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反撃のグラディオスA06

 クランド指導の下、クスド考案のオペレーションテンハがより凶悪に魔改造されていく。


 念には念を入れると豪語するだけある。現在、手元にあるすべてを惜しみなく動員する姿勢。二段構えなんてものではない。もう五段構えくらい講じてしまった。


「………すごい。これなら、Bプラス判定になるかも! エー先輩!」


「もうやってるよ。待ってな」


 俺は脳内チップを介して、シミュレーションルームのメインコンソールにアクセスしている。


 オペレーションテンハ改として、条件をさらに付随してシミュレーション回収。数秒で簡易的ではあるが結果が出る。


「………おお」


「どうでした?」


「Bプラスじゃない、なぁ」


「くっ。まだB判定ですか」


「違う。Aマイナス判定。やったな」


「Aマイナス!?」


 クスドの声が、また裏返る。クランドは薄く笑う。オペレーターたちは驚愕して、つい振り返った。


「勝ち筋が見えてきたな」


 クランドの表情が、かつてないほど勇猛になる。


 そりゃあんたさん、原作のオペレーションテンハよりも凶悪な指針で「アンノウン絶対ぶち殺す練度」を増していけば、Aマイナス判定くらいにはなりますとも。


 グラディオスに搭載しようとしている外付けのブースターを、推進以外の目的で使うとは誰も考えないもんな。


 いや、それ以外にも判定を増した要因がある。ブースターの隣にあった、ミサイルポッドとか。本当に善戦基地だったのだな。


「宝の山ですね。このコロニー」


 嬉しそうに言うクスド。可愛い笑顔だけど、内容はアンノウンを絶対にぶち殺すためだというのだから、ちょっと怖くなってきた。


「ただぶつけるのでは、もったいない気がしてきたな。もっと有効性を上げるとしよう」


 クランドも乗り気だ。数時間前のミーティングでは覇気のない表情をしていたくせに。意気揚々としている。ちょっと怖い。正気を疑う。


「ええと………これ以上ここにいても仕方ない気がします。艦長、あとはハルモニを使ってシミュレーションの判定をしてもらってください」


「ああ、きみも忙しかったのだったな。呼び出して済まなかった。タキオンの調整に行くのか?」


「いえ。それは終わってますし、あとはおやっさ………主任に任せます。俺は一度外に出て、探索班に加わってコロニーになにがあるのかこの目で見てきます。予想外の掘り出し物があるかもしれませんし」


「そうか。了解した。なにか発見したら伝えてほしい。私たちはギリギリまで策を練る」


「お気を付けて。エー先輩」


 クランドは自慢の紅茶をクスドに振る舞い、俺を見送った。


 敬礼して踵を返すと「あ、冷却剤を発見しました」とか「誘導弾の弾頭にしよう」とか聞こえる。グラディオスのミサイルを発射するためのハッチやシステムは、未だ故障しているはずだ。ガリウスに搭載するのか。


 ミサイルポッドを多数積んだジャケットか。ヘッジホッグジャケットとかできそうだな。


 ブリッジを出て更衣室へ。また長い道のりを歩き、ノーマルスーツに着替えた。ソータたちはもういなかった。


 ちなみに俺のノーマルスーツは、正式にタキオンを受領したこともあり、パイロット仕様に変更となった。ソータたちとお揃いだ。この後でアイリにも支給される。


 ノーマルスーツを着用するとハンガーへ。ハンガーでは機体の修理と並行して、正面のハッチが解放されて探索班が出入りしている。俺はそのひとりに声をかけて、パワーローダーの上に乗せてもらった。


『振り落とされんなよ、エース。命綱をもう一回確認しとけ』


「わかってますって。俺も学生だった頃はコロニーの外で実習を受ける機会がありますし、一応慣れてますよ。………フックよし。ベルトよし。酸素よし。準備完了です」


『よっしゃ。じゃあ、目的地まで一直線で飛ぶからな。しっかり掴まってな』


 整備士がパワーローダーを出す。


 待避壕にしている港は原型を留めておらず、破損した壁の向こうからコロニーの地下に潜れた。パワーローダーの上に乗っても易々と通れる天井の高さだった。


「けど、俺にとっちゃ………実は初めて外に出るんだよなぁ」


 エース・ノギではなく、前世の人格たる小此木(おこのぎ)瑛亮(えいすけ)としては、初めてとなる宇宙空間の滞在だ。コロニーや艦の外とは、また違う風景だ。解放的という表現を通り越し、深海を思わせる漆黒。恐怖で手先が震える。


 そんな自分を鼓舞すると、すぐに廃コロニーの内部にパワーローダーが滑り込む。


「目的地は武器庫でしたっけ?」


『おうよ。サフラビオロスとはまた違うハンガーだ。その規模は4倍とか言ってたな。戦闘用に改造されたコロニーだし、そこは頷けるわな。地上もそういった工場とかがいっぱいあるぜ。その工場にも手を伸ばして、探索してるって話だ。だが、壊れ方が酷いし、地上の工場にゃそういった希望は持てないだろうがな』


 サフラビオロスは敵襲が頻繁に発生しないことから、戦闘力はこのコロニーの3割以下で、地上は学園や会社があり、普通に人間が暮らしていた安住の地だったというわけか。


『お、着いたぜ。ここからは自由にしていいとさ。ただし、奥にゃひとりで行くことは禁ずる。砲雷科の連中が探索してるしな。俺らは俺らで、火事場泥棒の仕事をするとしようぜ』


「はい。ありがとうございました。帰りもお願いします」


『おうよ。気を付けてな』


 パワーローダーを操縦する整備士は、俺を下ろすと、積荷をまとめたポイントへ向かっていく。まだ物資運搬の途中だったのだ。


「………で、これが件のブースターと」


 このハンガーは、とにかく広い。端から端まで150メートル以上はある。なんていったって宇宙戦艦に外付けするブースターなんぞを製造してしまえるほどだもんな。


「………いや、これは製造されたのは地球か。マスドライバーとかで打ち上げられるにしろ、メインスラスターとかじゃ推進力が足りない場合があるから………そっか。じゃあこれは宇宙戦艦の補助ロケットみたいなものだったのか。でもそうすると大気圏内で切り離され………いや、そうでもない? うーん。まぁいいか。ここで考えても仕方ない」


 理解できないことをいつまでも思案するべきではない。時間は無限ではないのだ。


  ブースターの横へと跳躍する。とはいえ、100メートル以上もあるブースターだ。端から端まで移動するのに苦労する。


 数分を要して、やっと次の武装を発見した。大量のミサイルポッドだ。


「お疲れ様でーす。エースでーす」


『おお、エース』


『こんなところにわざわざ出向くのが副隊長の仕事ってかぁ?』


『まーたお前、過労で倒れたいのかよ』


「今の俺は新参謀殿の小間使いみたいなもんですよ。補佐だなんて、ただの肩書きです。実際に見てみないと理解できないこともありますし。………で、なんなんです? このミサイルポッド。なにかわかりかした?」


 艦長と参謀が怪しい笑みを浮かべていた原因のひとつを、やっとこの目で見ることができた。


 やはりどれもマイクロミサイルを発射するためのものらしい。


 調べていた整備士たちの隣に並ぶ。


『調べなくともわかるぜ。これ、ガリウスDに配備されてた型落ちのミサイルポッドだ。もう製造されてねぇから、お前が見てもわからねぇはずだよ』


「へぇ。そんな前の。………撃てるんですか?」


『ミサイルはあったぜ。システムも異常無し。ガリウスGにもちょっとした改造をすれば付けられるだろ。………っとぉ、なんだぁ?』


 その時だ。ヘルメットに通信が入る。俺と整備士たちは、その声に耳を立てた。


『大変………このコロニー………ヤベェ………くってた!』


『聞こえねえよ。………おい。なんだって? 今どこにいる?』


『いいから………来て………し砲………艦長に、繋げ………』


『かなり離れてるから電波が入りにくいのか。つまり………地上班が、なんか見つけたって騒いでやがんのか』


 地面と鉄に阻まれてしまっては、通信も聞こえにくくなるか。


 そこで俺は、数人の整備士と、護衛に数人の砲雷科の人間に同行してもらい、廃コロニーの地上へ上がることにした。


リアクションありがとうございます!


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