反撃のグラディオスA04
「止めなくていいのかぁ?」
「うーん。あいつらのことだし、本当はゆっくりと話し合わせたいんですけどねぇ。でも、あのままじゃソータがクスドを殴りに行くかもしれないしなぁ。やっぱり止めてきます」
「あいよぉ。大変だねぇ、副隊長」
「いつものことですよ。適材適所ってね」
カイドウに見送られ、俺はタキオンから離れて、ナンバーズを中継して八号機の足元を目指す。
いつも以上に活気付くハンガーの空気に当てられたか、ソータは憤り、嘆き、興奮して収集がつかなくなっていた。
グラディオスで軍人に志願した俺たち学徒兵は、大人よりも昂る精神の制御の方法を知らないから、当初はよく喧嘩が勃発しては大人に叱られ、宥められた。そうやって成長し、精神を落ち着ける術を知るのだ。
だから、むしろソータの場合は遅すぎたと言える。
あんな焦り方をするのは見たことがない。けど、仕方ないことなんだよな。
なんたって、想い人が正式にパイロットととなり、同じ戦場に出るというのだから。
ソータは初めて焦り、アイリを阻止しようとするのだけど、戦い以外は基本的にポンコツなので、的確な言葉が見つからない。
「はーい、そこまでだよソータ。副隊長命令。今すぐお黙り」
「けど、エー先輩っ!」
「うっせぇな。キスすんぞ?」
「いいよキスくらい! それでアイリが出ずに済むなら、何百回でもキスすればいいよ!」
「ダメだこりゃ。特効薬が効きすぎたな」
大声で同性同士のキスを容認するから、みんながギョッとして注目してしまう。
ほら見たことか。俺とキスをするかもしれないと聞いたヒナたちが、厳しい視線を突きつけてる。
ここまで暴走すると、もう強制終了しかない。
「とりあえずお前ら、一旦こっちおいで」
アイリの腕を掴んでハンガーを出る。アイリを餌にしたから、ソータもついてくる。
移動した先は、ソータとアイリが両思いになった記念すべき更衣室だった。パイロット用なので、ひとの出入りも少ない。
そこで俺とアイリは、ソータと向かい合う。
「とりあえずアイリ。ここなら人目がないから。ソータを黙らせてきな」
「エー先輩がいるじゃないですか」
「刺激控えめなのでいいから。ほら、抱っことかでいいよ。やりな」
「もう」
とてもではないが、後輩に強要する内容ではないな。反省するが後悔はない。
アイリは俺から離れて、ソータを抱きかかえる。身長差があるが、ベンチに座らせると、ソータの頭を抱きしめてた。効果は抜群。ソータはすぐ黙る。まるで幼児のよう。可愛い。
「んで? アイリ。お前さぁ。ソータがこんだけお前に依存するようになるなんて………いったい、どんなプレイしたんだよ」
「セクハラですよエー先輩っ」
「まぁ内容までは言わなくていいけどさぁ。やり過ぎってこと。このままじゃソータ、八号機が擦り傷ひとつ付くだけで気絶するぞ?」
「それは………そうかもしれませんけど」
アイリは胸に顔を埋めるソータをいつまでもヨシヨシしながら、俺の指摘にわずかながら後悔していた。つまり後悔するくらい、激しい夜の運動会をしたと。途中からアイリが主導権握ってそう。
うわぁ、どうしよう。回収した映像記録を腕の端末に送信して、脳内で再生してぇ。今すぐにでも見てみたい。
身勝手な盗撮魔の主張だとは認識しているけど、仕方ないじゃないか。推しキャラ同士のファイト一発なんざ、これまで数話くらいは書いたんだ。人気は出ないし腐女子の皆様には「必死でキモすぎ」と酷評をいただいたけど。
「ソータもだ。アイリは前々からパイロット志望だっただろ。それがなんだよ。いきなり過保護になっちまって。そりゃあ、お前の気持ちもわからなくもないよ? せっかく両想いになったんだもんな。そんな相手が、グラディオスより危険な場所にいて、それも大役を任せられた。………はっきり言って、理不尽だし、そんなことを考えるクスドも面白くないだろう。でもな、アイリだってグラディオスのクルーなんだぜ? 気持ちはみんなと同じだ。ソータがアイリを守りたいって思うように、アイリだってソータを守りたいんだ」
「………わかるよ。わかってる。けど………」
「うん。気持ちの整理もつかないよな。アイリがもし、お前と同じ立場だったら………さっきのソータみたく、お前を止めるだろうし。だからソータ。ここで決意しな。みんなを守るって。アイリも、パイロットも、仲間も、グラディオスも。損害を無くすつもりで挑もう。俺は最初からそうしてる。なーに。俺とお前が組んで、最前線に立てば、敵の注目だって俺らに向かうだろ。ソータ。俺とふたりで囮になろう。最強のデコイだ。ま、そのデコイも主力として体張って、敵を倒し続けるんだけどな」
「………俺が、みんなを守る………」
「俺たちならできるよ。俺だってアイリが傷つくところなんて見たくない。な? アンノウンなんかにアイリを発見させる暇を与えなければいいんだ。そうすりゃ、敵はアイリに寄り付かない。それが俺たちにできることだ。そう思わないか?」
「………うん。思う」
よし。ソータもいい感じに修正できた。
ある意味、本編で行ったユリンの悪質な洗脳が役に立つ。はっきりとした口調と、具体的に、そしてゆっくりとした語調で擦り込んでいく。内容はまったく異なる。ネガティブではなくポジティブに。
アイリの胸に埋めていた顔が離れ、俺を見上げるその瞳に、はっきりとした強い闘志が宿っていた。
「そうだね。エー先輩の言うとおりだ。俺がアイリを、みんなを守ればよかったんだ。最初から敵を俺に引きつければ、アンノウンはアイリを見ない。これがアイリを守れる方法だったんだね。ありがと、エー先輩。少しだけ楽になった」
「それはよかった。じゃ、時間になるまでアイリにヨシヨシしてもらいな。あ、交代制でヨシヨシするのもいいだろ。アイリにとって初陣だ。緊張してたり、不安に思ってることだってあるんだ。………てか、数時間前の俺も、初陣だったんだよなぁ。ハハハ。今思い出すと震えてくるよ」
アイリのことを言えないな。
初陣にして新型2体を倒したとあれば、連合軍史はじまって以来の快挙だが、思い出すと怖くて震えてくる。
「あ、じゃあこっち来ていいよエー先輩」
「どうぞ。エー先輩」
「え、なになに? なにしてくれ………いやこれ、なに?」
俺はソータとアイリに腕を引かれ、ベンチに腰を下ろした。ふたりに挟まれている。それからソータとアイリに頭を撫でられた。
「ヨシヨシ」
「ヨシヨシ」
なんだこのプレイ。可愛すぎるだろ。
以前、ヒナの発言のせいで「赤ちゃんプレイ風オイルエステ」なる、わけのわからない事実無根の遺憾でしかない噂が流れたが、今のこれは卑猥な部分を切除しただけの、ただの慰め。
最推しキャラふたりによるヨシヨシは慰められるというか、ふたりの可愛さにただただ悶えるしかなかった。
うん。いつもだけど、今日は特に何度も思わされるね。
推し活最高っ。生きててよかった。
しかし、このコミュニケーションが発端となってかは不明だが、数時間後に行われるオペレーションテンハで、意外な結果となることを、この時の俺は知らなかった。
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