「来たか。………怯むな! 距離があるなら好都合だ。進路修正! 敵発生ポイントへ!」
「っ………了解! 進路を修正します!」
操舵士は未だかつてないほどに緊張していた。アンノウンの、それも特殊個体を2体も相手にするという異常な戦闘。手に汗握るどころではない。ヘルメットのなかでは汗が若干漂う。それでも強気に出る艦長に応えるため、勝ち筋を見出した子供たちに報いるため、グラディオスの進路を多数の熱源へと向けた。
「各武装オンライン! いつでもいけます!」
「レイライトリアクター臨界まで、5、4、3、2、1、今です!」
「エンジンを炉に直結! 最大船速! 敵陣中央を突破する! クスド式戦術システムとリンク! タイミングを誤るな!」
その瞬間、グラディオスは全速力で加速する。
前方数十キロメートル先では、忌々しい銀色の閃光が散る。
「オペレーションテンハ───フェイズ1開始!」
クスドが叫ぶ。
原作にあるオペレーションテンハに、魔改造に魔改造を重ねた結果、元来のフェイズの倍以上の手数を有し、目標をとことん追い詰め、残存戦力で撃破することを目的とした、最強のプランだ。
漆黒の闇をグラディオスが矢のように突き進む。
「アンノウン出現! Eタイプ、2体ともワープします!」
「よし! 2体とも誘い込めたなら上出来です! 艦長!」
「承知した! この作戦はとにかく速度が重要だ。なにがあっても止まるな! 全砲門開け! 前方のレイライトリアクターも臨界に達しているな? レイライトブラスターを使用せよ! 敵陣が完成する前に、先日の礼をする! アーレスッ!」
『レイライトリアクター、臨界到達! いつでも撃てます!』
「よし! 撃ちぃかたぁ始めぇっ!!」
フェイズ1は最大船速中に、全火器を一斉放射するという、戦力をほぼ失った戦艦にあるまじき、捨て身の一手となった。
艦首のハッチが開き、主砲が露出する。そこから放たれる、Eタイプであろうがダメージを与える高エネルギー砲は、Eタイプ───ではなく、その前に布陣した敵の最前線を焼き尽くし、穴を開けた。その穴がグラディオスの進路となる。
凄まじい衝撃がグラディオスを揺さぶる。これで推進器がどこか壊れていれば、すぐにコントロールを失って、左右どちらかのEタイプに体当たりしていたかもしれない。
「ぬぅぅっ! これしきのことでぇ………!」
どれだけの振動で揺さぶられようが、ブリッジのクルーはシートにしがみ付いた。ベルトをしていても放り出されそうな衝撃だったのだ。
しかし、その根性が功を奏す。
グラディオスはEタイプの間を潜り抜けた。Eタイプはワープ途中で身動きが取れなかったのだ。グラディオスはあえてEタイプを見逃した。ワープホールを消滅させたとしても、直接撃破したわけではない。必ずどこかに現れる。ならば、今ここで倒すべく、あえて手抜いたのだ。
「Eタイプ、双方とも反転を確認! フェイズ2に移行します!」
「了解した! ブースター点火! ガラ空きの背中に、あのコロニーの怨嗟をぶつけてやれ!」
フェイズ2に移る。これは原作にはない攻撃法方。つまり魔改造の末に無理矢理ねじ込んだのだ。
廃コロニーのハンガーで発見した、巨大なブースターは、グラディオスの両舷に設置していた。ただし、前後逆に取り付けている。初手の加速ではグラディオス自体の推進力で事足りたのだ。クランドとクスドは、加速に用いるのではなく、攻撃として用いることにしたのだ。
ブースターが点火すると、両舷から切り離される。システムを書き換えて、ドローンカメラに採用している高性能カメラを機首に設置。臨時のロックオンシステムとする。目標は───反転途中のEタイプ。
追い越してからかなりの距離がある。距離があれば推力が増す。質量で言えばEタイプの半分以下であるが、グラディオスのミサイルよりも火力が上だ。
2機のブースターは猛烈な加速の末、背を向けているEタイプに着弾。龍の頭部を模した背後は、毛髪を思わせる触手で覆われていたが、今の爆発で消し飛び、内部までダメージを与える。
レイライトブラスター以外で初めてとなるEタイプへの有効打。Eタイプは両方とも動きが鈍くなる。
「よし! Eタイプの動きを一時的に封じた!」
「しかし………後方の残存直掩アンノウンが反転、こちらに来ます!」
芳しい進捗に喜ぶクスドに、新たな難題が降り掛かる。
しかし、クランドは冷静だ。
「面舵! リニアキャノン1番で迎撃!」
「了解! おぉもぉぉおおかぁじ!」
グラディオスは右へと進路を取る。直掩アンノウン、BタイプやCタイプがグラディオスへと迫る。ここは原作どおり。
対するグラディオスは、右のリニアキャノンで狙撃を開始。アンノウンの数を減らす───違う。注目を集めるのだ。
撃たれつつも怯むことなく進むアンノウンの群れ。すでにEタイプを抜け、グラディオスとの距離も2割を切っていた。その数は150を超える。いよいよ敵艦隊も全戦力を投入した証だ。
「まだだ。まだ引きつけろ!」
150のアンノウンは大小あれど、そんな数に包囲されては、いかに最新鋭艦であろうがひとたまりもない。
それでもクランドは忍耐強く、タイミングを待った。
全クルーが浅くなる呼吸で緊張を増すなか、ついにオペレーターが「グラディオスとの距離、半分を切ります!」と叫んだ、次の瞬間。
「フェイズ3、いけます!」
プレッシャーに苛まれていても、強くなったクスドが叫ぶ。
「よし! フェイズ3始動! 本隊を動かせっ!」
それは、待望の瞬間であった。
固唾を呑み、息を潜めて待っていたのは、グラディオスだけではない。
別働隊がいた。それを本隊とした。
原作どおり、グラディオスは旗艦にして囮だったのだ。
次回は15時に更新します!
こういう艦隊戦が書いてみたかったのです。でも勉強不足が否めません。もっと激しく書きたかったです。次回はもっと激しくします!
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