反撃のグラディオスA03
「ちったぁ、落ち着けってんだクランド。こんなの、しょっちゅうだったろうが。考えてもみな? いつもやらかすエースが育てた参謀候補だぜ? 俺らにない観点から見て、思いつきもしない作戦を立案するなんざ、そんなおかしいことでもねぇだろうが」
「お、落ち着いていられるかっ! Eタイプ1体に、どれだけの連合艦隊が沈められたと思っている!? それが2体もいて、こちらは単独でありながら、まともに戦えもしないのにBランクだぞ!? 本部の戦闘アドバイザーであってもこれはFランクしか出せず、匙を投げるに決まっている! なのに………エース・ノギと、クスド・スクドは………Bランク………本当に、どうなっているんだ………っ!?」
「まぁまぁ、まずは落ち着いてください。どうぞ、お水です。………ああ、済まないね、エースくん。クスドくん。艦長もお疲れなんだ。この3時間、艦長は葛藤なされていただろうからね。錯乱してしまうのも当然なんだよ。さぁ、聞かせてもらいたい。我々、グラディオスの重鎮でも考えもしなかったオペレーションテンハの具体を。それから、クスドくん。Bランクであっても構わない。あれだけの敵だ。むしろBランクを出せる方が奇跡なんだよ。犠牲が出るのは承知している。その時、きみに責任を問わないからね。我々大人が子供を守るべきなのだから」
暴れ出そうとするクランドを拘束するカイドウとアーレス。ふたりとも筋力で優っているから簡単に四肢拘束できていた。
「アーレスさんの言うとおりだ。クスド、遠慮するな。全力でお前の考えをぶちかましてやれ。希望を見せてくれ」
「お任せください。僕、やっとわかったんです。きっと僕は、この時のためにここにいたんだって」
当たってるよ。
そしてもうひとつ加えるなら、俺もこの時のためにクスドを育てた。面白い成長をして、俺たちに応えてくれた。自慢の後輩だ。
「では、オペレーションテンハの具体をご説明します。以前、僕がEタイプ1体に対し、Aランクを出せた時の作戦はこうです」
クスドからのアイコンタクト。脳内チップを介して、ハルモニに作らせたシミュレーション案をモニターに表示する。
「ご覧ください。戦闘が予想される場所に、現在待避壕にしている廃コロニーがあります。僕はこのコロニーを利用して、グラディオスをあえて囮にすることでアンノウンの背後を取り、廃コロニーに潜伏していたガリウスを総動員し強襲。また廃コロニーを動かしてEタイプにぶつけることでダメージを与えると条件を付け、Aランクを得ました」
その説明どおりに図を動かす。
廃コロニーは大破こそしているが、推進器の類は壊れていなかった。そして質量で言えばEタイプよりも上である。簡単に燃やせないし、内部をいじることで爆発させることもできるだろう。
それが原作のオペレーションテンハの具体だ。
グラディオスを天へ昇らせ突き破る。ゆえに天破。
この作戦に、クランドの指揮が合わさって、逆転劇を引き起こす。土壇場のどんでん返しは見物で、それが多くのファンの心を掴んだ。
絶望を希望へ。そのためのすべてがここに詰まっている。
「しかし───今回はEタイプが2体います。前作戦だと1体しか仕留められず、もう1体をどうしても討伐できません。ゆえに、誘い込むことにしました」
本番が始まる。
クスドからのアイコンタクトがなくとも、次の図へと移行。
これは驚いたね。
俺が使っているハルモニに計算させたくらいだ。
「お、ぉおおっ!?」
「い、いや、これは………」
「可能なのか!?」
「それ以前に、Eタイプが………なんてことだ」
次のページの具体を読んだクルーたちは、驚愕を隠しきれていない。
モニターにはオペレーションテンハでの動線が描かれている。次のページでもそうだ。前作戦からの続きである。
学徒兵は動線だけ見ても理解できない。よってクスドは、とどめをさすばかりに簡潔に改善案を提示した。
「討伐できなかったEタイプを、反転したグラディオスごと………地球に降下させます」
これにはクランドも言葉を失った。
けれども、もう暴れもしないし、正気の是非を問わない。
まだなにも喋らないが、その瞳にいつもの眼光が宿った。
オペレーションテンハに要する時間は長い。正直、ギリギリだ。
けれどもそこは心配ない。原作でもそうだった。Eタイプはグラディオスの作戦実行と同時に前方に出現する。
グラディオスクルーはノーマルスーツを着用後、作業様のパワーローダーに搭乗して廃コロニーに突入した。とにかく推進できればいい。推進器の修理に向かう。
地球に降下するための最後の戦いだ。出し惜しみはしない。怪我人であろうと動ける者は自主的に動く。
「いやはや、すごいもんですねぇ。さっきまでお通夜みたいに落ち込んでたのに、まるで鉄火場みたいな盛り上がりだ。みんなテンション高いなぁ」
「無理もねぇよ。生きるか死ぬかって戦いだ。まぁそんなのいつものことだが、今回は特にな。絶望しかなかった俺たちに火を焚べやがった。希望が見えたんだぜ? やる気のないやつはいねぇよ」
タキオンのコクピットで、最終的な調整をしていた俺は、スロットから義手を抜く。タキオンは電撃を食らった際はケーブルに繋いでいなかったのでシステムが無事だった。
先に帰投してケーブルに繋がれたガリウスGはあの電撃で内部がショートし、パーツの交換は多いわシステムに異常が発するわで悲惨な状況だった。
よって、今からシステムを最適化するべく書き換える時間もないし、タキオンという最新にして最高の傑作があるのだから、タキオンのシステムをコピーしてガリウスGに移植することになった。タキオンにはパイロット全員の動きをプログラムとしてインストールしている。ソータと同じ動きができるはずだが、何分癖が強い。慣れるには時間がかかるだろうが、シドウが一人前と認めたパイロットたちだ。きっと短時間で特徴を理解する。
コクピットブロックの近くにいたカイドウが、俺の言葉に応える。カイドウもまた、顔には出さなかったが死を覚悟し、絶望していたひとりだ。それが希望を見出して気合いが入ったのか、いつもより大声で部下たちへの指揮を執っている。さながら怒号の独唱。
「すげぇなクスドは。みんなを動かすほど成長しやがって」
「本当にすげぇのはお前だよ」
「え、なんか言いました?」
「なんでもねぇ。………っとぉ、おいおい。あっちでお祭りしてんぞ副隊長。痴話喧嘩っぽいぜ」
コクピットブロックから顔を出すと、カイドウの言うとおり、八号機の近くで言い合うふたりを発見した。
「やっぱり無茶だよアイリ! アイリがどれだけ努力してドローンカメラの操縦を覚えたのかは知ってるけど、あれだけ大きなものを動かすなんて………いや、八号機で出撃するなんて、無謀だ!」
八号機に向かおうとするアイリを、ソータが腕を掴んで止めていたのだ。
アイリは困った表情をして、必死に止めようとするソータをどう説得しようかと言葉を選んでいる様子。
そう、これもクスドの采配。
ついにアイリをパイロットとして、宇宙空間に出撃するよう要請したのだ。
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