反撃のグラディオスA08
思わぬ拾い物をした甲斐あって、帰り道は死体蔓延る地獄を戻らずに済んだ。
パワーローダー3機がエングレルファクトリー社の工場から、発見した武装を取り出し、内ではなく外からグラディオスへ運搬するために、各機がスラスターとアンカーを使って姿勢制御を行い、港の外側から搬入する手筈となっていた。
ちなみにパワーローダーを操縦する班のコールサインは「チャーリー」だ。アルファ、ブラボーと続けばそりゃチャーリーだよな。デルタはいないけど。
俺は最後尾のチャーリー3が操縦するパワーローダーの上にいた。全機、腕に例の装備を固定しているのだが、どうしても片側が見えづらくなる。特に最後尾なんて振り回されてしまうし、難易度も上がる。俺はその補助をしていた。脳内チップを駆使して空間認識能力を上げ、計算したタイミングを伝える。
ただ、それもほぼ終わりだ。すでに港の出入り口に対し、垂直に進むだけとなっている。腕がいい連中が揃っていると、案内も楽で済む。
「………ん?」
その時だ。
あとは呆けていても、3機が仕事を済ませるので、横を見た。
このコロニーからでも、地球は見える。
近すぎず、遠すぎない場所にこのコロニーがある。一望する地球は、大きくもないが小さくもない。
その地球で、チカッとなにかが光った───気がした。
『どうしたエース。なにか見えたか?』
「………なんか、妙なものが」
『妙なもの? ………ちょっと気になるな。こちらチャーリー3。エース副隊長が目視でなにかを察知。あとはこの荷物を運ぶだけだろ。俺はエースと、その正体を探る。いいか?』
『チャーリー1、了解』
『チャーリー2、了解。この装備はしっかり届ける。アンノウンだったらヤベェしな。こっちは気にすんな』
2機の承諾を得て、チャーリー3は腕で支えていた装備を離して2機に託す。スラスターを噴いて急制動をかけると、反転して元のポジションに戻ってくれた。
『どこだ? エース』
「すみまわん。イワンさん。………ほら、あそこです」
『あそこって………え、地球か?』
「はい。ほら、なんか光ってません? あ、消えた」
『………一瞬しか見えなかったけど、なんかオレンジ色に光ってたな』
チャーリー3ことイワンも、同じ光を見たようだ。
「………敵襲………でしょうか?」
『可能性としちゃ、それも考えられる………って、そんなわけあるかよ。どんだけ距離があると思ってんだ。地球でなにか光ったからって、こっちから目視できるなんて………そんなことあるか? それに、場所が場所だ。あれって多分………イタリア辺りじゃないか? イタリアにも連合軍の支部があったけど、もうかなり前に放棄されたって話だ。ドイツに避難してるはずだぜ』
地球から星の輝きを可視することはできるが、宇宙からでは太陽の光があるので妨げとなり、見えないケースがあるとのこと。今回もそうなのかもしれない。だが、だとしたらあの光はなんだったんだ?
『宇宙にゃ電磁波が飛び交ってるし、俺らの脳になんらかの作用があるって、どこかで聞いたことがあるぜ。特にお前なんて脳内チップがあるから、電磁波を受けやすいのかもな。気になるっちゃ気になるけど、あれは敵襲じゃないだろ。戻ろうぜ』
パワーローダーが推進して港に潜る。
俺は宇宙に関するオカルト論として処理する───つもりにはなれなかった。
《ハルモニ》
《イェス。メカニック・エース》
《今の光の場所、イタリアのどの辺りだ?》
《ローマ支部跡地辺りかと思われます》
ローマねぇ。原作では触れられていない地域だ。
この世界の歴史では、地球は4割ほどが壊滅的状況に晒されていて、人々は逃げるか死ぬしかなかった。不定期で襲来するアンノウンの脅威から全人類を防護できるほど連合軍は有能ではない。いや、アンノウンが未知数すぎたのもある。
世界各国の主要都市には巨大な連合軍の施設がある。その敷設のなかにアンノウンを通さない結界のような、つまるところバリアを設置したのだが、そのなかに入れる人間は限られていた。
まるで世紀末の世界だ。限られた範囲でしか張れないバリア。バリアを失えば壊滅は必須。そこで選ばれた人間は途端に立場を失い、あらゆる手段で国境を超えてどこかの支部に流浪するしかない。
溢れかえる難民。連合軍はアンノウン対策で躍起になるばかりで、難民を保護しようとしない。非人道的ではあるが、それをする余裕がないとも言える。逆に難民を見捨てすぎて、バリアのなかで人手不足になった支部があるとかないとか。防壁があっても生産性が無ければ意味がない。それで壊滅したケースがあると聞く。
まぁ、それを憂いていても仕方がない。俺たちもまた、生きるか死ぬかの瀬戸際だ。誰かに構っている暇などないのだ。
とりあえず、ローマ支部跡地でなにかあったことだけは記憶しておこう。
この戦いに勝つことができれば、グラディオスはドイツへ降下する。ドイツとイタリアなら、ガリウスで飛べる。特にタキオンならそうかからない。
『こちらチャーリー1。チャーリー3、エース副隊長へ。おやっさんに例の装備を見せたら飛び上がったぞ。早速起動実験をするらしい。タキオンに戻ってくれ。副隊長』
『こちらチャーリー3。了解だ。副隊長殿を護送する。いやぁ、お前も大変だねぇエース。いつぞやのオーバーワークを思い出すよ』
「あの時に比べれば、こんなのどうってこともないですよ」
『言うねぇ』
そう。どうということはない。
勝つための戦いだ。なら、いつもと変わらない。
クスドとクランドも、オペレーションテンハをより魔改造している頃だろう。その時、俺もパイロットとしてやっと貢献できるのだ。名もなき整備士Aだった男が。
なら、とことんやってやる。俺に限界なんてないって見せてやる。………口にすれば、きっとカイドウ辺りが泣きながら「やめてくれ」と懇願するだろうから、絶対に言葉にしないと決めた。
作業は数時間も続いた。
長時間働ける者などいない。集中力は持続して30分が限界と言われている。
屈強にして優秀な精鋭を揃えたグラディオスクルーは、そんな集中力をゾーンに突入させることで連続で発生させることができる。アドレナリンの過剰分泌による作用かもしれないが、ローテーションを組んで仮眠を取ることで、かなり困難な作業の進捗を滞ることなく進めた。
廃コロニーのハンガーから運んだ外付けブースターも、グラディオスの両舷に設置が完了している。
ハンガーでの整備と修理を終えた機体も、次々と港に降ろされた。
すべての準備が整うまで、あと1時間もないだろう。
始まるのだ。第1クールの最後の戦いが。
そんな時、クランドがクルーに招集をかけた。ハンガーに集まれとのこと。
タキオンに再び搭乗し、整備士たちの力を借りて、このコロニーから拝借した装備を強引にジャケット化した俺は、静かに息を吐き、始まる演説に向けてタキオンの最終的な調整を終え、コクピットから降りた。
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