反撃のグラディオスA05
ソータとアイリによるヨシヨシプレイは、たった3分で終わった。
俺としてはもう10分ほど堪能してから、ソータとアイリにヨシヨシプレイのお返しをしてあげたかったのだが、そうはいかなかった。
『メカニック・エース。キャプテン・クランドから出頭命令です。ただちにブリッジへ向かってください』
無機質で抑揚のないハルモニの機械音声が告げる。本当にもう、無情なんだから。
「大変だね。副隊長も」
「そういうのも仕事だからな。じゃ、ふたりとも。またあとでな」
ゆえにひとり数秒。ソータとアイリの頭や頬や顎を撫でて、ひとまず納得したところで更衣室を出た。
ブリッジまでのルートはいくつかあるが、先の戦闘でショートカットできる道が隔壁で閉ざされている。迂回しながら進んだ。
ブリッジに到着する。そこにいたのはクランドと、参謀に任命されたクスド。アーレスとその部下である砲術長。オペレーターの女性たち。
「エース・ノギ、入ります。お呼びでしょうか。艦長」
「うむ。ご苦労。まずは見てほしいものがある。ドローンカメラの哨戒データだ。………が、その前にひとつ聞きたいことがある」
クスドを紹介しただけでなく、育成したのは俺だ。もう俺の肩書きが増えて困る。元整備士見習い。パイロット。サブリーダー。そして参謀補佐。え、なにこれ。すごい経歴だよな。給料増えそう。
「エース・ノギ。きみはサーモグラフィーで敵の位置………いや、ワープするアンノウンの場所を把握したな。一見無意味なビームの乱射かと思えば、ビームが触れた場所に銀色の光が散った。それでワープを阻害した。違うかね?」
ヤベェ。最初の掟破りは色々あって有耶無耶にできたけど、通信でみんなに叫んでしまったから、ついにクランドにバレた。
作中では語られなかったし、視聴者の考察で得た発想がうまくいっただけ。
さて、これをどう説明したものか。いや、いっそのことすべてあのひとに、またすべて押しつけてしまおうか。
「ええ。まぁ、そんなところです。詳しくは知らないんですけど」
「前代未聞だ。いったい、どこでそんな技術を知った?」
「以前、ケイスマン教授がそれとなく言っていたことを覚えていたんです」
「ケイスマン教授が?」
「はい。あれはクスドたちが入ってくる前、俺がまだパイロット科にいた頃なんですけど。ケイスマン教授のカレッジでお世話になってた頃、ふたりきりで話す機会がありまして。その時にケイスマン教授が、未発表の論文について俺に教えてくれたんですよ。アンノウンは熱量がすべてだから、ワープの途中で過剰な熱を与えると、なんか維持できなくなって崩壊するとか………結局、その論文が発表されることは、なかったんですけどね」
「ふむ。確かに。彼の御仁亡き今、そのことを確かめる術は無いか」
危ねえ危ねえ。うまく誤魔化せた。死人に口なしってね。
「了解した。それは今となっては、きみになにかの責任を問おうとはしないし、今後も有り得ないだろう。むしろ無二のアドバンテージとなる。………本題に戻そう。ドローンカメラの哨戒データだ。ドローンカメラには新たにサーモグラフィーを搭載している。宇宙空間は極度に冷えていて、まったく作用しない。だが、アンノウンがワープするなら………一気に高熱が発生する。そうだな?」
「はい。俺はそれを知り、先程の戦闘でもワープの阻害に専念しました。前もってそれを知らなければ、タキオンとて袋にされて焼け落ちていたでしょうね」
「無茶をする。あれはヒヤヒヤしたぞ。………ならば、ドローンカメラはこのまま全機、デブリ帯を移動させる。熱源を報せるためにな。次にいこう。クスド」
「はい。艦長」
クスドは戦闘アドバイザーになり、ある程度の権限を得た。原作でもそうだった。腕の端末を操り、メインモニターにアクセスしているのが証左だ。表示されるのは待避壕にしている廃コロニーだった。
「現在、このコロニーの推進器を修理しております。廃棄されてからそれなりの年月が経過しておりますが、幸いなことに簡易的な修理で済むようです。現在、グラディオスがいるポイントというのがアンノウンが頻繁に発生する区域であることから、このコロニーから再利用可能な資源を回収できずにいたのも大きい。燃料もそのまま残っています。劣化も少なく、まだ使えるようです」
いつもビクビクして、ハーモンの庇護下に入っていた金魚の糞みたいな男は、もういない。
クスドは胸を張り、クランドと俺に説明をしていた。なんだか嬉しくなる。
「なにが残ってたんだ?」
「残留物は主に推進剤です。コロニーは宇宙を航行するのではなく、留まることが多いですから、滅多にバーニアを使うこともなく、姿勢制御のスラスターを使いますし。このコロニーも例外ではなかったようです。そして、やはりありました。サフラビオロスにもあったものです。これです」
メインモニターに、ハンガーと思しき場所がピックアップされる。
「う………今じゃない時に見たら、吐いたかも」
「先輩にとっては因縁がありそうなものですが、今はどうか我慢してください」
本編のオペレーションテンハは、廃コロニーをEタイプにぶつけた際、大規模な爆発が生じていたが、明確な理由は描写がなかった。
けれども、今ならその理由がわかる。
サフラビオロスを破壊した爆薬を搭載したコンテナがあったのだ。それも5つほど。なるほど。それをぶつければEタイプであろうと無事では済まない。
「このコロニーは元からアンノウンへの地球防衛のための最前線基地のような役割をしていたようです。放棄される寸前まで持ち出されなかった爆薬や装備が、そのまま残っていました」
メインモニターを動かして、ハンガーのなかを探るクスド。どうやら小型の、調査用のドローンを飛ばしているようで、クスドの操縦に従って廃コロニーのなかを進んだ。クスドもパイロット科であり、予備パイロットだったのだ。シミュレーションとはいえガリウスの操縦はできる。ガリウスの操縦と比較すればドローンの操縦など容易い。
「なかなか興味深いですね」
「そうだな。例えば………ああ、そうだ。それを拡大してくれ」
指で顎を撫でるクランド。注目したのは艦に搭載するブースターであった。100メートルほどある。それがふたつ。
ここは最前線基地であったと判明した今、そういうもじょがあっても不思議ではない。グラディオスサイズの戦艦を悠々と抱え込んでしまえる広域もある。100メートルほどの外付けブースターがあっても、然程邪魔にはなっていない。
「これを………グラディオスに搭載できないだろうか」
「え、これをですか!?」
クスドの声が裏返る。俺も目を剥いた。こんな提案は本編にない。派生したif展開のオリジナルルートで、クランドはより過激な発想を得たというのか。
「………だいぶ型式は古そうですけど、グラディオスに一致しますかね? そもそも、グラディオスの推進器は無事ですし、取り付けて加速する必要もないのでは?」
「いや、念には念を入れる。クスド・スクド。本艦の戦術アドバイザーを担いたいのだろう? であるならば、相手がしてほしくないことを徹底的に探り取り入れるのも、きみの仕事だ。私から学ぶといい。いいかね。あのブースターはだな───」
やっぱり、クランドは優れた艦長だ。
ミーティングでは死人みたいに青褪めていたのに、希望を見出した途端に本調子に戻った。そして後任となり得る人材の教育に手抜かりはしない。
クスドはクランドの提案に目を輝かせていた。俺も驚く。俺とクスドも考えもしなかった戦術だ。それを数秒で考案したクランドの発想力は見事である。
それがこの第1クールの最終回で、多くのファンの心を掴んだんだな。
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